グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
5月8日は、盆踊りアンバサダー「盆バサダー」の佐藤智彦さんからの紹介で、アーティストの高橋理子さんが登場。着物を手掛けるようになったきっかけや、円と直線のみを使ってクリエイションを続ける理由などについて伺いました。
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武蔵野美術大学で、テキスタイルについて指導中
Celeina(MC):まずは簡単にプロフィールをご紹介させていただきます。高橋さんは、東京藝術大学で伝統染織を学び、着物を表現媒体としたアートワークのほか、自身のブランド「HIROCOLEDGE」で日本各地の職人ともの作りを行っています。また、東京五輪ゴルフ米国代表公式ユニフォームのデザインを手がけたり、ロンドンV&A博物館に作品が永久収蔵されたりと、世界的に活躍されています。そして、現在は武蔵野美術大学で教授もされているんですね。
高橋:昨日、佐藤さんが出演された回を学生が聞いて、私の名前が出てびっくりしたと言っていました。
タカノ(MC):今日は教え子の皆さんがたくさん聞いている可能性がありますね。武蔵野美術大学ではどんな内容の授業をされているんですか?
高橋:クラフトデザインコースの中で、テキスタイルについて指導しています。布を染めや織りの技術的なことから、デザイン、ファッション、インテリア、アート、工芸全般と、かなり幅広く教えています。
タカノ:実習のようなこともやったりするんですか?
高橋:基本的には実践あるのみで、もの作りの課題を出して、学生が各自制作にとりくみます。一人ひとりコンセプトや研究内容がちがうので、それに対して私の知っている知識などをシェアしながらアドバイスしていくという感じですかね。
Celeina:常時何人ぐらいの生徒さんを抱えていらっしゃるんですか?
高橋:私の学科は工芸工業デザイン学科と言いまして、全体では1学年120人くらいいるんですが、各コースに細かく分かれていくとテキスタイルは1学年15、6人です。
Celeina:では、集中して一人ひとりに向き合って指導するような感じでしょうか?
高橋:そうですね。1人とかなり対話をしながら制作を見ています。
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着物の無駄のない構造に魅力を感じた
タカノ:そもそもテキスタイルとは何か、というところからお伺いしてもいいでしょうか。
高橋:皆さんが着ている服、つまり布もテキスタイルですし、ある意味繊維からできているものはすべてテキスタイルに含まれると言っていいのではないかと思います。不織布のマスクや和紙なども繊維を絡ませて平らな状態にしているという構造は同じで、広義の意味では紙も入ってくるぐらい幅広いジャンルです。
タカノ:デザインが入っているものというイメージですかね?
高橋:繊維が関連するもの全般を指すイメージでしょうか。例えば、土に還る繊維の研究をする学生もいますし、単に白い布に表面的な図柄をデザインしてプリントする学生もいます。さらにそれを服にする人もいれば、伝統的な技法を使って着物にする人もいます。一言では言い表せないですね。
タカノ:なるほど、奥が深いですね。
Celeina:「着物」という言葉が出てきましたが、高橋さんが着物を表現のベースにされるようになったきっかけは何だったんでしょうか?
高橋:もともと小学校2年生の時に、ファッションデザイナーになって世界に出て行くぞというのを心に決めて、それに向かって生きていたんですね。ファッションの高校に進んで服作りを学んで、布から服作りをしたくて大学に進んだんですけれども、私が行った東京藝術大学の工芸科では伝統工芸を中心に学ぶので、常に参考資料が着物だったんです。
日本の伝統染織技法、つまり染めたり織ったりは、基本的に着物を作るために生まれた技法が多いので、昔の着物を参考にしながら技法の習得をしていました。着物という服が日本にはあるんだと知ってはいたものの、実際に手掛け始めたら、生地を全く無駄にせずに、丸ごと身にまとえることに気がつきました。隅々まで染めた生地を仮にシャツにしようとすると、かなりカーブが多くて端切れがたくさん出る。でも着物は、幅約40cm、12mの反物の1反を丸ごと1着にできるんです。捨てるところがないんですよ。
タカノ:なるほど! 考えたことがなかったです。
高橋:だから昨日ご出演された佐藤さんも私も、同じ反物1反から浴衣を仕立てることができるんです。縫い込む量を変えるだけで大きさを変えられるので、切って捨てないんですよね。その合理的で無駄のない構造に魅力を感じて、着物の世界に入っていったので、私としてはファッションの流れの中で、衣服として着物を手がけ始めたというのが最初です。
Celeina:かなり奥が深いですね。