メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

何事もほどほどに。小説家・安堂ホセは、人称を固めずに人の語りに合わせて変えていく

2024.9.17

#BOOK

グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。

7月23日はZ世代ライターの竹田ダニエルさんからの紹介で、小説家の安堂ホセさんが登場。最新作『DTOPIA』の執筆背景やあらすじ、執筆のインスピレーションの源について伺いました。

前回の出演から1年が経ち、2度目の芥川賞ノミネートに選出

タカノ(MC):ホセさんは、「FIST BUMP」の出演が2回目なんですよ。その時はまだ僕が1人で番組をやっていたんですが、前回は中里虎鉄さんの紹介で、今回は竹田ダニエルさんの紹介で偶然繋がったわけですけど。

Celeina(MC):二度目ましてなんですね。

タカノ:ちょっと皆さんに聞いてほしいことがあって。僕はホセチルドレン、略して「ホセチル」なんです。

安堂:第一子(笑)

Celeina:どういうことですか? 説明してくださいよ(笑)。

タカノ:小説家、安堂ホセ先生に影響を受けて、小説を書き始めたんです。

安堂:何回聞いても面白いですね。嬉しいけど、なんで急に書きたいなと思ったんですか?

タカノ:ホセさんが前回「FIST BUMP」に出演した2日後から書き始めたんですよ。当時『ジャクソンひとり』を読んで、こんなにすごい作品を書ける人がいるんだって衝撃を受けて。お話もすごく面白くて憧れちゃって、僕も小説が書きたいなと思い立ったんですよ。

Celeina:なるほど。小説家、タカノシンヤの原点がホセさんということなんですね。

安堂:ありがたいですね。

タカノ:今回は偶然ダニエルさんから繋がって。前回の虎鉄さんの紹介で会った後にご飯を食べに行った時も、ダニエルの話をしたりして。

Celeina:共通の知り合いで盛り上がった一幕もあったんですね。

タカノ:そうなんですよ。なので今日は嬉しいですね。

Celeina:そんな1年ぶりの登場となる安堂ホセさんですけれども、この1年の間に『迷彩色の男』で2度目となる第170回芥川賞候補にノミネートされたんですよね。タカノさんからおすすめされて読ませていただいたんですけど、衝撃作ですよね。

安堂:嬉しいです。色々と忙しいのに読んでくれて。

タカノ:ホセチルですから、全部読んでいますよ。ラジオで話したりもして。

安堂:本当ですか? ありがとうございます。

最新作『DTOPIA』で現代の社会問題を捉える

タカノ:さらに今月発売の河出書房の『文藝』で、ホセさんの最新作『DTOPIA(デートピア)』が発表されました。もちろん読みましたよ。

安堂:ありがとうございます。 

Celeina:私も気になっているんですよ。

タカノ:『ジャクソンひとり』から全部読んでいるんですけども、ホセさんの小説には共通しているものがあって。バイオレンスさだったり、小説自体が生き物のようで、本の中から手が出てきて胸ぐらを掴まれるみたいな感覚に陥ったりとか、そういう感じなんですよ。『DTOPIA』のあらすじなんですが、ホセさんから紹介しますか?

安堂:いやいや、お願いします。僕はあらすじをまとめるのが苦手なんですよね。この小説は要素がかなり多くて、難しいんですよ。

タカノ:そうなんですよ。なので、ネタバレにならない範囲で紹介します。まず高級リゾートの島で、恋愛リアリティーショーが実施されていて。1人の女性がいて、そこで各国の代表の男たちがバトルをするんです。

安堂:その番組の名前が『DTOPIA』なんですよ。

Celeina:もう気になる。

タカノ:「Mr.パリ」とか「Mr.LA」とか、都市の名前が人物名になっているんですけど、その中にお前という二人称で呼ばれている人が出てくるんです。その人が「Mr.東京」で。それで、番組の中でその「Mr.東京」ことキースを掘り下げる過去のシーンが映るんですよ。キースがどんな人物かというのが、どんどん判明していくんですけど。

Celeina:ちょっと待って、今すぐ読みたい!

タカノ:暴力とは何かとか、人間のアイデンティティとカテゴライズとか、人の行動原理とか正義って何なんだろうっていう、いろんな問題提起が織り込まれた作品なんです。

安堂:ありがとうございます。

タカノ:本当に素晴らしい作品なので、皆さん読んでくれ!

Celeina:『文藝』の秋号ですね。

安堂:はい。ホラー特集をやっているんですけど、それとは関係なく出させてもらいました。

人称を行き来して世界を生み出す

タカノ:『DTOPIA』についてもう少し話したいんですけど、人称がすごく印象的なんですよね。ちょうど僕も二人称小説を書いていて、「お前」も被っていて。この『DTOPIA』は「お前」で始まって三人称も出てきますよね。

安堂:そうそう。「私」という一人称で書くとか、名前を使って三人称で書くとか色々スタイルがあるんだけど、その区切りにもグラデーションがあります。それを全部使っているので、結構珍しい小説だと思いますし、それが自然に繋がったらいいなと思って書いていました。

タカノ:普通の小説は一人称だったら全部一人称で書くから、すごくチャレンジングなことをしているなと思って読んでいました。

Celeina:無意識に読んじゃっていたから、そういうことを意識したことはなかったです。

タカノ:大体一人称か三人称が多いですよね。

Celeina:人称というのは、書き始める前から決めることなんですか?

安堂:そうですね。書き始める前から大体設定として決めておくんですけど、さっきタカノさんが生き物みたいって言っていて、すごく嬉しく思いました。結局人が語っているから、人称がちょっとずつ変わっていったりしているんです。何となく感覚としては分かることを、うまく言葉にまとめるのはすごく楽しいですね。

タカノ:最初からガチガチにプロットを作ったんですか? それとも書きながら同時にやっていたんですか?

Celeina:プロットというのは何?

安堂:設計図みたいな。

Celeina:なるほど。すごい小説家トークだ!

タカノ:こんなトークできて嬉しい。

安堂:あらかじめ起承転結を考えて書く人とそうじゃない人がいるんですが、今回はガザの話とか映画の話とか、2024年の時事的な話題を入れていく必要があったので、その場で考えながら書くという感じでしたね。

タカノ:なるほど。そこに文体のグルーヴみたいなものが出ているのかもしれないですね。

安堂:そうですね。

タカノ:ガチガチに設定を固めていても、息遣いみたいなものが出なかったりして。

安堂:何事もほどほどがいいんですよ。

Celeina:しれっとパワーワードが出ましたよ。「何事もほどほどに」って。すごく刺さりました。

タカノ:確かに大事なことかもしれない。

Celeina:ものを書いていると、自分と向き合う時間が長いですもんね。

安堂ホセのインスピレーションの源

タカノ:『DTOPIA』では映画の話とか、現代に起きているいろんな出来事について語っていたりするんですけど、インスピレーションの源になっているものってありますか?

安堂:正直に言うと、誰かの作品よりも、今世の中で起きていることとか、自分の周りにいる友達が悩んでいること、自分が考えていることが多いですね。だけど小説とかフィクション全般を読む時に、この人がこれを書いたということ自体に勇気づけられることが多くて。

最近、漫画家の鳥飼茜さんと対談する機会があって、鳥飼さんの『サターンリターン』という漫画を読んだんですけど、すごく良かったです。さっきのプロットの話で言うと、終わりを決めずに色々盛り込んで、こぼれたらこぼれた分だけ作品が進んでいくみたいな。ガードレールを削りながら山道を運転していくみたいで面白いので、ぜひ読んでほしいです。

タカノ:要チェックですね。

Celeina:さて「FIST BUMP」、グータッチでつなぐ友達の輪ということでお友達を紹介してもらっているんですが、ホセさんがご紹介して下さるのはどんな方でしょうか?

安堂:友達でDJをやっている、RUKEです。

Celeina:音楽のお話も楽しみですね。明日は、DJのRUKEさんに繋ぎます。「FIST BUMP」、本日お迎えしたのは小説家の安堂ホセさんでした。ありがとうございました。

安堂:ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS