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ドラマ『舟を編む ~私、辞書つくります~』が描く「今」の肯定と、変化する言葉と人

2025.8.19

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©NHK
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用例採集された言葉のように「見つけてもらえた」登場人物たち

みどりを「言葉たち」が眠る資料室に案内する馬締(野田洋次郎) / ©NHK
みどりを「言葉たち」が眠る資料室に案内する馬締(野田洋次郎) / ©NHK

第8話でみどりは、100万枚の用例採集カードが眠る資料室を案内され、そこにいる「言葉たち」に向かって、思わず「見つけてもらえてよかったね」と思う。また、離婚後に再婚し、妻(野呂佳代)は出産を控えていることで、みどりに肩身の狭い思いをさせていないか心配する父・慎吾に対し、みどりは、今の楽しそうにしている両親を見ているから大丈夫だと答える。そして、かつて慎吾が褒めてくれた幼少期の光景を回想し、そこに馬締が彼女の整理整頓の能力を「辞書作りの才能」として認めてくれた光景を重ね「見つけてもらえたから」と呟く。みどりは馬締に、辞書編集部に「見つけてもらえた」今の幸せという、自身の「その先」があるからこそ、悲しかった過去ごと受け入れることができているのだろう。

用例採集された言葉たちだけでなく、彼女自身にも当てはまった「見つけてもらえた」という言葉は、これまで本作が描いてきた登場人物すべてに当てはまるのではないだろうか。例えば第4話で、『大渡海』の監修者である松本に辞書の「申し子」のようだと言われる馬締とみどり。第7話で、宣伝部にいることは「辞書の神様の計らいだったかもしれない」と松本に言われる西岡。そして第9話で、「松本先生みたいな日本語学者を目指します」と言われて「私には君を授けてくれましたか」と松本が呟くことで「松本にとっての申し子」となった天童。まるで「辞書の神様」その人のように、朗らかな微笑みで「その人がその場所にいる意味」を教えてくれる松本は、彼が何十年にも渡って担ってきた用例採集そのもののように、言葉たちのみならず、彼らの居場所を作ってきた。

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