メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

映画『教皇選挙』レビュー 世界最古の家父長社会を舞台に「民主主義」を問う

2025.3.20

#MOVIE

投げかけられる「民主主義は可能か」という問い

教皇選挙の結果を握るのは、信仰や思想ではなく、各陣営が張りめぐらせた策略と情報戦、そして内面で燃え上がる野心と悪意だ。瞳の奥に教皇就任への憧れが消えていないベリーニは、リベラル派の内部で票が割れるや、支持の大きいローレンスに向かって「立場をはっきりしろ」と迫り、「これは戦争なのだ」と牙をむく。

© 2024 Conclave Distribution, LLC.

各人の間に溝が生まれ、分断が深まるなかで、健全な投票は――すなわち民主主義は可能なのか。それを破壊するものがあるとしたら、それは何なのか、黒幕は誰か。ローレンスの調査は、単に陰謀の真実を明らかにするだけでなく、「選挙」そのものの正当性を護るための戦いなのである。

だからこそローレンスは教会内政治に不信を抱き、自らの立場に葛藤し、信仰のために職務を辞することさえ考えはじめる。しかし、その純粋さは腐敗したシステムのなかでも有効性を保ちうるのか? これもまた、本作が投げかけるひとつの問いにほかならない。

ミステリーというジャンルの性質ゆえ、映画のストーリーにこれ以上踏み込むことはやめておこう。しかし、選挙をめぐる陰謀と駆け引きの物語は、さらなる重層的なテーマをまといながら転がり続ける。保守とリベラルの対立、聖職者のパブリックとプライベート、公正と汚職、多数派と少数派、さらには宗教とテロリズムまで……。

© 2024 Conclave Distribution, LLC.

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS