INDEX
“独白“で描かれた、届かないラブレターの物語
ー最後に、現状の最新曲である“独白”について伺わせてください。静謐な、けれどあたたかみのあるサウンドと柔らかな歌声で始まっていく楽曲なんですが、曲が進行するにつれて音が重なっていって、骨太なバンドサウンドが出てきたり、後半にいくにしたがってサウンドも歌唱もダイナミックに展開していきます。『私の背景』を作り上げた後、つまり、自分自身の奥にあるものと改めて向かい合った上でこういう曲が生まれてきたのはどうしてでしょうか。
山本:この曲、2回目のサビまではEPを作る前にできていたんです。“ニコラスの喜劇譚”を作ってた時に、どっちを仕上げて出すか悩んでいたもう1曲が今回の“独白”で。だから作曲の面では時系列的にはEPよりも前なんですけど、アレンジの面ではEPを経てのモードが強く関係していると思います。というのも、EP前まではいろいろ試したいと思っていたところから、もう少し元々の自分が持っているサウンド観、つまりバンドサウンド的なアレンジを深めたいなと思って。EPではパーソナルな自分の表現を突き詰めたので、その上でそれをバンドでやったらどんな感じになるか意識して作りました。
ーこの曲、仮タイトルの段階では“Love Letter”というタイトルだったところから、最終的に日本語で“独白”というタイトルがついたところが、山本さんの音楽を表しているなぁと感じたんです。実際、この曲はラブソングではあるし、<あなた>という存在が歌われてはいるけれど、どこまで行ってもひとりきりの世界から歌われている楽曲で。歌詞の世界がこういうふうになっていったのはどうしてだったんですか。
山本:実はメロディとかを作るよりも前から、歌い始めの歌詞だけあって。
ー<いつだってあなたはそう言って 窓の外ばかり見るの>という部分。
山本:そうです。書き留めていたその言葉がこの曲にハマるなと思ったので、そこから物語を想像して書いていった感じで。あと、仮タイトルと英語タイトルになってる“Love Letter”は、岩井俊二さんの映画『Love Letter』のイメージも混ざってます。自分が書いたラブレターが届かない――映画では別の人に届いちゃうんですけど、実際に送りたい人には届いていないみたいな、一方通行のコミュニケーションみたいなものを描きたかったんです。それって凄く孤独ではあるんですけど、ただ、その手紙を書いたという事実自体がその人にとってもお守りになるんじゃないかなっていうイメージで書きましたね。
ーなるほど。今のお話はまさに、山本さんが音楽を作る意味を表しているんじゃないかなと思います。
山本:そうかもしれないです。今思ったのは、『私の背景』に関しても、そもそも自分がずっと聴ける音楽を作ろうという気持ちもあったんですよね。そういう意味では、まず自分にとってのお守りを作るっていうのが、音楽を作る出発点かもしれないです。

ーそうやって作った音楽はきっと、同じような想いを抱えている人にとってもお守りになるんじゃないでしょうか。そしてこの社会の片隅で人知れず自分が悩んでいること、葛藤していること、あるいは願っていることはひとつも無駄じゃないんだっていう、そういうエールにもなるんじゃないかと思います。相手に届いたとしても届かなかったとしても、その手紙を書いたという事実、その気持ちを抱いたという事実自体にとても意味があるし、大切なものなんだ、と。
山本:そうですね。孤独の中で自分自身がそこにまっすぐ向き合えば向き合うほど、そうやって綴った想いは受け取った人にとっても大事なものになるという確信があって。
だからこそ、曲では絶対に嘘がつけないんです。たとえば「こういう感じにしたら、こう聴いてくれるんじゃないか」みたいに分析することも今の時代は大事なのかもしれないけど、そういう分析から何かを作っても、絶対に本物にはならない。そういうことではなく、もっとまっすぐに自分と向き合って、そこにある本当のことを形にしていくことが、結果的に受け取ってくれる人にもちゃんと伝わる表現になると思っています。
山本大斗“独白”
山本大斗 2nd EP『私の背景』

2024.11.6(水) On Sale
M1. 漣 -Sazanami-
M2. 窓辺ゟ -The Window-
M3. 私の背景 -My Scenery-
M4. 夜明迄 -Eternal Sunshine- ※10.23(水)先行配信
M5. 粼 -Seseragi-