2022年にディズニープラス「スター」の日本発オリジナルドラマとして配信されたヴィレッジサイコスリラー『ガンニバル』。閉鎖的な村を舞台に繰り広げられるミステリーやアクションもさることながら、話題を集めたのは狂気の主人公・阿川大吾を演じた柳楽優弥の怪演だった。3年の時を経て公開されるシーズン2で、この物語はどう展開していくのか。完結編と銘打たれた本作を、ライター・長内那由多がレビューする。
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壮絶なクリフハンガーで終幕したシーズン1に続く、待望の続編
中国地方の何処か、わずかな人口の限界集落・供花(くげ)村に新たな駐在として、柳楽優弥演じる警察官の阿川が赴任してくる。緑豊かな自然に囲まれ、穏やかな人々が暮らすこの村で、妻と幼い娘、家族3人の新たな生活を送ろうとしているのだ。しかし、前任者は謎の失踪を遂げており、村人たちは笑顔の裏で大地主の後藤家を恐れている。間もなく行われようとしている村祭は、子どもを生贄にした古来の食人風習を伝えており…。
あなたは供花村に戻らなくてはいけない。二宮正明による同名漫画を原作としたTVシリーズ『ガンニバル』の完結編、シーズン2がいよいよ配信される。ストリーミングプラットフォームの隆盛以後、英語圏以外で製作されたTVシリーズが世界規模の大ヒットを記録することは珍しくなくなったが、ハリウッドがパンデミックとストライキを経て製作能力に衰えを見せる中、2025年はNetflixの『阿修羅のごとく』、そして『ガンニバル』シーズン2ら日本作品が現時点のベストと言っていいだろう。

本作の面白さはホラーの人気ジャンル「因習村モノ」の扱い方にある。都会からやってきた主人公が一見、親切な村人たちと接しているうちに、やがて古くから伝わる恐ろしい因習を知る……。本作ではカニバリズムという禁忌と、排他的な住民の集団心理が恐怖を呼ぶが、従来であれば巻き込まれ、次第に精神を蝕まれるであろう主人公が、初めから“狂っている”ことに定番を覆す醍醐味がある。原作漫画でも阿川の秘められた暴力性は示唆され続けるものの、演じる柳楽はほとんど狂犬のような獰猛さ。素晴らしい身体性による突き抜けた暴力警官ぶりが、狂気の村人を圧倒する様に異様な快感があるのだ。
