グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
8月18日は、使い古されたスケートボードを彫刻作品にする造形作家のHAROSHIさんが登場。独自の制作スタイルが生まれた背景のほか、思い入れのある作品や、この夏作ったバドワイザーとのコラボ缶などについて伺いました。
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使えなくなったスケートボードの板を重ねて彫刻を制作
タカノ(MC):HAROSHIさんは使い古されたスケートボードで彫刻作品を制作されているということですが、まずこれはどういうことなんでしょうか?
HAROSHI:スケボーって、 真面目にやっていると1ヶ月ぐらいで板が折れてしまったり、削れて跳ねなくなったりして、駄目になってしまうんですよ。そういう駄目になった板をみんなから譲ってもらって、それを素材に彫刻を作っています。
タカノ:何か始めるきっかけがあったんですか?
HAROSHI:元々、僕らはジュエリーを作っていたんです。その1つとして木を材料にしたオリジナルジュエリーを作ろうと思い、質の良い木材を探していたのですが、高いし、お金もなったので、どうしようかなと思っていて。
僕はずっとスケボーをやっているので、スケボーだけは自宅にも山積みになるくらい、めちゃくちゃいっぱい持っていたんですよ。そうしたら、当時一緒にいた奥さんが「それで作ればいいじゃん」と言ってくれて、「確かに!」と思って、その時からからスケボーを材料に制作を始めました。
Celeina(MC):なるほど、ヒントは身近にあったということですね。そのデッキの一部を、実際にスタジオにもお持ちいただいています。
タカノ:断面が地層のようになっていますね。
HAROSHI:スケボーは7枚のメイプルの合板で作られているんですけど、1990年代の後半ぐらいから、綺麗な色が入り始めたんですよね。それで、材料として使うにしても、より魅力的になったと思います。
Celeina:スタジオにも真ん中に作品を鎮座されておりますが、これはどんな作品なんでしょうか?
HAROSHI:これは、タイガーマスクを作ったものです。友達が、頭が無くなってしまったタイガーマスクのソフビを持っていたので、頭だけ僕が作り直して、作品として制作していたんです。そうしたら、本家のタイガーマスクから連絡があって。「訴えられるのかな」と思ったら、「コラボレーションしようよ」というお誘いをいただいて。なので、これは初代タイガーマスクとのコラボということで、裏に佐山サトルさんのサインがあるんですよ。
タカノ:すごいですね!
Celeina:ボディーはソフビで、頭の部分をHAROSHIさんがスケボーの彫刻で作られた作品ということですよね。
HAROSHI:そういうパターンもあります。前に、1個の個展とその次の個展の間が1ヶ月しかないことがあったんですよ。作品が無くて、「やばいな、どうしようかな」と思った時に、僕のルームメイトが壊れたソフビをたくさん持っているのに目をつけて。「頭だけ作れば、個展ができるんじゃないか」と思ったんです。その壊れたソフビを集めて頭だけたくさん作ったのが最初で、そこから体がソフビで頭がスケボーのシリーズができたという感じですね。
タカノ:これらは、スケボーの板をたくさん重ねてギュッと圧縮して、それを切り出して、という工程で作られているのかなと想像したんですが、合っていますか?
HAROSHI:まさにその通りです。
タカノ:こけしや寄木細工などの伝統工芸に近いような、古風でアンティークな雰囲気も質感もあって、一方でストリート感もあって。そこが面白いですよね。
HAROSHI:やっぱり日本人なので、マメな仕事をすると、どうしても伝統工芸感が出てくるんですよね。ヨーロッパやアメリカの感じにはならないんです(笑)。
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家にあるデッキは1000枚以上。スケボーに引き寄せられて
Celeina:HAROSHIさんが今まで作られた作品の中で、心に残っているものはありますか?
HAROSHI:色々作ってきたのでたくさんあるんですが、人間の折れた足を、スケボーの折れた部分を集めて作ったことがあるんです。それが、僕の中ですごくターニングポイントになっています。
制作の過程で、そのスケボーが持っている記憶を手繰るというか。スケボーも、ベキベキに折れたり、階段を飛ばされたり、すごく痛い思いをしてきたわけじゃないですか。その記憶を僕が代弁して、形にしてあげるような感覚で。そういうスケボーと僕のコラボレーションがうまくいった時に、作品も格好良くなるものなんですよね。
タカノ:スケボーの側からも、HAROSHIさんに矢印が向いているような気がしますね。
HAROSHI:矢印はめちゃくちゃ向いていると思います。スケボーの板に色がついたこと自体、人間に捨てられないようにスケボーが進化していった結果じゃないか、という考え方もできるなと思っていて。
花が特定の色をつけると、特定の虫が来るようになって受粉できるようになるという説がありますよね。まさにその感じで、僕がその色に吸い寄せられてパタパタとスケボーの方に行って、それでスケボーのリサイクルを20年以上続けているという状態ですね。
Celeina:スケボーもそうですけれど、スタジオにお持ちいただいたソフビの作品も、頭がなくなってしまった状況でHAROSHIさんのところに「頭を作ってくれ」とやって来たわけじゃないですか。 吸い寄せているというか、HAROSHIさんが物たちからエネルギーを得て、作品に昇華している感じがありますよね。
HAROSHI:やっぱり、常に助けを求めてくるやつがいるんですよ。それを僕がうまくサポートすると、必然的にかっこ良くなっていくんですよね。独善的にならず、みんなとコラボレーションして何かを作っていくと、結果いい方向に行く、というのが今までの感じですかね。
タカノ:これからも、スケボーの板や色々なものが、きっとHAROSHIさんのもとに引き寄せられていくのかな、なんて想像します。
Celeina:この使い古されたスケボーのデッキは、お家に何枚くらいあるんでしょうか?
HAROSHI:数え切れるレベルの量ではないんですけれど、1000枚は普通にあると思います。
タカノ:やっぱり、集まってくるんですね。
HAROSHI:ただ、そこから選ばなきゃいけないんですよ。カーブも色のパターンも、材ごとに違いますから。例えばタイガーマスクを作るなら、黒と黄色を選んで、ちょうど目のとこに黒が来るようにするとか、上手くコンビネーションを作らないといけないんです。だからデッキは大量にあるんですけれど、1000枚あったとしても、その作品に使えるのは5枚ぐらいだったりするので、どのみちデッキはたくさん必要にはなってくるんです。
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バドワイザーの缶デザインを担当。見た瞬間に「何これ、面白くない?」と思えるデザインに
タカノ:そしてHAROSHIさんはこの夏、スケボーとは違ったプロジェクトにも関わっているということをお伺いしています。
HAROSHI:そうなんです。今年、バドワイザーの缶のデザインをさせていただきまして。「何で彫刻家にこういうオファーをしたんだろう」と思ったんですけれど。僕自身、もともとバドワイザーのロゴが入った服を買うくらい、バドワイザーの大ファンだったんです。今回も、ちょうどバドワイザーの古着のジャケットを買ったタイミングで連絡が来たんですよ。それで、「やるやる!」と思って、デザインを担当させていただきました。
Celeina:引き寄せていますね!
タカノ:スタジオにもお持ちいただいています。こちらは、缶やビンがサングラスをかけているようなデザインになっていますね。


HAROSHI:昔、「ダンシング缶」というおもちゃがあったじゃないですか。あれが、くだらなくてすごく好きだったんですよ。くだらないものがとにかく昔から好きなんです。
それで、見た瞬間に無条件に「何これ、面白くない?」と思えるデザインにしたかったんですよね。スケボーっぽいデザインとか、自分の作品っぽいデザインにすることよりも、単純に自分が欲しいと思えるものをどうしても作りたくて。缶がサングラスしているおもちゃはありましたけど、実際の缶がサングラスをかけていることはなかったじゃないですか。
タカノ:言われてみればそうですね(笑)。
HAROSHI:それで実際に提案したら、バドワイザーの人も結構ノリが良い人たちだったので、「それでいきましょう」と言ってくれて。
タカノ:いいですね、Groovyですね。
Celeina:缶もビンも、今にも音に反応して踊り出しそうな感じですよね。
HAROSHI:サングラスをしていると、サングラスの下に目があるような気がするんですよね。やっぱり、缶が擬人化されているんですよ。だから何となく可愛く見えてくるというか。缶って、普通はあんまり可愛く見えないじゃないですか?
タカノ:確かにそうですね。
HAROSHI:飲んだ後も、潰してダンスをしているようにして遊ぶこともできるんです。
タカノ:捨てないで、家に飾りたくなりますね。すごく素敵です。
HAROSHI:嬉しいです。
Celeina:そしてこの缶にまつわる企画も始まるとのことで。
HAROSHI:まず、もともとこの商品を買うと、そのレシートで毎回くじが引けて、色々なグッズが当たるというキャンペーンをやっていたんです。それにプラスアルファで、僕が最近「第1回踊るHAROSHI缶ダンス甲子園」という企画をSNS上で始めまして。これもだいぶふざけているんですけれど。
タカノ:こちらはどんな企画なんでしょうか?
HAROSHI:この缶を使って、「ダンシング缶」みたいな動画を作っていただきたいんです。本当はおもちゃのダンシング缶を作りたかったんですれけど、コストとか権利の関係で作れなかったんですよ。なので、「動画で作ったら面白いんじゃないか」と思い、企画も始めてみたんです。
Celeina:撮影した写真をたくさん繋げて、踊っているような動画はスマホでも作れそうですよね。気になった方は、ぜひHAROSHIさんのSNSをチェックしてもらえばと思います。さあ、「FIST BUMP」はグータッチで繋ぐ友達の輪ということでお友達を紹介してもらっていますが、HAROSHIさんが紹介してくださるのはどんな方でしょうか?
HAROSHI:「CHALLENGER」のデザインディレクションをやっている、田口悟さんを紹介させていただきます。バドワイザーのプロダクトも一緒に作った友達で、元プロスケーターの、最高にかっこいい人です。
Celeina:ありがとうございます。明日は「CHALLENGER」のデザインディレクション、田口悟さんに繋ぎたいと思います。「FIST BUMP」、今日は造形作家のHAROSHIさんをお迎えしました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann