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映像監督の河合宏樹は、生の空気を留めることを使命にライブ映像を撮り続ける

2025.2.18

#MOVIE

グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。

1月21日は、編集者で「me and you」の野村由芽さんからの紹介で、映像監督の河合宏樹さんが登場。人生を変えたターニングポイントや、公開中のライブ映画『平家物語 諸行無常セッション』制作にまつわるエピソードなどについて伺いました。

東日本大震災をきっかけに、ドキュメンタリー映画を撮るように

タカノ(MC):学生時代から自主映画を撮られていたと聞いていますが、そもそも河合さんが映像に興味を持たれたきっかけは何ですか?

河合:大学生の頃から自主映画を撮っていますが、きっかけは思春期特有の鬱屈した感情発露したかったからです。フランスの映画監督に、レオス・カラックスという素晴らしい監督がいらっしゃいまして、その方の作品に大変影響を受けました。自分もそういった、誰かの思春期の心を救ってくれるような作家になりたいと思ってカメラを触り始めました。それが自主映画を撮り始めたきっかけですね。

タカノ:そして、河合さんにとって1つのターニングポイントが東日本大震災だったそうですね。

河合:はい。私は周りからドキュメンタリー映画監督と呼ばれていますが、そういうことをやり始めたのは、自主映画を撮っている時期に、小説家の古川日出男さんの朗読パフォーマンスをたまたま見て大変衝撃を受けたことがきっかけです。古川さんとZAZEN BOYSの向井秀徳さんとのセッションを見て、劇映画を作りたかったのに、急に古川さんの朗読を映像に残したいという気持ちが抑えられなくなったんです。それで、出版社を通して古川さんへ連絡を取り、未熟な学生ながら「撮影させてください」と頼んだら、OKして頂いて、撮影の醍醐味を知りました。

その後まもなく2011年に東日本大震災が起きて、古川さんは福島県郡山市出身で、東北についての小説もお書きになっているため、大変ショックを受けていらっしゃいました。その際、「河合くん、一緒に東北に行かないか」と誘っていただいたんです。僕はその時に初めて被災地を目の当たりにして、自分に何ができるかを考えましたが、被災地の過酷な状況にありのままカメラを向ける行為はとても暴力的に思い、抵抗がありました。それで悩んでいたところ、古川さんたちが被災地支援で宮沢賢治さんをテーマとした朗読劇プロジェクトを開始されたのを見て、被災地に対して人間が汗水を垂らして血も涙も流しながら奮闘している姿なら、私にも撮れるのではないかと思い、彼らのドキュメントを撮るようになりました。その時期をきっかけに、古川日出男さんを撮り始め、もう16年が経ちましたね。

タカノ:古川さんとの出会いがきっかけだったんですね。

河合:人生がすべて狂ったというか(笑)。

ライブの生の空気を留めていくことがライフワーク

タカノ:そして、河合さんは音楽家やアーティストとも繋がりがあるそうですね。

河合:もともと、音楽やライブ映像が大好きなんです。東日本大震災が起きた時に、被災地のことを考えて動いていらっしゃるミュージシャンの方が多くて、その中でも、特に七尾旅人さんからは、私が自分で「師匠」と言ってしまうぐらいの影響を受けました。旅人さんともそこから交流が始まり、映像もずっと撮らせていただいて、12年ぐらいの付き合いになります。彼をきっかけに、飴屋法水さんや齋藤陽道さん、青葉市子さんや蓮沼執太さんなど、色々な表現者の方と出会いました。被写体が魅力的な方ばかりなので、どんどんカメラを回したくなっちゃって、最初は映画をやりたかったのに、どんどん巻き込まれていきましたね。ご縁で出会いが生まれて、勝手にことが動いていった、というような感じですね。

タカノ:河合さんの作品のスタイルは、ライブ映像やドキュメンタリーが中心だと思いますが、こういう作品を作りたい、というよりは、その手前にある「撮りたい」という根源的な欲求が先に来ていることが素敵だと思いました。

Celeina(MC):「撮りたい」と思わせる衝動は、被写体の魅力みたいなところから生まれているのでしょうか?

河合:僕が撮っている方たちは、ステージでの表現の一回性や生でしか感じ取れない空気が素晴らしくて、どうしても映像には映りきらないんですよ。逆に収められちゃったら「やりきっちゃった」と感じて、ゆらゆら帝国みたいに解散しちゃうかもしれないです(笑)。

タカノ:「完成してしまった」みたいな理由で。

河合:でも、なかなか完成しない。すべてを残せないと毎回思っているから、同じ被写体をずっと追いかけられるところもあるというか。そういうことを、まだ悩みながらやっている感じではあるんですが、彼らがやっていることを留めていくということは、使命のようにやっています。

タカノ:ライフワークという言葉が当てはまるかどうか分からないですけども、河合さんの人生をかけての活動ですよね。

河合:はい、まさしくライフワークです。

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