グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
8月20日は、音楽誌『ぴあMUSIC COMPLEX』の副編集長、古城久美子さんからの紹介で、映画プロデューサーの高根順次さんが登場。映画プロデューサーになったきっかけや、東出昌大のドキュメンタリー映画『WILL』の制作秘話などについて伺いました。
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映画プロデューサーになったきっかけは『フラッシュバックメモリーズ3D』
Celeina(MC):古城さんは高根さんのことを「面白い人」と表現されていました。
タカノ(MC):ハードルを上げて去っていかれましたね。
高根:そうですね。何となく「変な人」というニュアンスで受け取ったんですけども。
タカノ:その辺りも伺っていきたいと思います(笑)。
Celeina:高根さんは、現在『SPACE SHOWER TV』の番組制作を担当されつつ、映画プロデューサーとして活躍されています。松居大悟監督の『私たちのハァハァ』、WACKのアイドルグループ・BiSや、サニーデイ・サービスのドキュメンタリー、そして2024年に公開になった、俳優・東出昌大のドキュメンタリー映画『WILL』を担当されています。まず、番組制作だけではなく、映画制作も始められた経緯について伺ってもいいでしょうか?
高根:初めて映画のプロデュースを担当したのは『フラッシュバックメモリーズ3D』という作品なんですが、アボリジニの民族楽器であるディジュリドゥ奏者のGOMAさんという方が交通事故で記憶障害になられて、そこから復活する過程を3Dで映像化した作品なんです。なぜ3D作品かというと、GOMAさんが記憶を失う前と、失ってから、そして現在という、過去・現在・未来を、3Dだと同じ画面の中でレイヤー構造で表現できるんです。そのアイデアを当時監督から聞いた時に、実現したいなと思いました。
ただ、僕が番組制作を務めている『SPACE SHOWER TV』はテレビなので、3D映像は作れない。3Dで表現するには映画にするしかないね、ということで、映画の制作を始めたのが最初のきっかけですね、
Celeina:すごいきっかけですね。
タカノ:この作品が、2012年の第25回東京国際映画祭のコンペティション部門で観客賞を受賞したんですよね。
高根:そうなんですよ。ビギナーズラックといえばビギナーズラックだったかもしれないんですけど、この時に映画制作の大変さと面白さが本当に骨身に沁みました。10年前の当時、3D映画を作ろうと思ったら、誰に聞いても「撮影だけで数千万円かかります」「それを完成させるとしたら億とかいくんじゃないですか」と言われて。でも、さすがに会社に3D映画を作りたいので億くださいとは言えないので(笑)。
何か方法がないか調べて、最終的にGoogleに「3D 格安」って入れて検索したんですよ。そしたら、個人で3D映像を撮影して編集している方のブログが出てきたので、その方を訪ねたら「もっと安くできますよ」と言ってもらえたんですね。「じゃあやりましょう」とスタートしたんですけれども、やっぱり山あり谷ありで。本来数千万円とかかかるものを10分の1で作っちゃおうという流れで始まったので、最終的に本当に人手が足りなくて、作業が追いつかなくなりました。撮影は無事終わったんですけど、編集がすごく大変だったので、最終的に完成したのが東京国際映画祭の上映の3日前の夜中でしたね。
Celeina:すごいですね……!
高根:完成して、夜中に劇場で初めて観た時の疲れと感動は今でも覚えています。大変だったけど、その時に、スタッフの映画に対する情熱だったり、映画祭の方々がすごく情熱を持って取り組んでいらっしゃったりすることを知りました。映画を観たお客さんの熱や感想も受け取れて、テレビにはない感動とか快感とか大変さを感じられて、本気で物作りをする1つの方法として映画は素晴らしいと思いますし、面白いなというところから始まっていますね。
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東出昌大に密着したドキュメンタリー『WILL』のプロデュースを担当
タカノ:確かにテレビ番組と違って、映画の方がより作家性が出せますよね。そして、2024年に公開になった東出昌大さんのドキュメンタリー『WILL』。これはすごかったですね。
Celeina:私は衝撃を受けました。東出昌大さんにフォーカスしているということだったので、内容的にどんなものになるのかなと思って見始めたんです。そうしたら、最初の狩猟をしていらっしゃるシーンで、痛々しい動物の死体が映るところからスタートして。でも見ていくうちに、どんどんテーマ性が深いところに行きつきますよね。生と死についてのお話だったり、メンタルヘルスのことだったりとか、テクノロジーが進化している中での生活の送り方や、SNSとの向き合い方とかも考えさせられました。そこにMOROHAさんの音楽も混ざってきて、ラストシーンは本当に泣きそうになりました。
タカノ:僕は週刊誌の記者を山に呼んで、狩猟と記者の仕事の共通点みたいな話をしていくシーンが好きでした。全体的にひたすら肉を捌くシーンがとても多くて、我々も慣れていくと言ったら変ですけど、生きるとはこういうことだなということを感じながら、身に染みていく映画でした。
高根:ありがとうございます。
Celeina:『WILL』はどんな経緯で制作が始まったんですか?
高根:もともと劇中に登場するMOROHAのドキュメンタリー番組を『SPACE SHOWER TV』で作ろうというところからスタートしたんです。作っている途中で、監督のエリザベス宮地くんから「実は東出くんのドキュメンタリーを作っているんですけど、高根さん興味ありますよね?」って言われたんですよ。
Celeina:興味がある前提で話を持ちかけられたんですね(笑)。
高根:興味ないわけないじゃんと話をしていました。ただその話をしていた時期は、東出くんにいろいろ騒動があって、本当にどん底の時期だったんですね。多分お仕事もなくなって、周りからも人がいなくなったりした時期だと思うんですけれども、ここまで有名で、あそこまで世間で叩かれた人ってなかなかいないと思うんですよ。そういう人が今後どうやって生きてくのかにすごく興味があったので、ぜひ映画を作りたいなと思ったんです。でもやっぱり、ドキュメンタリー映画としてどうなるかは、作り始めてみないと何ともわからないんですよね。
Celeina:確かに結末はわからないですもんね。