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『エミール・ガレ:憧憬のパリ』展レポート。故郷との関係に揺れるガレの実像を知る

2025.3.25

#ART

ガレ40代、2回目の万博(1889年)

さらに11年後。ガレ2回目の参戦となる1889年の『パリ万博』は、結論から言うと大勝利であった。およそ300点も出展されたガレのガラス作品の中でも、注目は「黒色ガラス」である。ガレは大舞台にあわせて、それまであまり使われることのなかった黒色のガラスを活用した作品を発表したのだ(「月光色ガラス」のように「闇夜のガラス」といったネーミングをしても良かったのでは、などと思いもする)。黒色で生と死、悲しみなどを表現し、作品に抒情的な深みを与えたのである。この頃から、ガレの作品は明らかに物語性を増し、エモーショナルなものになっていく。

花器『ジャンヌ・ダルク』エミール・ガレ 1889年、大一美術館蔵

黒色ガラスを使った大作、花器『ジャンヌ・ダルク』では、凸状(陽刻)と凹状(陰刻)の彫り方を使い分け、光を当てるとジャンヌだけが光って見えるようになっている。まさに、戦場に差し込む一筋の光である。

花器『蜻蛉』エミール・ガレ 1889年、サントリー美術館蔵

ガレは自らの黒色ガラスの作品を「悲しみの花瓶」と呼んでいたという。花器『蜻蛉』を見ると、その言葉が特に腑に落ちる。力尽き、水面に落ちるトンボ。下のほうをよく見ると、水面に映る姿も繊細な凹凸で表現されている。トンボは迫り来る自分の姿を見つめながら死に向かってゆくのだ。前に立っていると自然と感情移入してしまいそうな、引力の強い作品だ。ちなみにトンボは昆虫好きのガレにとって特にお気に入りのモチーフで、この会場でも実に多くのトンボを見ることができる。ガレの作家性が大きく花開いたこの万博で彼は、ガラス部門グランプリのほか、陶器部門で金賞、家具部門でも銀賞を受賞するという大きな成果を挙げている。

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