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「参加した人がクリエイティブな発信を始めるきっかけになるようなものでありたいなと思っています。」(和)
『Bonna Pot』の空間にフリーフォームなムードが醸成されていると実感したのは最終日。パーティーを締めくくるスコット・ザッカライアスがプレイしている最中だった。大抵のレイヴパーティー最終日では終わりを惜しみ、ドロドロになりながら踊り続ける人たちをよく目にする。ともすれば、このままパーティーに取り残され、実生活に戻ってこれないんじゃないかと思わせるような瞬間を目の当たりにすることもある。
ただこの日は何か違った。スコットがプレイする中、ダンスフロアでは談笑しながら音を楽しむ姿や子供が走り回る光景も見られた。


藤田は「今回ようやく自分がパーティー人生の中で追い求めてきたものをみんなに伝えることができたと思えた。そういう達成感があるんです」と切り出すと、『Bonna Pot』を主催する上での責任感についてこう語る。
藤田:今回ようやく着地の理想形にたどり着けたかなと思っています。これまでの音楽体験の中で、ちゃんとイベントとして着地することがいかに重要かを学んできたつもりです。着地ができていないと、みんな魂が浮遊したまま帰っちゃうことになるから。ちゃんと終わらせなきゃいけないという使命感を僕は持っていて、なんだったらパーティーを主催する側の責任問題だとも思っているんですよ。
和は藤田に同調しながら、「スコットがしっかりまとめ上げてくれた」と話す。
和:単純に綺麗に終わらせたというより、何かまた新しいものが始まりそうな雰囲気をまとっていたと思います。SNSにも“終わりながら始める”みたいな感想を書いてくれていた方がいましたが、そう感じさせるセットだった。日常生活やその先に繋がっているようにも聴こえる創造的なセットだったなと。
『Bonna Pot』に来て楽しいと感じてもらうのは、もちろん一つの重要な目標ではあるんですけど、参加した人がクリエイティブな発信を始めるきっかけになるようなものでありたいなと思っています。人それぞれがそれぞれの感性で発信するための刺激やインスピレーションになり、そのインスピレーションがそれぞれの創造性や能動的な革新に繋がるような原動力になったらと思っています。
両名が言うように、今回訪れた『Bonna Pot』で感じられたのは実生活から切り離された場所としての魅力だけではなく、むしろ積極的に社会に接続していく感覚だ。ダンスフロアには心地よい音があり、会場にいる人たちとの会話が自然に生まれ、周囲に点在するアート作品がクリエイティブな刺激をくれる。そのどれもが、日常を自ら彩っていくための活力になると思える体験だった。
和:僕らが好きなDJは、そのプレイから「音楽がめちゃくちゃ好きなんだな」と伝わってくるDJです。プレイする曲への愛があって、それを「聴く」能力が著しく高い、そんなDJです。
『Bonna Pot』を創り上げるうえでも、いろんな声をリスペクトと愛と感謝を持って「聴く」コミュニケーションが大切だと思っています。スタッフや出演者、参加者の方々はもちろん、自然などの環境や先人が遺してくれたもの、そういったすべてに耳を傾けたい。その姿勢が調和した空間や社会に繋がっていくのではないかなと。
藤田:僕らが伝えたいのはパーティーにとどまらず、僕らを取り巻くすべてのこと、地球全体のこと。それが明日の生きる力になれば。そう思います。




嶋津和(Nodoka Shimazu)
『Bonna Pot』主催、NUSIC代表。主にエージェント業とプロモーター業、海外アーティスト招聘業を中心に音楽関連の仕事をアンダーグラウンドなものからメジャーまで。10代半ばから野外パーティ、フェス体験の魅力に取り憑かれ、高校在学中からプロフェッショナルな音楽現場の仕事を始める。2009~12年はホットスタッフ・プロモーション(日本最大規模のコンサートプロモーター)に在籍し『フジロック(FUJI ROCK FESTIVAL)』、『朝霧JAM』等の大型フェスやコンサートの企画・制作・運営に関わる。今年で野外音楽イベント制作のキャリア25年。また常に未知の音楽体験とアーティストを探して、過去海外40カ国以上に計12年間滞在、これまでに『Bonna Pot』以外でも多数のカルト的なDJ、アーティストの初来日等を手がける。生涯最もやられた音楽体験は2016年、南カルフォルニアの野外フェスでのロジャー・ウォーターズ(ピンク・フロイド)。
藤田晃司(Koji Fujita)
『Bonna Pot』主催者。ヒランヤアクセス株式会社代表。音響空間デザイナー。PA / サウンドエンジニアとしてダンスミュージック中心に幅広い経験を積んできた一方、店舗や施設における音響設備設計、サウンドに特化した太陽光システムの研究開発、SRスピーカーのデザインなどの活動に携わってきた。2000年初頭に音響活動を開始し、PAとしてだけでなくそれまでのイベント主宰やプレイヤーとしての経験も重ねる中で「音響空間が適切でないと公演自体の意味がなくなる」ということに気付く。
以後、ストリートからハイブランドのショーやパーティ、数千人規模のフェスティバルや公共施設、数人規模のプライベートな空間を音楽業界に限らず幅広いフィールドで人々や環境にとって「過ごしやすく」「より適切で気持ちいい」音響空間を追求し続けてきた。2000年代後半からはPA業と並行して店舗や施設の設備設計の仕事を請け負うようになり、宇川直弘氏によるDOMMUNEの前身「Micro Office」、表参道のクラブ「VENT / WALL&WALL」、日本橋のホテル「K5 (B)」、恵比寿の音楽ダイニング「Blue Note Place」などを手がける。
音響クオリティと空間としての心地よさが次第に支持を集め、全国各地で設計から施工まで手掛けた施設は200を超える。2010年代は震災直後にTaguchi Speakerの故・田口和典氏と共に「RA – energy design」を結成し、自然エネルギーのみで稼働するパワー・ジェネレーターを開発。数多くのイベントを太陽光エネルギーによるソーラー・サウンドで敢行し、佐藤タイジ主催の『中津川 The Solar Budokan』では5000人規模のシステムまで成長させた。現在はDolby Atmosなどのイマーシブサウンドをフィールドで展開するための準備として、スタジオを建築中。
『Bonna Pot』
2024年11月8日(金)〜10日(日)
会場:オートキャンプ銀河 西伊豆
Music by:
Abiu
AKIRAM EN
ALICIA CARRERA
An-i
CHIDA
CS + Kreme -LIVE-
∈Y∋
鏡民
nø¡R
O/Y -LIVE-
Scott Zacharias
Shhhhh
Sunju Hargun
THOMASH -LIVE&DJ HYBRID-
Toshio “BING” Kajiwara
7e
Sound Space: HIRANYA ACCESS
Speaker System: TAGUCHI
Lighting, Deco & Structure:
Forie
Hikariasobi Club
Keisuke Yago
密林東京
RGB
SHINOBU HASHIMOTO
Stretch Tent Company
Uno Yoshihiko
Food, Drink & Market:
万珍酒店 / MANGOSTEEN
西伊豆食堂(西伊豆食材和食)
拉麺またたび(無添加ラーメン)
FermenCo.(釜焼きピザ)
Vimana Curry(南インド料理 / ヴェジ対応)
韓国料理ゆぎょん
コナ屋(サプリ)
Tiny Bird Coffee Service
TOKYO KAN KAN
Raw chocolate by grrrden
SoundCloud:https://soundcloud.com/bonnapot
Instagram:https://www.instagram.com/bonnapot_nusic/
X:https://x.com/Bonna_Pot