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国際栄養士の太田旭は、地域に合わせたアプローチを行い食生活の課題の解決を目指す

2025.4.9

#OTHER

グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。

3月10日は、番組からの推薦で、一般社団法人「オルスタ」代表理事で、国際栄養士の太田旭さんが登場。途上国の食に関する課題を解決する国際栄養士の活動内容のほか、世界に興味を持ったきっかけや異文化への向き合い方についても伺いました。

途上国の食に関する課題を解決する国際栄養士として活動

タカノ(MC):栄養士という仕事については何となくイメージがあるのですが、国際栄養士という言葉は初めて聞きました。

太田:そうですよね。あまり耳にすることはないかもしれません。

タカノ:具体的にはどんな活動をされていますか?

太田:私の場合は、いわゆる途上国と呼ばれる地域で、食育プログラムを作ったり、食品に関する法律の整備に関わったりしています。

タカノ:法律の面まで関わるんですね。

太田:活動の範囲は本当に幅広いです。

タカノ:日本には国際栄養士として活動している方はどれくらいいらっしゃるんですか?

太田:正確に数えたことはないのですが、実は特定の資格があるわけではないんです。国際栄養士連盟という団体が基準を定めているのですが、資格を取ればなれるというものではなく、その基準を満たすとそう呼ばれるようになっていく感じですね。

Celeina(MC):国際栄養士と認められることで肩書きがつくものなんですか?

太田:私の場合、ある取材で国際栄養士と紹介していただいたのがきっかけでした。自分でも調べてみたのですが、日本の栄養士の仕事とは少し違う部分が多くて、それを知ってもらうためにもそのまま名乗るようになりました。

Celeina:要約すると、国際的に栄養や食の分野で活動している方を国際栄養士と呼ぶことが多い、ということでしょうか。

太田:そうですね。日本では栄養士の資格は厚生労働省の基準に沿っていますが、国際栄養士は世界保健機関(WHO)の基準に加えて、活動する国の法律や政策にも従いながら仕事をしています。

Celeina:太田さんが今、特に活動している国はどこですか?

太田:3年ほど前からグアテマラ共和国で活動しています。実は数日前に帰国したばかりで、またすぐに戻る予定です。

Celeina:1年のうちどのくらい現地で過ごしているんですか?

太田:今年は特に多くて、半分くらいはグアテマラにいますね。

タカノ:グアテマラ共和国はどのあたりにある国なんですか?

太田:メキシコの南にあります。コーヒー豆が有名ですね。

タカノ:コーヒーの産地として聞いたことがある人も多いかもしれませんね。どんな国なんですか?

太田:グアテマラは、ピラミッドが有名で、「ティカル遺跡」は世界最大級の遺跡の1つといわれています。国土は北海道の1.3倍ほどの大きさですが、23の部族が存在していて、それぞれ独自の言語を持っているんです。マヤ文明の文化が色濃く残っていて、織物や民族衣装がとても美しく、昔からの景色や食文化が残っている素敵な国なんですが、食生活については栄養不良が深刻な問題になっています。

Celeina:太田さんが羽織っているストールはグアテマラのものですか?

太田:そうなんです。今日は特にお気に入りのものを着てきました。

Celeina:すごく鮮やかで素敵ですね。ピンクや黄色が映えていて、エキゾチックな雰囲気です。

太田:ありがとうございます。これは「サカテペケス」という部族の柄です。

Celeina:部族ごとに織物の柄も違うんですか?

太田:そうなんですよ。シンプルなものもあれば、動物が描かれた鮮やかなデザインのもの、パステルカラーのものや落ち着いた色合いのものもあって、本当に多様です。見ているだけで楽しい気分になりますよ。

心理学的アプローチや物流の整備などを行い、食生活の課題を解決に導く

タカノ:素敵ですね。ところで、グアテマラでは栄養の問題があるとのことですが、具体的にどのように解決していくのですか?

太田:食生活の問題には、原因がいろいろあるんです。例えば、知識がないだけなら食育プログラムを作ることで解決できますが、内戦の影響で人を信用できなくなっている地域では、新しい情報を受け入れてもらうのが難しいこともあります。その場合は心理学の専門家と一緒にアプローチします。また、標高2500メートルを超える地域では物流が難しく、食料が届きにくいので、物流企業と協力してフードサプライチェーンをどう整えるかを考えたりもします。

Celeina:国際栄養士というと、栄養バランスや食事の中身を考える仕事というイメージがありましたが、その手前の段階の、心理学や物流の整備など、さまざまな分野に関わるんですね。

太田:そうですね。ジェンダーの問題や過去の経験から、健康に関心を持てない方もいます。そういう方には、医療以外の専門家とチームを組んで、ケアをしながら栄養改善を目指していきます。

メキシコやキューバへの留学をきっかけに、海外に興味を持つように

タカノ:そもそも、太田さんが海外に目を向けるようになったきっかけは何だったんですか?

太田:田舎で育ったのですが、コンビニもスーパーも無くて、遠くの世界はおろか、隣の町も知らないような環境でした。食べるためには自分で作るしかなかったので、「衣食住は生きるために必要不可欠だな」と自然に考えるようになったんです。その後、小学校3年生から続けていたバレーボールを通じて、高校1年生のときにメキシコとキューバへ留学したのですが、そこで出会った人や経験が、海外に興味を持つようになったきっかけですね。

Celeina:実際に海外に行ってみて、もっと知りたいと思ったのですね。

太田:留学先がすごくローカルな場所だったんですが、特に印象的だったのは、病院で妊婦さんたちがベッドをシェアしている様子でした。それでも、みんな家族のように助け合っていて、とても幸せそうに見えたんです。そこで、「幸せにはいろいろな形があるんだ」ということに感動して、探究心が目覚めてもっと知りたくなったんです。

タカノ:メキシコやキューバが抱える課題は、グアテマラと似ているのでしょうか?

太田:異なりますね。私がキューバを訪れたのは高校生の頃だったのですが、キューバは社会主義国としての体制が確立されていました。そのため、食料は配給制で管理されていて、国外との貿易も制限されていたので、食料の流通が非常に限られていて十分に行き渡らない状況がありました。

タカノ:国ごとに異なる課題がある中で、まずはそれを正確に把握することが重要なんですね。

太田:その通りです。現在はSDGs(持続可能な開発目標)が注目されていますが、それ以前にはMDGs(ミレニアム開発目標)がありました。しかし、現在では単なる課題解決だけではなく、新たな価値を創造することが求められる段階にきていると感じています。単に問題を解決するだけでは、すでに限界が見えてきていて、より持続可能なソリューションを生み出すことが重要になっていると思います。

違いを受け入れ学び直す柔軟さが、思いやりであり愛である

Celeina:まだまだお話を伺いたいところですが、最後にお聞きしたいことがあります。太田さんは、生きるために最低限必要なものとして衣食住だという考えを持ち、それを原点として活動を続けてこられたと思います。それから様々なご経験をされた今、改めて大切だと感じることは何でしょうか?

太田:昨年、『異文化に身を置くすべての人へ』という本を出版したのですが、そこでも伝えさせていただいたことがあります。よく、「どのようにすれば外国の人たちとうまく関わることができるのか」「どうすればお互いに理解し合えるのか」といった質問を受けるのですが、私は異文化とは必ずしも外国の文化に限ったものではないと考えています。同じ国で育ったとしても、生まれ育った環境は人それぞれ異なりますし、好みや価値観も違います。そうした違いを前提として受け入れ、相手とフラットな立場で向き合い、知り合っていくスタンスが重要だと思います。

一生懸命に相手のことを想像しても、実際にはその考えが間違っていることもあります。その場合は、執着せずに受け入れて、新たに学び直す柔軟さが必要です。そうした姿勢を持ち続けることこそが、思いやりであり、愛なのだと強く感じています。

タカノ:隣にいる人のことを想像することが、遠くにいる人への想像力にもつながるということですね。

Celeina:素敵なお言葉をありがとうございます。さて、「FIST BUMP」はグータッチで繋ぐ友達の輪ということでお友達を紹介してもらっています。太田さんはどなたを紹介してくださいますか?

太田:「食」を通じたつながりと「平和」をテーマにした活動をともにする仲間として、非営利株式会社蓮葉果紅の代表であり、「ピースアルケミスト」の成瀬久美さんをご紹介します。

Celeina:明日の放送も楽しみです。「FIST BUMP」、本日は国際栄養士の太田旭さんをお迎えしました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann

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