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10年を費やして掴み取ったデビュー
タカノ:そしてすばる文学賞でデビューを果たされますが、それまで10年ほど会社員もされていたとお伺いしています。
高瀬:そうですね。31歳でデビューするまでは、会社員をしつつ夜に執筆作業を進める生活をしていました。
Celeina:忙しい生活ですよね。
高瀬:やはり眠たかったです。朝は全然起きられなかったので、夜に書いていました。
タカノ:そういった生活を10年。
高瀬:小中学生向けのコンクールは10代の時から応募していて、デビューへ繋がる新人賞に応募し始めたのが20歳くらいでした。毎年どこかの賞に出しては落選する。それを繰り返した10年間でしたね。
タカノ:モチベーションはどのように維持していたんですか?
高瀬:応募してから結果が出るまで2、3カ月期間があることもあり、落選したことを知っても「そっか、出したな」という感覚で。大ダメージを受けるわけではなかったんですよ。空いた期間でほかの面白い小説を読んで、「やっぱり本が好きだな」と感じていたので、続けてこられたと思います。
タカノ:デビューが決まった際は、お電話が来るんですよね?
高瀬:その日は会社を休んで待機していたんですが、緊張でお腹も痛かったです。電話が来た時は「嘘でしょ」と思いましたし、その現実感の無さが今でも続いている気がします。
タカノ:僕も昨年から新人賞を目指しているので、高瀬さんの一言一言が身に沁みます。高瀬さんはどのように小説を執筆されるのでしょう。
高瀬:長いプロットは用意していなくて、例えば「家族がお風呂に入らなくなったら」「歩きスマホを避けなかったらどうなるのか」のように、1、2行の疑問を立てて書き始めています。その疑問を後から直していくので、結末は決まっていない状態でスタートしていますね。