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映画監督の木村ナイマは、実体験と卒業論文をもとに映画『天使たち』を制作した

2025.10.2

#MOVIE

グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。

9月9日は、映画イベント「レオファイトクラブ」を主催するLEOさんからの紹介で、映画監督の木村ナイマさんが登場。映画を作るきっかけとなった是枝裕和監督との出会いのほか、実体験から紡ぐ歌舞伎町のリアリティを描いた映画『天使たち』についても伺いました。

『万引き家族』をきっかけに、映画制作の道へ

Celeina(MC):木村ナイマさんは、大学在学中にドキュメンタリーのゼミに所属し、友人たちと映像制作を開始。初監督・脚本作である短編映画『ファースト・ピアス』が、『西湘映画祭』にてグランプリを受賞しました。その後の作品『天使たち』は『田辺・弁慶映画祭』で映画.com賞を受賞し、今年、テアトル新宿やテアトル梅田で上映されました。

タカノ(MC):受賞続きですね。そもそも、映像制作に興味を持たれたきっかけを教えていただけますか?

木村:子どもの頃から映画を観ることは好きでしたが、小学3年生の頃、家からテレビがなくなり、代わりに与えられたパソコンで映画を観るようになりました。高校生になると、初めて1人で映画館へ行き、是枝裕和監督の『万引き家族』を観て「こういう素晴らしい邦画があるんだ」と感銘を受け、自分も映画を撮ってみたいと強く思いました。

タカノ:高校生の頃にその決意をされたのは、早いですね。

是枝監督に影響を受け、ドキュメンタリーのゼミに所属

Celeina:大学ではドキュメンタリーのゼミに所属されていたそうですが、ドキュメンタリーに特別な関心をお持ちだったのでしょうか?

木村:実は最初から強い興味があったわけではありませんでした。ただ、是枝監督がドキュメンタリー出身だと本で知りまして、そこに書かれていた先生のゼミがちょうど自分が進学を考えていた大学にあったので「この人のもとで学べば良いのでは」と考え、ゼミを選びました。

Celeina:学びたい先生がいるから大学を決めた、ということだったのですね。

木村:そうです。とにかく映画を撮りたい一心でした。その学校には「映画」という言葉が一応書かれていましたが、実際は美大や日芸の映画学科のような制作主体の環境ではなく、座学中心で、ドイツのプロパガンダ映画を学ぶなどの内容でした。なので、大学の授業内で映画を撮ることはできませんでしたね。

タカノ:それでも在学中に短編映画『ファースト・ピアス』を制作されたんですよね?

木村:はい。ドキュメンタリーゼミにいた友人が「あなたは面白いはずだから映画を撮るべきだ」と言い、仲間を集めてくれたことがきっかけでした。専門知識を持つ人もおらず、キャストも友人たちという、まるで草野球チームのような手探りの制作でした。

タカノ:『天使たち』も非常に印象的でした。リアリティがあるだけでなく、歌舞伎町のダーティーな部分だけではなく、光の瞬間や美しさがありました。

Celeina:確かに場面の組み合わせが独特でしたね。

木村:皆が想像する典型的な歌舞伎町ではない姿を描きたいと考えていました。

実体験をもとに「ガールズバー」のいびつなシステムを描いた『天使たち』

タカノ:『天使たち』のあらすじをご紹介いただけますか?

木村:厳密な「あらすじ」がある作品ではありませんが、歌舞伎町のガールズバーで働く2人の女の子を中心に描いています。1人は母が離婚し、歳の離れた弟妹がいる中で「特別になりたい」「輝きたい」と願って入店した「なる」で、もう1人は先輩の「マリア」という女の子です。この2人が、それぞれ事情を抱えながらも、少しずつ関係を深めていきます。お店には他にもNo.1の女の子がいたりして、そういった自分が見てきた歌舞伎町のシステムを映画にしたいという思いがありました。また、ガールズバーを題材とする映画を、当事者である自分くらいの世代の人間が制作することにも、意義を感じていました。

タカノ:ご自身の体験も反映されているのですね。

木村:はい。福岡から上京した直後、ガールズバーなどの水商売で働いていたんです。ガールズバーは日本特有の文化で、若さを売る女性と、青春を取り戻すかのようにそれを買う大人たちとの関係は独特で、いびつに感じて、そのシステムをテーマに作品にしたいと思っていたんです。

Celeina:ご自身の体験を、俯瞰した目線で描写し、映画に昇華されたのですね。この作品は論文が出発点になったのですか?

木村:そうですね。私の通っていた大学は映画制作を課さずに、卒業には論文提出が必要だったのですが、長編映画を学生のうちに撮りたいと考えていたのでどうしようかなと思っていたんです。そこで、歌舞伎町で3か月間働いて、現場での女の子たちの観察や会話を記録して、それを基に「エスノグラフィー」という手法で論文をまとめました。

タカノ:アンケート調査のような形ですか?

木村:アンケートというよりは、フィールドノートに見たり話したりした体験を書き溜め、ガールズバーで働いている女の子たちの出身地や家族構成なども整理し、データ化したものですね。

『天使たち』にはテクノから賛美歌まで、幅広い音楽を取り入れた

タカノ:緻密な取材による高い解像度が作品に反映されていますね。『天使たち』は、音楽の使われ方もすごく印象的でした。

Celeina:テクノやハイパーポップ、クラシック、さらにはアカペラの賛美歌まで、幅広く取り入れられていましたね。サウンドトラックにはどのようなこだわりがあったのでしょうか?

木村:自分が良いと感じた音楽を使いたいと思っていました。アンダーグラウンドな要素を取り入れたかったので、インディーズ映画ではあまり使われないようなテクノなどを取り入れ、SoundCloudで活動している雑魚ドールさんやBLCKWZRDさんに直接連絡を取り、楽曲を使用させて頂きました。

タカノ:世界観にばっちり合っていましたよね。

木村:賛美歌は、前作『ファースト・ピアス』にもカトリック的なモチーフがあったのと、私自身がキリスト教系の学校で学んでいたことから馴染みがあり、取り入れたいと思っていました。

Celeina:作品内容も音楽も、ご自身のルーツが反映されているのですね。『天使たち』は今後も上映予定があると伺いました。

木村:詳細はまだ公表できませんが、公式XInstagramで情報を発信していますのでご確認いただければと思います。

Celeina:さて、「FIST BUMP」はグータッチで繋ぐ友達の輪ということで、お友達を紹介してもらっています。木村さんはどなたをご紹介いただけますか?

木村:先程もお名前を出したのですが、『天使たち』の主題歌を担当している、アーティストの雑魚ドールさんです。

Celeina:ありがとうございます。明日は雑魚ドールさんにお越しいただきます。「FIST BUMP」、本日は映画監督の木村ナイマさんをお迎えしました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann

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