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『エミール・ガレ:憧憬のパリ』展レポート。故郷との関係に揺れるガレの実像を知る

2025.3.25

#ART

ガレ50代、3回目の万博(1900年)

大成功を収めた前回の万博から、さらに11年たった1900年。史上最大規模で開催された「世紀のパリ万博」において、円熟期を迎えたガレの芸術はよりダイナミックに躍動している。

昼顔形花器『蛾』エミール・ガレ 1900年、サントリー美術館蔵

昼顔形花器『蛾』を見てみると、器に花の装飾を施すのではなく、もはや花器自体が花になっている。花びらに走る薄い筋まで繊細に表現されており、まさにガラスの花だ。実用できなくもないけれど、花を活けるよりもそれ自体を眺めていたくなる。素材や技法の研究によって表現の幅が格段に広がり、作品がもはや「美しく装飾された器」から、「芸術的な意志を持ったガラスのオブジェ」へと進化を果たしているのがわかる。

栓付瓶『葡萄』(手前) 花器『おたまじゃくし』(奥) ともにエミール・ガレ1900年、サントリー美術館蔵

ガラスの別パーツをくっつける「溶着」という技法を使った、立体的な作品も面白い。手前はブドウ、奥はオタマジャクシをモチーフにした作品で、それぞれにテーマを補強するような詩の一説が刻まれている。30年前の、初万博の時の杯と見比べてみてほしい。自然観察に基づいた自由な発想と、それを実現させる技術、見る人に語りかけるような精神性。エミール・ガレがなぜガラスの分野でこんなに有名なのか、心から理解できた気がした。

1900年の出展作品は「これはどうなってるのだろう?」と思わされる見応えのあるものが多く、取り上げ始めるときりがないほどだ。来場時には、鑑賞時間をたっぷりと残した状態で第3章に挑むことをおすすめしたい。

飾棚『森』エミール・ガレ 1900年頃、サントリー美術館蔵

ちなみにこの章では、ガレの家具作品も見ることができる。手前のチェストはその名も『森』。木々の枝のような枠組みの向こうに寄木細工で描かれた自然風景が広がる、没入感のある作品だ。アール・ヌーヴォー好きならうっとりしてしまうこと必至である。なお、この年の万博でガレは、ガラス部門グランプリ、家具部門グランプリを受賞している。

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