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「俺って普通のおじさんなのかもしれない」(安宅)
―6曲目“彼誰”は地元のことや家族のお話しにも受け取れますが、何を考えて書いた曲でしょうか。
安宅:この曲はどちらかというと、自分の下の世代に思ってほしいことを書いています。卒業式とかで歌ってほしい。育ててくれた人に感謝できたりするのって、普通は大人になって、ある程度自分で何かを経験してからだと思うんですけど、下の世代の若い子たちに、こういうことを思ってほしいなと思って。
―「下の世代に向けて」というのはすごく象徴的だと思うんですけど、「誰かに向けてなにかを伝えたい」という原動力は今の安宅さんに芽生えているものなんですかね?
安宅:……恥ずかしい。
―(笑)。

安宅:自分はずっと「なにも言わない」曲を作ってきたはずなんですよね。なので、このEPが誰かになにかを言っているものになっているのだとすると、非常に恥ずかしい。おじさんになってきちゃったのかなって。……でも、きっとなにかあるんですよね。「なにか言わないといけないんじゃないか」と、思ってしまっている。姪や甥の存在が大きいかもしれないなぁ。
秋田の地元の近所に駄菓子屋があるんですけど、実家と駄菓子屋の間にガードレールもなにもない国道があるんですよ。雪道の中、その国道を渡って、まだ3歳とか5歳の姪と甥と手を繋いで、駄菓子屋に連れて行ったことがあって。そのとき、「こいつら、俺の管理ミスで死んじゃうな」と思ったんです。「俺も多少、守ったりしないといけないんだ」と思った。そういうのはデカいかもしれないです。「言えることは言わないと」という気持ちは、自分の中にあるのかもしれない。非常にお恥ずかしい。
―今までのdaisanseiの作品の中で、今回のEPは一番、他者に向けてなにかを言おうとしている作品のように感じました。
安宅:前は、昔の自分にしか歌っていなかったですからね。そこは大きく変わっているのかもしれないです。
―青春の終わりを感じたあと、じゃあ、どうやってまた足を踏み出すかと考えると、「言えることは言う」というのは、とても大きな力になりそうですよね。
安宅:そうですね、それは絶対にそうだと思う。でも、よく考えたら、これって普通の変化ですよね。俺って普通のおじさんなのかもしれない。
―安宅さんは普通じゃないですよ。
安宅:そうですよね、普通じゃないですよね。よしよしよし……。

―(笑)。
安宅:まぁでも、自分も案外平凡なんだなと思います。一生、中学生くらいの頃から変わらないのかなと思っていたけど、やっぱり平凡に変わっていく部分もあるんだなと思います。そこには嬉しさもあれば、悔しさもある……そんな感じですね。