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もの言わぬモノが語り、世界が上書きされていく
一方、ここで明らかにそうした物理的な接触とはことなる次元にあるのが、歌だ。喉を自らふるわせることで発される歌という音は、文字通りの接触をともなわない。けれども、歌は言葉とメロディを伴いながら、物理的なそれとは違う接触の感覚、なにか別の時間や場所に通じ、触れてしまう体験をもたらす。
“鯨の庭”のあと、短いMCを挟んで以降は、“落花生の枕”をのぞけばすべてが歌を中心とした楽曲が並ぶ。“人攫い”“枕の中”“長崎ぶらぶら節”“Carta de Obon”“外は小雨”。やわらかくふくよかな歌声は、聴く人をここではないどこか――幼少期の思い出や、シュルレアリスティックな情景、長崎観光、あるいは異界に通じそうなお盆の頃――にいざなう。
しかし、そうした歌がもたらす接触の奇妙な力をもっとも感じたのは、ライブのハイライトといっていい“Carta de Obon”に並んで、最後に演奏された新曲の“話したがっている”だった。ハンドマイクを片手に歌う角銅の言葉にあわせて、音楽そのものに緩急がうまれてゆく。そして、目に入ったものを次々と名指していく語り。「◯◯が語りかける、××が語りかける……」。そんな言葉を通じて、もの言わぬモノが、なにかを語ろうとする主体となって、いまいる空間に別の世界が上書きされていくかのように思えてくる。

いったん退場をはさんだ後のアンコールでは、さらに新曲が披露された。角銅と古川のギター&声を中心に、コールアンドレスポンスとスティーブ・ライヒ風のフェイズシフティングを折衷したような一曲。子供の遊びのようなほがらかさとスリリングなグルーブに身を委ねているうちに、ライブは終演となった。
『Contact』のツアーグッズ制作をきっかけに深まった山形との縁が、文翔館でのライブというかたちで実を結んだ『Contact × 山形』。その実がまた新しい種になって、今後も山形と縁をつないでいってほしいと思う。
角銅真実Band Set [Contact] 山形公演 | Contact × Yamagata
2025年5月18日(日)
会場:山形県郷土館「文翔館」議場ホール(山形県山形市旅篭町3丁目4−51)
時間:15:00開場 / 16:30開演
出演:角銅真実 Band Set
角銅真実(Vo, Gt, Marimba etc…)、秋田ゴールドマン(Contrabass)、巌裕美子(Cello)、古川麦(Gt, Cho etc…)、光永渉(Drs, Cho)
PA:Moky
企画:Contact × 山形
制作:山口麻里菜(CAT TyPING Records)
メインビジュアルデザイン:吉勝制作所
広報&記録編集:永江大
協力:竹田大純(HAUS)
主催:CAT TyPING Records
角銅真実ツアー2024 Contact アーカイブブック『Contact Radio Book 2024』
仕様:B5サイズ、リング製本、140ページ
価格:12,000円
発行日:2025年5月18日 初版第一刷
発行:CAT TyPING Records
企画:角銅真実+吉勝制作所+永江大
協力:藤田塁
編集:永江大(MUESUM)
デザイン:吉田勝信(吉勝制作所)
写真:吉田勝信・稲葉鮎子・永江大、成田舞、Hana Yamamoto、山城丗界、玄宇民
テキスト:吉田勝信、角銅真実、坂本森海、坂本紬野子、kougame、Hana Yamamoto、山城丗界、城一裕・井上祐介、Akito Tabira、玄宇民、松永良平、竹田大純
ツアーふりかえりコメント:秋田ゴールドマン、巌裕美子、光永渉、古川麦
UFO目撃情報:山城大督、野田智子、大城真、東岳志、鷹取愛、とんち、ワカマツヨウジン、Hana Yamamoto、田上敦巳(goat)、Motoki Tanizawa “Moky”、Akito Tabira、SUGAI KEN、kougame、竹下梨沙・竹下雅哉、加藤智哉、原田郁子、岡田愛里(BRANCHINCENSE/air.i___)、梶野泰範
印刷:
〈表紙〉
印刷管理 大内宏輔(株式会社ソノベ)
印刷 株式会社ソノベ
抜き型制作(有)精工抜型
抜き加工(有)モトキ紙工
合紙・仕上断裁(有)菊信紙工所
箔押 吉勝制作所
特別協力(紙の提供)株式会社ソノベ
〈本文〉
単色印刷 吉勝制作所
カラー印刷 株式会社グラフィック
写真プリント 株式会社北海道ダイヤ
製本:吉勝制作所、参加者のみなさん
©CAT TyPING Records 2025
https://manamikakudo.com/contact-radio-book