グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
10月17日は、YOASOBIやももいろクローバーZのミュージックビデオなどを担当されている映像作家の長添雅嗣さんが登場。映像作家になるまでの道のりや、『呪術廻戦』第1期のエンディングの制作方法、趣味のソロキャンプの楽しみ方についてのお話を中心に伺いました。
INDEX
CM、MV、アニメと幅広く映像を制作するようになったきっかけ
Celeina(MC):まずプロフィールを紹介させていただきます。長添雅嗣さんは1979年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、映像制作会社に入社され、CMやミュージックビデオを手がけられています。その後独立され、近年ではアニメーション作品も制作。代表作として、YOASOBIやももいろクローバーZのミュージックビデオ、そしてアニメ『呪術廻戦』第1期のエンディングなどを担当されています。
タカノ(MC):すごいご活躍ですよね。このラジオを今聴いている方で、長添さんの作品を目にしている方も多分たくさんいらっしゃいますね。そもそもCM、ミュージックビデオ、アニメと幅広く映像を作られていますけれども、映像に興味を持たれたきっかけは何だったんですか?
長添:最初は映像じゃなくて、絵を描く人になりたいなと漠然と思って、青春時代を過ごしていたんです。僕が美大に入ったのが1990年代の後半なんですけど、学生が持っているパソコンでグラフィックデザインができるのは当たり前で、音楽や映像も作れるようになってきた、そういうタイミングだったんです。なので、イラストを描くだけで終わらないで、それを動かしたらもっと面白いんじゃん? みたいな感じで、いつの間にか映像をやっていたという感じですね。
タカノ:やっぱり実際動くと、気分が高まるというか。
長添:そうですね、上がりましたね。家で1人で作っているだけだったんですが、好きな音楽をつけていました。イラストだと、音楽をつけられないじゃないですか。デスクトップ上で、自分の好きな音楽と自分の描いたイラストをがっちゃんこするだけでも楽しかった。
タカノ:確かに、音楽がついたり動きがついたりすると、より世界観が。
Celeina:広がる感じありますよね。長添さんのルーツ的な部分も伺っていきたいんですけれども、子供の頃に好きだった作品とかカルチャーとかは何かありますか?
長添:いやもう至って普通の少年だったので、『週刊少年ジャンプ』に載っていた『ドラゴンボール』だったり、『聖闘士星矢』とか『ガンダム』もそうですね。高学年になってからは、大友さんの『AKIRA』。
タカノ:昨日と繋がりましたね。
長添:あとは押井守監督の作品、宮崎駿監督の作品とかも小さい頃から見ていました。
タカノ:子供の頃から絵を描いていたんですか?
長添:そうですね。動物が大好きで、図鑑に描いてあるチーターだったりライオンだったりのイラストが子供にとってめちゃくちゃかっこいい存在で、それを一生懸命模写していたのが、一番古い記憶ですね。
Celeina:すごい。じゃあ図工の時間とか美術の授業とかは結構お得意だったんですか?
長添:そうですね。
Celeina:私は美術の成績2とかだったので、うらやましいです。音楽派だった。
タカノ:向き不向きとか色々ありますね。
Celeina:そして長添さん、そういったカルチャーを好きな中、もう少し年齢が上になられた時に、ストリートカルチャーとかヒップホップにハマった時期もあったという。これはいつ頃ですか?
長添:中学生ですね。『スラムダンク』が全盛期だった時代で、もれなく僕もバスケ部に入って、バスケットやNBAを好きになったんです。マイケル・ジョーダンが全盛期のタイミングで。そうなると中学1年生にして、自然とブラックカルチャーが身近な存在になってきて、ラップだったりR&Bだったりを中学生の頃から聴き始めていましたね。
タカノ:早くないですか。
長添:でもバスケのおかげだと思います。
INDEX
作品の根底にある、美しさやかっこよさをしっかり表現したい
タカノ:そして美大を卒業されてから、ミュージックビデオを撮るようになったという。きっかけは何だったんですか?
長添:美大を卒業してから、小島淳二監督に弟子入りしたんです。小島監督の下で、数年一応監督志望でアシスタントをやっていたんですけれども、タイミングってなかなかないもので。アシスタントなので、僕の作品集には1個も作品がない状態なんですよ。そんな状況で、もう自分で1本監督やりたいなと自信がついてきたタイミングで、レコード会社さんからミュージックビデオの企画コンペの話があったんです。そこで僕の企画を選んでもらって、ミュージックビデオを作り始めることができました。
タカノ:勝ち取ったということですよね。そこからアニメ作品にも幅広く携われていますが、『呪術廻戦』第1期のエンディング、僕、昨日改めて見返してみたら、長添さんの名前がクレジットにあって、「あ!」と思って。ちょっとパステルカラーっぽい感じのポップな世界観がありますよね。今エンディングの曲が流れていますけれども。
Celeina:ALIさんの”LOST IN PARADISE”。
タカノ:この曲にあの映像を合わせるというセンスが、僕はやっぱりセンスの鬼だなと思って。あれはどうやって作ったんですか?
長添:最初に描いたスケッチを持ってきたんですけど。
タカノ:貴重な! コンテのようなものですか?
長添:コンテの前ですね。アイデアを練り始める、一番最初のプロセスみたいなものです。映像なので本当は絵じゃ表現できないんですけど、1コマで表現するとどんな感じだろうというイメージスケッチを大体最初にするんです。
タカノ:いや、それでももう世界観そのままですね、静止画ですけど、あのエンディングのアニメーションをそのまま切り取ったというか。
Celeina:すごく貴重な資料ですね。
タカノ:改めて、色んな映像作られていますけど、何か一貫したこだわりとかはあったりしますか?
長添:多分どのクリエイターもそうだと思うんですけど、自分の作ったものを軽く見られたくない。アニメにしても実写にしても、クオリティを上げるというよりも、作品の厚みを増して、どんどん重くする作業をしたいというか。その点にこだわってブラッシュアップして作っていく。ちょっと抽象的ですよね。
タカノ:重くするという。だから心により残るという感じですよね。
長添:ということでもあるし、表層的なかっこよさを追い求めるので終わりたくない。もっと根底にある、美しさとかかっこよさをちゃんと表現して完成させたい。
タカノ:それはすごく大事なワードですよ。表現している方とか、もの作りに携わっている全ての方に対して、必要なマインドというか。
Celeina:いつまでも大事にしたい考え方ですよね。
タカノ:重くしていきましょう、我々も。さあ、でここで1曲挟みたいんですけど、長添さんにこの時間にラジオでみんなで一緒に聴きたい曲を選んでもらったんですが、どんな曲でしょうか?
長添:さっきちょっとお話ししたんですが、僕が初めて監督させてもらった映像作品がBOOM BOOM SATELLITESの”Kick It Out”のミュージックビデオなんです。その思い出の曲ですね。
タカノ:じゃあ聴いてみましょう。
INDEX
不便さを楽しむのがソロキャンプの醍醐味
Celeina:長添さんの選曲で、BOOM BOOM SATELLITESの”Kick It Out”をお送りしました。
タカノ:これを担当したの、長添さんだったんですよ、リスナーの皆さん。見た方は結構いると思いますけれども。かっこいいグラフィックというか、歌詞が口から出てきたりとか。
Celeina:もし見たことないリスナーさんがいらっしゃったらぜひこのタイミングでチェックしてもらいたいですよね。そして長添さん、お仕事のお話を色々と伺ってきましたけれども、お仕事以外で何か好きなカルチャーはあったりしますか?
長添:すごく流行っているのでありきたりなんですけど、キャンプが好きで。特にソロキャンにはまっていて、もう10年弱ぐらい昔からやっていますね。
タカノ:じゃあ結構もうギアもたくさん。
長添:いや、ギアは多分めちゃめちゃ持ってない方ですね。ソロキャンプにはまるようになって、ギアがない方がいいということに気付いたんです。ギアがありすぎると面白くない。
タカノ:不便な方がいいということですか?
長添:そうですね。トラブルが発生した方が面白い。あれ忘れた、これ忘れたとか。
Celeina:具体的にどんなトラブルを楽しんでいらっしゃいますか?
長添:ハードなトラブルはそんなにないです。ただきっかけは、本当に些細なトラブルなんですけど、箸を忘れたんです。キャンプ場に着いてすぐ、カップラーメンを食べたかったから、カップラーメンを持って、お湯も準備できているんだけど、箸がない、ってなって。でも考えてみたらナイフもあるし、木もあるから、箸ぐらい作れるんじゃないかと思って、割り箸をいくつか作ったんです。その時に、これが楽しみ方なのかなと思って。物を忘れた方が楽しかったり、買わない方が楽しかったりするんじゃないかな、というのに目覚めました。
Celeina:長添さんが直近で行かれたソロキャンプの忘れ物って何かありますか?
長添:忘れ物というか油断なんですけど、ソロで行くときは、僕はタープを張らずに青空の下に椅子を置いて、ちっちゃいテントだけ張ってやるんです。そうしたら全然天気予報に書いていない嵐が夜中に来てしまって。深夜2時、3時とかに風も強いし、テントも倒れちゃって、どうしよう寝れないとなって。
Celeina:緊急事態ですよ。
長添:緊急事態なんですけど、でもそこで、なんのこっちゃないんですけど、車の中で寝りゃいいじゃんって思ったんですよ。
Celeina:めっちゃシンプル。
長添:何もテントで寝る必要はない、車の中で寝ればいい。
Celeina:ルールなんてないですもんね。自分の時間ですから。
長添:大雨だと、バーって風の音とか車のルーフに雨粒がバタバタってなるじゃないですか。その音を聴いていると、車内に包まれた安心感がすごくあったんです。それで、僕、次の日に車の荷台に板を引いて、車を改造して、車で寝られるようにしました。
タカノ:今お写真をiPadで用意してくださったんですけど、めちゃめちゃ改造しましたね。すごいですよ。
Celeina:後部座席のところに板を張って、そこで寝たりごろごろしたりできるということですよね。
長添:こうすればいつ嵐を食らっても大丈夫かなと。
タカノ:なんでも作っちゃうというのがすごいですよ。色んな気付きがありそうですね。仕事にも繋がりそうというか。デジタルデトックスにもなりますよね。デジタルどっぷりですもんね。
長添:そうですね。どっぷりです。
Celeina:ちょっと色んなお話を伺ってきましたけれども、「FIST BUMP」はグータッチで繋ぐ友達の輪ということでお友達をご紹介してもらっているんですけれども、長添さんがご紹介してくださるのはどんな方ですか?
長添:同業なんですけど、『新世紀エヴァンゲリオン』を作っている会社、スタジオカラーの吉崎響監督です。
Celeina:一言で表すと?
長添:センスを磨きすぎたオタク少年。
タカノ:センスからセンスへ。ありがとうございます、明日はスタジオカラーの吉崎響さんに繋ぎます。
Celeina:「FIST BUMP」今日は映像作家の長添雅嗣さんをお迎えしました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann