グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
8月7日は、小説家の小泉綾子さんの紹介で、漫画家 / 随筆家の小指さんが登場。7月25日に発売された『偶偶(たまたま)放浪記』の裏側についてや、画家として活動する際に用いている「score drawing」という手法について伺いました。
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偶然訪れることになった町について描いた『偶偶放浪記』
Celeina(MC):小指さんは1988年生まれ、武蔵野美術大学卒業の漫画家 / 随筆家でもありながら、本名の小林紗織名義では画家としても活動中です。
タカノ(MC):多才! 昨日のゲストの小泉さんとはお友達ということでしたが、小指さんの作品のファンと仰っていましたね。今日も聞いていると思います。
小指:ありがとうございます。
Celeina:小指さんの活動について、伺っていきたいなと思います。7月25日に、いちょう団地、神津島、石岡、沖縄などの町で見た思い出を、漫画とエッセイにまとめた新刊『偶偶放浪記』が発売となりました。

タカノ:めっちゃ面白かったです。
小指:ありがとうございます、嬉しいです。
タカノ:あまり行かないような場所を訪れていますよね。
小指:そうですね、非観光地ばかりを。ほとんどが、行こうと思って行った町というよりも、ついでに行ってみたとか、行かざるをえなかった町なんです。例えば、埼玉の寄居町について描かせていただいたんですけど、ここは数ある町の中でもトップぐらいにぐっときた町で。もともとは秩父に行ったんですけど、その時がオフシーズンだったのか、旅館がどこもやっていなかったんです。それで秩父の近くで旅館を探していたら、寄居町に辿り着きました。
タカノ:1泊3,000円の旅館に泊まったということで。でも僕も、寄居は高速道路の表示では知ってはいたんですけれども、行ったことのない町だったから、すごく気になっていたんですよ。このジャンルは漫画エッセイと言うんですかね?
小指:そうですね。所謂『ONE PIECE』みたいな漫画は私は描けないので、こういう形になっているんですが。
タカノ:旅日記を漫画で描かれているんですが、お写真が入っていたりとかもして、すごく読みやすいんですよ。描写も、よく見るとめちゃめちゃ細かかったりするので、読みごたえのある1冊です。
小指:この本に載っているお店とか旅館さんは、もうほとんど現存しないところばかりなんです。
Celeina:そうなんですか。
小指:このコロナ禍で、地方の小さい文化はなかなか難しいだろうなと思います。
タカノ:でもこの『偶偶放浪記』というタイトル通り、小指さんが偶然知った場所や、偶然訪れた場所について綴られているということで。もともと観光地よりも、生活地と言うんですかね、そういう方が好きなんですか?
小指:そうですね。この前X(旧Twitter)で感想をくださった方が、「生活地を訪れていますね」と言ってくださったんですが、確かにその通りだなと思って。「生活地」ってすごくいい言葉だなと気に入ってしまいました。私はもてなされると萎縮しちゃって、洋服屋さんも、店員さんに近寄られちゃうと逃げちゃうんです。
タカノ:「お似合いですよ」って言ってね。
小指:それが仕事だとわかっていても、苦手ですね。「いらっしゃいませ」とか言わなくても、ほっといてくれて勝手に歩くのが好きなんです。
Celeina:癒やされそう。自分の生活の延長線上にあるような旅をすることによって、心が柔らかくなる感じってありますよね。何かヒントをもらえそうだなと思います。
小指:小さい町のおばあちゃんとかを見て、こんなにゆっくり過ごしていいんだとか、こういう生き方があるんだなとか思ったりしますね。
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音楽を聴いて頭に浮かんだイメージを五線譜の上に描く
Celeina:『偶偶放浪記』をぜひ手に取っていただきたいなと思います。本名名義では画家としても活動中ということで、スタジオの方には画集をお持ちいただいております。音楽を聴いて、浮かんだ情景を描いて記録するという、独自の手法を用いられているとお聞きしています。

小指:そんな大げさなものではないんです。音楽を聴いた時に頭に浮かんだイメージや色彩、形などを、楽譜を書くように記録する感じです。
タカノ:めちゃくちゃすごいですよ。
Celeina:これを「score drawing」と呼んでいらっしゃるんですよね?
小指:そうですね。勝手に名前をつけて。
タカノ:五線譜の上にいろんな色使いの絵がありますね。図形だったり、筆でシャッて川のように流れるように描かれた模様のようなものがあったりとか。

Celeina:色使いもすごく美しいです。カラフルで、アースカラーみたいなものもありますね。
小指:口で説明できない分、見て伝わればいいかなと思って。
タカノ:これは曲を聴きながら描いているんですよね。1曲1曲イメージが違うというか。
小指:そうなんです。
Celeina:コラージュみたいで、見ていて楽しいですね。
小指:絵の具とかペンとかでは表現ができないなと感じるところは、頭の中のイメージに近い素材を探して、コラージュすることもあります。
Celeina:例えばどういった楽曲を聴いて絵にしていくんですか?
小指:私が生まれて初めて描いた作品は、ダニエル・ジョンストンさんの”Some Things Last a Long Time”というすごく大好きな曲を聴いて描きました。フリーターをしていた時、バイトの休憩時間にいつもその曲を繰り返し聴いていて。怒られてばっかりだったんですけど、音楽を聴いてボーッとする時間がすごく自分の支えになっていたんです。それで、自分の頭の中ではこんなに綺麗な景色が流れているのに、誰にも伝えられないし、一生フリーターで何もできないんだったら、ちょっと絵に描いてみようかなと思ったんです。

Celeina:初めての作品とは思えないぐらい、エネルギーを感じる作品ですよね。
タカノ:「score drawing」、気になりますね。この画集はどちらで買えるんですか?
小指:恵比寿のNADiff a/p/a/r/tというギャラリーとか、あとは取り扱ってくれている独立系の本屋さんとかでも買えます。でも基本的に流通はしていないので、もしご希望の方がいらっしゃったら私の通販からお送りします。
Celeina:嬉しい。まずは小指さんのSNSをチェックしてという感じで。さあ「FIST BUMP」、グータッチで繋ぐ友達の輪ということで、お友達を紹介してもらっています。どんな方をご紹介くださいますか?
小指:文筆家のリー・アンダーツさんという方をご紹介させていただきたいと思っています。
Celeina:どんな方なんですか?
小指:リーさんは、お母様の介護というか手助けをしたという体験を本にされたんですけれども、その本の装画を描いた関係で仲良くなったんです。月に1回、「オルタナティブ福祉」という、すごく不思議な福祉イベントを企画されている面白い方で、ぜひ紹介させていただきたいなと思って。
Celeina:ありがとうございます。明日は文筆家のリー・アンダーツさんにバトンを繋ぎたいと思います。「FIST BUMP」、今日お迎えしたのは漫画家 / 随筆家の小指さんでした。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann