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デッドプールファンはメタ能力を愛している
デッドプールの能力は、ヒーリングファクターと呼ばれる治癒能力である。『デッドプール&ウルヴァリン』のもう1人の主人公、ウルヴァリンのミュータント能力を移植されて得た超能力であり、銃弾や刃物で心臓を貫かれようと、首を斬り落とされようと、爆発で全身粉々になろうと、血の一滴、細胞の一つでも残っていれば再生することが可能である。この能力を得るまでには様々なドラマがあるが、それは映画『デッドプール』の第1作をご覧頂きたい。
デッドプールはこの治癒能力により、元から患っていた末期癌の細胞が治癒と再生を繰り返す全身癌細胞人間となってしまい、その苦痛から狂気に陥ってしまう。しかし、その狂気によって人智を超えた認識能力を得たデッドプールは、自分がコミックや映画の中のキャラクターだと認識できるようになってしまう。そのため彼は読者や鑑賞者に語りかけてくるという超越的なメタ能力(演劇用語では客席を意味する「第四の壁」とも言う)を発揮するに至った。
デッドプールを愛するファンは、このメタ能力を愛している。何故なら、コミックや映画の中の主人公が自分に語りかけてくれたり、現実世界の文化や芸能ゴシップで笑わせてくれるからだ。そして、この「なんでもあり」のメタ能力を用いても世界観が破綻せず、むしろ最大限発揮できるのが最初に述べたマルチバースという概念である。『デッドプール&ウルヴァリン』を楽しみにしているファンの90%以上は、この「なんでもあり」を期待しているのではないだろうか。死んだキャラクターが生き返っても、あっちこっちの世界でキャラクターを皆(検閲)しにしても「デッドプールなら仕方ない」にでき得る、唯一無二のキャラクターなのである。