グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
8月5日は、合同会社KOKICIKの代表のタカハシコーキさんからの紹介で、万博のパビリオン設計から海外フェスの美術監督まで幅広く手掛ける、遠藤治郎さんが登場。フェスの空間演出やデザインのプロセスのほか、建築展示空間ディレクターを務めた、大阪・関西万博パビリオン「いのちの未来」の制作の裏側についても伺いました。
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フェスの空間演出やデザインは、場所や歴史の文脈を起点に考える
タカノ(MC):遠藤さんは、フェスをはじめさまざまなプロジェクトを手がけていらっしゃいます。国内のフェスだと、『SUMMER SONIC』や『RISING SUN ROCK FESTIVAL』などにも関わられていましたよね。軽井沢の『EPOCHS』も素晴らしかったです。
遠藤:ありがとうございます。
奥冨(MC):『EPOCHS』は格好良かったですね。僕も行きました。
タカノ:ビニールテープのような素材を使用されていましたよね。
遠藤:安価なものをうまく使い、大きく見せるという手法は比較的よくやります。
タカノ:遠藤さんが手掛けると高級感があり、よく見ると実は身近な素材だった、という面白さがあります。海外ではタイやケニアなどのフェスにも関わられているそうですね。
遠藤:はい。タイ、バングラデシュと続き、今度の9月に開催されるケニアでの『Kaleidoscope Festival Watamu』や、来年行われるモンゴルでの『PLAYTIME FESTIVAL』にも関わっています。
タカノ:世界中でご活躍中ですね。
奥冨:1年でどのくらいの国に行かれるのでしょうか?
遠藤:仕事では5か国ほどです。ベトナムにある「Unmute Hanoi」というナイトクラブも設計したんですが、毎年11月に周年パーティーがあるので、そこには毎年訪れていますね。
タカノ:フェスの空間演出やデザインは、どういったプロセスで作られるのでしょうか?
遠藤:まず、その場所やフェスの歴史、文脈から考えます。日本では少ないですが、海外では空間を作る人と照明や演出を担当する人が同じ場合もあります。私は20年ほどそれを続けており、建築空間を作ると同時に、演出として「時間」をデザインしています。空間と時間、両方をデザインするということですね。
タカノ:コンセプト設計、つまり土地柄や文脈も重要なのですね。
遠藤:そうです。場所の形状やランドスケープ、水辺にあるか、山の谷にあるかなどから発想が生まれます。物理的な文脈と事象的な文脈をうまく混ぜることで、これでいける、というアイデアが浮かびます。
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訪れた人に問いを渡す「いのちの未来」パビリオン
タカノ:アイデアを考えるのも大変なお仕事だと思います。そして、現在開催中の大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの未来」の建築・展示空間ディレクターも務められています。こちらはどのようなパビリオンなのでしょうか?
遠藤:石黒浩先生がプロデューサーで、「命を広げる」がテーマです。人間と機械の境界が溶けていき、アンドロイドか人間か区別がつかない世界に向かっている、という視点です。
タカノ:AIも身近になっていますからね。
遠藤:その時に、私たちはどうすれば私たちでいられるのかを考えるきっかけを提供します。答えを渡すのではなく、問いを渡すパビリオンです。訪れた人は迷いを持ち帰るようなものです(笑)。未来を自分たちで作っていく意識を持たなければ大変なことになる、という警鐘も込めています。
タカノ:建築は中央に直径約10メートル、高さ制限を最大限活かした17メートルの筒状空間「まほろば」を内包し、外壁は黒く滝のように水が流れているように見えます。どのようなイメージでデザインされたのでしょうか?
遠藤:石黒先生から「無生物から生命が進化し、ミトコンドリア、微生物、猿、人間へと進化してきた。生命は再び無生物へ戻り、広がっていく」という大きなビジョンを伺ったんです。境界を越え、生命が広がっていく様子を表現するため、鉱物、水、エネルギー、重力、光など生命誕生に必要な要素を象徴する「石」のような存在を作り、その表面を水が重力によって流れ、光を受ける姿を「渚」としてデザインしました。
パビリオンの外と中が一体になったり閉じたりする構造は、水の動きによって変化します。これは人と機械、生物と無生物といった境界を越えることとも繋がっています。
タカノ:見ただけではそこまで分からないかもしれないですね……。
遠藤:訪れた方が、この話を聞いて何か腑に落ちてくれれば嬉しいです。
タカノ:この話を聞いた上で、見に行きたいですね。
奥冨:初めて見たときに想像力を働かせてから、こうしたお話を聞くと、さらに理解が深まって、より何かを持ち帰られるような気がしますね。
タカノ:制作期間はどれくらいですか?
遠藤:4年半もかかりました(笑)。でも外観デザインは、最初からほとんど変わっていないんです。ただ、当初は浴槽から水が溢れるようなイメージでしたが、それは予算の関係で調整することになって。それでもこのアイデア自体はいけると思っていたので、多くの方々に協力してもらうことで、実現できました。
タカノ:これから訪れる予定の方も多いと思います。「いのちの未来」にぜひ足を運んでみてください。
遠藤:「泣けるパビリオン」とも呼ばれています。
タカノ:訪れることで、色々と考えるきっかけになりそうですね。さて「FIST BUMP」はグータッチで繋ぐ友達の輪ということで、明日スタジオに来ていただく方を紹介していただいています。遠藤さんが紹介してくださるのは、どんな方でしょうか?
遠藤:画家の福津宣人さんです。30年来の友人で、もともとはデジタル映像やグラフィック、音楽制作をしていましたが、その後完全にアナログの画家となりました。彼もまた境界を越えるマインドを強く持ち、文様パターンの中にさらにパターンを組み合わせる独特の作風を持っています。
タカノ:ありがとうございます。明日は画家の福津宣人さんに繋ぎます。「FIST BUMP」、本日は遠藤治郎さんにお越しいただきました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann