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圧政への抵抗者たちを主人公に、正義の多義性や葛藤を描く
遠い昔、はるか彼方の銀河系で。銀河の支配を企む元老院議長は、共和国の危機を煽り、自らの権限を強化する動議を承認させて敵対勢力を殲滅。共和制は帝政へと移行し、恐怖政治が敷かれることとなった。
帝国の支配がはじまって10余年後、廃品回収をして細々と暮らす青年キャシアン・アンドー(ディエゴ・ルナ)は、ひょんなことから横暴な警備員を誤って殺めてしまう。逃亡の道すがら、盗品の闇物資を売却するためバイヤーに接触するが、バイヤーはなぜかキャシアンの過去を熟知しており、彼の逃亡の手助けをする。ルーセン・レイエル(ステラン・スカルスガルド)というその男は、帝国への反乱分子をまとめるリーダーであり、キャシアンを反帝国の活動に誘い込む。ルーセンの掲げる「大義」に説得されたキャシアンは、帝国の基地から大金を盗み出すミッションに参加することになる——

大義のためには味方の犠牲も厭わないルーセン、自分は役目を終えた後に口封じのため殺されるだろうと予期しているキャシアン、そして、急遽現れた新参メンバーを訝しむ、どうもそれぞれ異なる思惑や背景を抱えていそうなミッションのメンバーたち。そこに、彼らを追う帝国側の面々や、キャシアンの事件をきっかけに危険に晒されることになってしまった彼の義母や友人たちなど、さまざまなキャラクターの心情と行動が絡み合い、物語は複雑に展開する。
冒頭の予期せぬ殺人のシークエンスに象徴されるように、本作では人命の重さや、戦いの(物理的な)痛さ、戦いに直面した人たちが持つ恐怖が描かれる。これは、基本的に「宇宙を舞台にした西部劇+黒澤映画」の活劇であり、シューティングゲームのようにどんどんと人が倒れ戦闘機が爆発する「SW」シリーズの中では、異色の演出だ。
また、反乱を起こす側を主人公としていながらも、不当な圧政に対抗する手段として武力を用いることに対して、登場人物の間には温度差があり、それぞれに葛藤もある。なおかつ、抵抗のための活動は反対側から見ればテロ / ゲリラに他ならないということも、しっかりと描写される。さまざまな立場での正義の多義性が、物語に厚みをもたらしているのだ。
