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実体験をもとに「ガールズバー」のいびつなシステムを描いた『天使たち』
タカノ:『天使たち』のあらすじをご紹介いただけますか?
木村:厳密な「あらすじ」がある作品ではありませんが、歌舞伎町のガールズバーで働く2人の女の子を中心に描いています。1人は母が離婚し、歳の離れた弟妹がいる中で「特別になりたい」「輝きたい」と願って入店した「なる」で、もう1人は先輩の「マリア」という女の子です。この2人が、それぞれ事情を抱えながらも、少しずつ関係を深めていきます。お店には他にもNo.1の女の子がいたりして、そういった自分が見てきた歌舞伎町のシステムを映画にしたいという思いがありました。また、ガールズバーを題材とする映画を、当事者である自分くらいの世代の人間が制作することにも、意義を感じていました。
タカノ:ご自身の体験も反映されているのですね。
木村:はい。福岡から上京した直後、ガールズバーなどの水商売で働いていたんです。ガールズバーは日本特有の文化で、若さを売る女性と、青春を取り戻すかのようにそれを買う大人たちとの関係は独特で、いびつに感じて、そのシステムをテーマに作品にしたいと思っていたんです。
Celeina:ご自身の体験を、俯瞰した目線で描写し、映画に昇華されたのですね。この作品は論文が出発点になったのですか?
木村:そうですね。私の通っていた大学は映画制作を課さずに、卒業には論文提出が必要だったのですが、長編映画を学生のうちに撮りたいと考えていたのでどうしようかなと思っていたんです。そこで、歌舞伎町で3か月間働いて、現場での女の子たちの観察や会話を記録して、それを基に「エスノグラフィー」という手法で論文をまとめました。
タカノ:アンケート調査のような形ですか?
木村:アンケートというよりは、フィールドノートに見たり話したりした体験を書き溜め、ガールズバーで働いている女の子たちの出身地や家族構成なども整理し、データ化したものですね。