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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

角銅真実と地元クリエイター達の縁が生んだ特別な一日。山形・文翔館ライブレポート

2025.6.18

#MUSIC

「接触=contact」を意識させられるバンドセットの演奏

『Contact』というアルバムは、ボーカル曲からインストゥルメンタルまで、バンドの織りなすアンサンブルとグルーブが印象的な作品だ。変拍子が多用されたリズムの編み目が、漂うような歌のメロディの背景で繊細なテクスチャをつくりだす。一方で、ライブはむしろ、弱音からクライマックスまでのダイナミクスがより強調され、変拍子やポリリズムはよりいっそう躍動感を増す。

“i o e o”は、まさにそうしたライブならではの楽曲のひろがりを存分に示していた。続く“蛸の女”ではチェロやコントラバス、ギターで強いミュートを使った特殊な響きも効果的に用いられ、“theatre”ではリズムが三連とスクウェアなビートを行き来し、ダンサブルでありつつ緊張感にあふれた演奏がつづく。

写真:玄宇民

ここで角銅によるMCタイムに入り、小休止。山形へ来ることになった理由を語りながら、当日バンドメンバー一同が着ていた衣装の紹介も。モノトーンで統一された衣装は、山形県寒河江市のニットブランド・BATONERの提供によるもので、角銅は同ブランドのシーズンイメージでモデルも務めている。BATONERも、吉勝制作所とならんで角銅と山形をむすびつける縁のひとつだ。

MC明けは、前作『oar』から“November 21”。目元を覆うマスクをつけた角銅が、ハンドマイクを手にステージ中央へ出て歌い出す。続いては『Contact』に戻り、インストの2曲が続けて演奏された。プログレやポストロックを思わせるアンサンブルが印象的な“Flying Mountain”は、ライブならではの弱音の表現がさらにドラマティックな展開をつくりだし、ミニマルミュージック的なリフの絡み合いからなる「鯨の庭」も、静謐な反復のなかで息を呑むような時間が流れてゆく。

多彩な奏法を交えた演奏を見ているうちに、ここで鳴らされている音の大半が、人と楽器との物理的なcontact、すなわち接触を通じてうまれていることに気付いた。パーカッションはもちろんのこと、弦楽器もまた、弦の抑え方やはじき方、こすり方によって多彩な音をつくりだす。たとえば巌のチェロがメロディアスで艶やかな響きのかわりに複雑な倍音やノイズを響かせ、光永のシンバルが黒板をひっかくような音をたてるとき、もっとも文字通りの意味での接触がこの空間をつくっている。それは『Contact』というアルバムを聴くのとはまた違う、このバンドセットならではの接触の発見でもあった。

写真:soma

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