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アドビのタイプフェイスデザイナー・西塚涼子は、鍛錬を重ね新たなフォントを生み出す

2024.9.6

#ART

グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。

4月30日は、アドビのタイプフェイスデザイナーの西塚涼子さんが登場。日本でも数少ないタイプフェイスデザイナーのお仕事や、新たに開発した漫画専用のフォントなどについて伺いました。

「フォントの職人」タイプフェイスデザイナーの仕事

タカノ(MC):タイプフェイスデザイナーはどういったお仕事なのでしょうか?

西塚:皆さんが使われるフォントの文字1つ1つをデザインする仕事です。

タカノ:知らず知らずのうちにお世話になっているということですよ。

Celeina(MC):アドビにタイプフェイスデザイナーさんはどれくらいいらっしゃるんですか?

西塚:人数は多くなくて、メインデザイナーの私と若いデザイナーの2人でデザインを作っています。でも、デザイン制作後フォントに仕立てるエンジニアなどもいますので、チームで活動していますね。

タカノ:西塚さんはフォント自体を生み出しているんですか?

西塚:そうですね。フォントそのものを作っています。

タカノ:フォントの神様!

Celeina:フォントの権化!

西塚:フォントの職人です(笑)。

タカノ:タイプフェイスデザイナーの方は日本にどれくらいいらっしゃるのでしょう。

西塚:正確な数は分からないですが、フォントを販売している会社も多いわけではない上、それぞれの会社にも10人弱しかいないんじゃないかな。あとは、フリーでフォントを作っているかたもいらっしゃるので。

タカノ:フォントは今どれくらい存在しているんでしょうか?

西塚:数は分からないけど、膨大だと思います。小説のように大量に文字を使ったり、古典的な文字を利用したりするものであれば、収録数の多いフォントが必要ですし、5文字で十分に雰囲気を出せるフォントもあるので、用途によって全然フォントは違うんです。なので、いくらあってもフォントは「足りない」と言われていますね。

レタリングを機に、デザイナーの道へ

Celeina:西塚さんはどのようなきっかけでタイプフェイスデザイナーになったんですか?

西塚:大学の授業で、文字のレタリングをしたのがきっかけでした。真っ白な紙に明朝体のサンプルを見ながら書いたら、いつも印刷されている文字が自分で書けたので、楽しかったんです。その後、卒業制作でオリジナルのフォントを制作したところから、デザイナー活動が始まりました。

タカノ:でも、そんなに簡単になることのできるご職業ではないですよね。

西塚:そもそも、タイプフェイスデザイナーという枠がある会社が全然なくて。幸運なことにアドビに入ることができたので、仕事を続ける中で学んでいっている感覚です。すぐには上手くデザインもできないので、繰り返し「何でこの書体は良いんだろう」と他のフォントを分析したり、練習したりしながら鍛錬をしています。

タカノ:非常に専門的なお仕事ですからね。1つのフォントを作るのには、どれくらいの時間がかかるのでしょう。

西塚:1つの書体を極めることを考えると、10年でもいじり続けることができてしまうんです。でも2年ぐらいでリリースしないと商売にならないので、2年ほどで出せるように心掛けています。なので、手早くパシッと形を決められるようにしていますね。

タカノ:その期間内で漢字なども1個1個デザインしていくんですか?

西塚:はい。膨大な量があるんですが、前のフォントをベースにしながら新しいフォントを作っていくことで、時間を短縮できるようにしています。

特殊なのに気づかない、漫画特有のフォント

Celeina:知らない世界なのに、日々お世話になっているなと感じました。西塚さんは昨年末に、新しいフォントをリリースされたとお聞きしています。

西塚:漫画専用の『貂明朝アンチック」というフォントを発表しました。皆さん漫画を読まれると思うんですが、漫画の書体はすごく特殊で小説などには絶対に使われないフォントなんですよ。

Celeina:文字がエモーションな感じ? どのような書体なんですか?

西塚:漢字が「ゴシック」で、かなが横太の「明朝体」になっているんです。

タカノ:えぇ! ミックスなんですね⁉ 皆さんお手元の漫画でチェックしてみてください。

Celeina:このフォントにすることでどのような効果があるんですか?

西塚:絵の濃さに対して、フォントが負けないんだと思います。吹き出しの中の余白にマッチするので、読みやすいんじゃないかなと。すごく特殊にもかかわらず、自然に読めてしまう漫画特有のフォントが面白いなと思って、開発しました。

「アンチック」はかなのスタイルのことを意味する言葉なんですが、昔は「ゴシック」を意味する「ゴチ」から「アンチゴチ」と呼ばれていたんです。こういう漢字とかなのフォントは、おそらく1950、1960年代から段々と定着してきた歴史のある組み合わせなんですよね。

タカノ:フォントに興味が湧いてきました。身の回りの文字をチェックしてしまいそうです。

Celeina:「貂明朝アンチック」は現在アドビで使えるんですよね?

西塚:アドビ以外でもフォントをダウンロードしていただければ、無料でお使いいただけます。

Celeina:フォント好きの皆様はチェックしてみてください。さて、「FIST BUMP」はグータッチで繋ぐ友達の輪ということで、お友達をご紹介していただいているのですが、西塚さんがご紹介してくださるのはどんな方ですか?

西塚:漫画家の北村みなみさんです。

Celeina:一言で表すと、どんな方ですか?

西塚:パラレルワールドの住人の漫画家さんです。漫画の世界観がすごく素敵なんですよ。

Celeina:良いですね。今日はアドビのタイプフェイスデザイナーの西塚涼子さんをお迎えしました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann

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