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『e o』以降で変化したライブの心構え
─去年、リリースした5thアルバム『e o』がすごく話題になったでしょ? そして、ツアーを始めたらさらに驚きの声が上がったじゃないですか。Zepp Shinjuku公演や僕が観に行った仙台公演でも、今までceroを観に来てなかったタイプのお客さんが増えたと感じていました。
高城:確かに、各所で初めてceroのライブに来たお客さんに手を挙げてもらったら、結構いたんですよね。そういう変化はあった。ストリーミングで音源を聴いただけでライブに来た人は、どういう状況で演奏するのか全然想像できてなかっただろうし。
荒内:ポジティブな意味で、今のceroのライブには「お決まりの盛り上がり」みたいなのがなくて。そこはノリが変わったように受け取られているのかもしれないけど。
─『e o』は「静けさ」をひとつのキーワードに作られたという話をリリース時のインタビューでもしていましたよね(※)。それが時代とフィットした部分もあるかもしれない。
荒内:ライブに関しては『e o』の楽曲はちょっとフィジカルになるというか、スタジオ音源より熱量を持ってくるので、それが面白いなと思いますね。
高城:自分たちで説明するのは難しいですけど、ceroは、基本的に一番新しい曲のモードによって過去の曲も変わっていくんですよ。今でいうと『e o』が他の曲の構造を変えていく、ということが常にあるから、また新しく出てくるもの次第でライブも変わっていくんでしょうね。
※編注:CINRA掲載記事「ここがceroの本当の始まり――高城晶平&荒内佑が語る『e o』。真新しいものがなくなり、音楽はどこへ?」を参照(外部サイトを開く)
高城:何が『e o』的なのかは言葉にしづらいけど、今回の“マイ・ロスト・シティー”にしてもそういうモードになっている。『e o』を聴いてて感じる高揚って、表に発露するものとは必ずしも言えない、もっと内的な体験みたいなところが大きいと思うんです。
かつての自分だったら、ライブでは楽しくなったら楽しいだけでそれを表現してしまうところですけど、『e o』以降はその楽曲の中で起きていることを粛々と提示するだけで心は高揚するだろうと思えた。つまり、それって「聴く」ってことですよね。
僕にとってもそれは、「今、演奏で起きていることをきちんと聴いてから歌う」ということ。自分も聴いている者の一人だという意識を持ってプレイする。それが『e o』以降の心構えかな。それはこのライブ盤を作ってより思うようになりました。メタ的な視点でceroで起きていることに驚きながら、その驚きを表現しているという感じかな。