グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
7月3日は、都市デザインの仕事を手掛ける飯石藍さんからの紹介で、「かみいけ木賃文化ネットワーク」共同代表の山本直さんが登場。「かみいけ木賃文化ネットワーク」としての活動内容のほか、木造賃貸アパート「山田荘」での暮らしなどについて伺いました。
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築46年の木造賃貸アパートを再生するプロジェクト
Celeina(MC):山本さんは「かみいけ木賃文化ネットワーク」の共同代表ということですが、木曜日の木に賃貸の賃で「木賃」と書くんですね。「木賃」とはどういう意味なんですか?
山本:平たく言うと、木賃は「木造の賃貸アパート」という意味です。建築や都市計画の文脈では、戦後に建てられた一人暮らしのための木造アパートのことを指して木賃と言ったりもします。
タカノ(MC):初めて聞きました。
山本:なかなか聞き慣れないキーワードかもしれないですね。
タカノ:山本さんの「かみいけ木賃文化ネットワーク」では、どういった活動をされているんですか?
山本:東京都豊島区の上池袋にある、僕の妻の実家の母屋に隣接する形で46年前に建てられた、風呂なしの木造賃貸アパート「山田荘」を再生していくプロジェクトを行っています。家の中で生活を完結させずに、地域の銭湯に行ったり、食堂に行ったりする中で、まちの人とお話したりして、まちとともに生きるような生活文化を、現代にもう一度再生していけないか、ということで活動しています。


タカノ:なるほど。風呂なしだからこそ、銭湯に行くためにまちに出ていくんですね。
山本:そうですね、行かざるを得ない環境なんです。
タカノ:アパートの環境を逆手に取ったようなプロジェクトでいいですね!
Celeina:本当に面白いです。実際にどんな方が参加されているんですか?
山本:近所の主婦の方から公務員の方、デザイナーやアーティストまで、様々な方が参加してくれています。うちの風呂なしアパートだけでは空間が足りないので、共用のリビングや働く場所、作品を作れるアトリエなどをつけた「くすのき荘」という別の建物も用意したんです。そこを、足りないものを満たしてくれる場所として機能するようなシェアスペースとして使っていて、そこにみんなが来てくれているという感じですね。ちょっと複雑なんですけれど。

Celeina:住めるエリアとは別に、コワーキングスペースや交流できるコミュニケーションスペースなど、色々設けられているんですね。
山本:共有スペースがメインの「くすのき荘」と、木造賃貸アパートの「山田荘」を合わせて、全体で「かみいけ木賃文化ネットワーク」として定義しています。
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「山田荘」で暮らすアーティスト同士でのコラボレーションも
Celeina:「山田荘」にはどんな方が住まれているんですか?
山本:若い単身の方が多いです。オランダ人の染色アーティストとか、キャラクターフィギュアの原型師の子、あとは劇場のスタッフをしている子とか、そういう方たちですね。
タカノ:部屋に空きはあるんでしょうか?
山本:はい、ちょうど8月から空きが1部屋だけ出ています。
タカノ:事務所のような使い方もできるのでしょうか?
山本:もちろんです。今は編集者の方が事務所として使っていますし、これまでも、アーティストがアトリエとして借りてくださったりしていたんです。色んな方が色んな使い方をしていますよ。
タカノ:作家さんだったら、執筆部屋みたいな感じで使ったりもできそうですね。
山本:家の中だと家族の関係とか、あとは作品制作に絵の具を使うと臭いが出ちゃうとか、どうしても色々ありますよね。それで、家や既存の施設ではどうもはまらなかったという人が「見つけた」みたいな感じでここに来てくれることが多いです。
タカノ:住んでいる方の間で、コラボとかも生まれそうですね。
山本:そうですね。実際に、アーティスト同士のコラボレーションでワークショップを開催したり、作品を発表したり、色々な機会も生まれています。

Celeina:そういうコラボレーションやコミュニケーションをもっとしてもらうために、山本さんから働きかけられていることはありますか?
山本:色んな人と人を引き合わせて紹介することは、普段からよくやっています。あとは、なるべく「やりたい」と言われたことに制限をかけないということも意識していますね。
Celeina:ちなみに、楽器はOKですか?
山本:楽器は、全部はOKではないんですが、すごく爆音とかじゃなければ大丈夫です。アコースティックとかはOKにしています。
タカノ:Celeinaさん、住もうとしていますか?
Celeina:ペットは可ですか?
山本:過去に、ワンちゃんと猫ちゃんを一時的に飼っている子がいました。ただ、猫ちゃんのときは僕が面会を求めましたね。
Celeina:なるほど、猫ちゃんの性格などを確認されたんですね。
山本:結局その住人は、仕事に行くときにシェアスペースの「くすのき荘」に猫を預けて、帰ってくるときにピックアップして「山田荘」に帰るというサイクルで暮らしていました。
Celeina:素敵ですね!
タカノ:Celeinaさん、8月から空きが出るそうですよ(笑)。でも、すごく色々な想像ができますね。僕も執筆部屋とかにすごく良さそうだなと思ったし、色んな方の色んな需要がありそうですよね。
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人と一緒にいることを選択できる空間を広げていきたい
Celeina:今住んでらっしゃる方や利用されている方は、どこからこの「かみいけ木賃文化ネットワーク」のことを知ってくれるんでしょうか?
山本:会員さんのことをメンバーと呼んでいるんですけど、メンバーが開催するイベントから知ってくれる方が多いです。あとは私たちが主催している『七輪』という、みんなで七輪を囲んでご飯を食べる会があるんですけれど、そこに参加してくださったことがきっかけになったり、アトリエを探している方がWEB検索で辿りついてくださったり、色んな経路でいらっしゃっています。

タカノ:今、WEBサイトの方を見させていただいているんですが、「七輪を囲みながらサッカーを観ていると、いつの間にか近所の知らない人が増えてました。」と書かれていて。すごくいいですね。
山本:ワールドカップなどの国民的なスポーツイベントは、スポーツバーとかで見るよりも、地元の人と一緒にだからこそフラットに緩く見られるような人もいるようですね。
Celeina:かつてテレビが1家に1台あるのが当たり前ではなかった頃に、テレビを持っている誰かの家にみんなで集まって、スポーツ観戦していたというエピソードを昔話で聞いたりするじゃないですか。その感じを少し体験できるような、素敵な空間ですね。
山本:人と一緒にいることを自分で選択できるということが、幸せを感じることに繋がっているのかなと思っています。
タカノ:この「かみいけ木賃文化ネットワーク」からまちにはみ出すだけではなくて、まちと人々もこっちにはみ出して、入り込んできている感じがいいですね。
山本:そうですね。持ち込みの企画なども生まれたりしています。
Celeina:それから、「くすのき荘」にはカフェもあるんですよね?
山本:はい、3年前に作った「喫茶売店メリー」というコミュニティカフェがあります。「山田荘」も「くすのき荘」も、住まいやアトリエとして会員さんが使う場所で、一般の方が自由に出入りできる施設ではなかったんですが、そこをオープンな空間にするために開いたカフェです。近所の方も、遠くからここを目指してきてくれる方も、営業時間にふらっと来てアトリエなどを見られるようになっています。


タカノ:遊びに行きたいですね。ここまで聞いていて、すごく楽しそうだと思いました。
Celeina:ちなみに、今後の目標も決まっていたりするんですか?
山本:カチッと決まっているわけではないのですが、私たちの地域には「山田荘」のような風呂なしアパートや空き家が結構あるんですよ。そういった眠っている地域の資源を私たちに預けてもらって、暮らしてくれる方だったり、アーティストさんやクリエイターだったり、まちの中でその場所を活かしてくれる人とマッチングさせることで、この場をどんどん広げていきたいと思っています。
Celeina:いいですね、ありがとうございます。お話を伺って、山本さんの手によってまちがどんどんキラキラしていく感じがしました。
山本:ありがとうございます。でも、僕のおかげじゃなくて、本当にみんなのおかげというか。ここに参加してくれたり、関わってくれたり、応援してくださる方のおかげでいろんな出来事が発生している感じがして、ぜひこれを広げていきたいなと思っています。
Celeina:「FIST BUMP」、今日は「かみいけ木賃文化ネットワーク」共同代表の山本直さんをお迎えしました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann