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複雑な設定を成立させる岡田将生の演じ分け

前半では、ちょっとだけのエスパーで世界を救う「Bit5」のボスとして正義側だと思われていた兆は、愛する妻・四季(宮﨑あおい)を救うためだけに、過去を改ざんする人物だった。言うなれば、ヴィラン(悪役)だ。
四季を救うことができるなら、Eカプセル(本人の資質次第で能力が発現するカプセル)の副作用でエスパーたちが死んだって構わない。第2話ラストで事故に遭った画家・千田守(小久保寿人)のように他人が死ぬこともいとわない。過去を改ざんすることで10年後に1000万人が犠牲になったとしてもどうでもいい。ただ、四季の命が続く未来が叶うのならば、誰がどうなってもいい。四季を救いたいという切実な願いに押されて、兆は犯してはならない大罪に手を染めたのだ。
客観的に見れば兆の願いは自己中心的すぎる。しかし、第6話で四季に対面したときの表情、第7話で未来の記憶をインストールできるナノレセプターを飲んで欲しいと四季に懇願する姿からは、兆が抱え続けた四季を失った悲しみと絶望が痛いほど感じられた。兆は、四季と共に過ごした世界を取り戻したい一心で20年以上、生きてきたのだろう。
兆を演じる岡田将生が、野木亜紀子の脚本作品に出演するのは、『ちょっとだけエスパー』で3度目だ。ドラマ『掟上今日子の備忘録』では、主人公・掟上今日子に振り回される相棒、映画『ラストマイル』では、爆発事件に翻弄される物流センターのマネージャーと、これまではどちらかといえば受け身の役柄を担当してきた。
今回は、さまざまな人物を翻弄する側となり、物語のテーマにもつながる悲しみを背負う役柄だ。野木からの信頼の高さが感じられる。
岡田が、四季の記憶の中に登場する文人(フミト)としてのナチュラルな振る舞いや、兆として長年、苦しみに晒されたことで歪んだ表情など、経年や感情の変化を自然と感じさせることに成功しているからこそ、この複雑な設定が成立していると言えるだろう。