昨年大きな反響を呼んだ、FRISKが新たなチャレンジを始める社会人や学生たちを応援するプロジェクト「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」の一環として、今年もJ-WAVEの番組『GRAND MARQUEE』とのコラボレーションコーナー「FRISK DEAR ME」が実現。
4日目に登場したのは、ラッパーのあっこゴリラ。自分の方向性が分からず未来が見えなかった19歳の自分に向けた手紙をもとにしながら、挑み続けた先で発見したラップを通じた生き方や、周囲に左右されず、自分軸での価値観を育むことの重要性などについて話を聞いた。
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世の中に対して、真っ向勝負を挑んでいた
Celeina(MC):あっこゴリラさんは2019年から2024年まで『SONAR MUSIC』でメインナビゲーターを務めていらっしゃったので、リスナーの皆さんにはお馴染みだと思います。
あっこゴリラ:去年まで全く同じスタジオでパーソナリティをやらせていただいていたから、そわそわしちゃってます。
タカノ(MC):何気に我々とあっこゴリラさんは初絡みということで嬉しいです。さて、今回はあっこゴリラさんに、あの頃の自分へ向けた手紙を書いていただきました。ズバリ手紙の宛先は?
あっこゴリラ:19歳、未来が見えなかったあの頃の私です。
タカノ:お手紙を読ませていただきましたけども、もちろんグッとくる内容でありながら、文章に生きたリズムがあるというか。朗読していたら、ラップをしているような感覚にもなりました。お手紙は「さぞ辛かろう」という書き出しから始まりますが、当時はどのような状況だったのでしょう。
さぞ辛かろう。まだやりたいことが明確じゃないし、だけど今にも噴火しそうに何かが溢れて、その衝動をコントロールできなくて。気付いてしまったら立場や条件かなぐり捨ててなんでもやってしまうから、よく周囲を戸惑わせるよね。そんなに自分の心に忠実なのに、人の心の動きにも人一倍敏感という矛盾も抱えてるからまあ大変。勝手に他人の気持ちを勘繰って勘繰って、ストレスで肌荒れすごいし、鏡も写真も大嫌いだよね。
手紙の序文。あっこゴリラ直筆の手紙全文は4月10日(木)から下北沢BONUS TRACKで開催されるFRISK『あの頃のジブンに届けたいコトバ展』で展示される(詳細はこちら)
あっこゴリラ:ストレスで肌荒れもひどかったので、マスクも外せなかったし、写真も撮られたくないみたいな。本当に自信がなかったんです。
タカノ:アーティスト活動をしていく中で、ストレスを感じていた?
あっこゴリラ:19歳の当時は大学を中退したぐらいの時期で、何かをやりたいのに、何をすれば良いかが分からなかったんですよ。アートを学ぶ大学に通っていたし、沢山のことに興味があるのに、自分にピタッとハマるものが分からなかった。だから、手当たり次第に手を付けては大失敗ばかりで、「恥ずかしい」「消えたい」と思っていました。今振り返れば、可愛らしいなと思えるんですけどね。

ラッパー。ドラマーとしてメジャーデビューを果たし、バンド解散後、ラッパーに転身。2017年には、日本初のフィメールのみのMCバトル『CINDERELLA MCBATTLE』で優勝。2018年に発売した1stフルアルバム『GRRRLISM』では、女性の無駄毛をテーマにした「エビバディBO」、年齢をテーマにした「グランマ」など、世の中の“女性(もとい男性)はこうあるべき”という固定概念に焦点をあてた楽曲を発表。2022年にはミニアルバム『マグマ I』を発売。2019年4月からJ-WAVE「SONAR MUSIC」でメインナビゲーターとして様々な発信をするなど、性別 / 国籍 / 年齢 / 業界の壁を超えた表現活動をしている。
Celeina:その頃はどういったことに挑戦していたんですか。
あっこゴリラ:昔から社会におけるジェンダー規範に興味があった分、当時は自分が女でいることに対して嫌悪感を強く抱いていて。それで「男になりたい」と思い、水疱瘡太郎っていうペンネームで小説を書いていました。
タカノ:名前にフックありすぎでしょう。
あっこゴリラ:あの頃は頭爆発状態というか、とりあえず何でもやってみる感じで。水疱瘡太郎で頑張ってはいるんだけど、自分自身が落ち着いていないから、話にオチを付けられずに爆発で終わる物語しか作れなくて、これは駄目だなと。そこからは、極端な性格なので、逆に凄く女になりたいと思うようになったんですよ。それで、女性しか就けない職業にトライしようとするけど、面接で「やっぱり無理だ」となったり。訳の分からない行動ばかりしていたかな。でも、今となっては、自分が疑問に思っていた世の中に対して真っ向勝負を挑んでいたんだと気づけた。バーって突撃して、怪我して戻ってきていたんだなって。
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世の中の正解じゃなくて、自分の正解を育んでいけば良い
タカノ:10代の経験としては、それも大事な時間だと感じました。「自分の手を汚しながら気付きを体得していく。そのハードな生き方、大人になっても続くよ」という一文も印象的です。
びっくりするかもしれないけど、あなたの、自分の手を汚しながら気づきを体得してゆくそのハードな生き方は、大人になってもつづくよ。残念ながらずーっと人生ハードモードです。ごめんな。
あっこゴリラの手紙抜粋(「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」presented by FRISK より)
あっこゴリラ:こういった企画だと、成功して満たされた大人からくすぶっている子どもに向けたメッセージになりやすいと思うんですけど、私は当時のやり方と変わっていないと伝えたくて。
あの頃はもっと合理的に生きたいと思っていたんですよ。でも、ハウツーが何億通りもありすぎてどれを信じて良いか分からなかったし、上手くできなかった。だから、とにかく自分の手を汚していくスタイルを取ったけど、そのやり方じゃないと自分自身が納得いかないこともあり、結果的に私はその方法でオッケーだったと思っていて。世の中の正解じゃなくて、自分の正解を育んでいけば良い。そういう気持ちでこの1文を書きました。
タカノ:あの頃のスタイルは大人になっても続いていくよっていうね。でも、そんな中であっこゴリラさんはラップと出会い、ピタッとハマる生き方を見つけたわけで。
あっこゴリラ:私の場合はエネルギーをドラムで発散することはできても、世の中に対する疑問と答えがリンクしていく感覚を見つけられなかったんです。そこでラップと出会い、言葉とリズムが噛み合ったことで、自分の生き方とその音楽の手法が合っていると思えた。だから、これまでの悩みに関しては、ラップに出会うまでの旅だったのかなと。そうやって自分にハマるものに出会えたので、「その生き方を続けていても、どこかで合うやり方を見つけられるから大丈夫だよ」と言いたいですね。
タカノ:沢山のものにトライしたからこそ、出会えた側面もあると思います。
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「これが最高だ」と言える感覚を大事に育ててほしい
Celeina:そして、手紙の後半には「人の心に敏感なところも、他人を思いやれる優しさになるから」と優しさに満ちた1文が書かれています。
異常な行動力も、いつか可笑しいチャームポイントとして誰かに笑ってもらえたり、時には誰かの勇気になれたりもしちゃうよ。人の心に敏感なところも、他人を思いやれる優しさになるから、今は苦しいと思うけどその調子でガンガン悩んで行動して怪我してください。
あっこゴリラの手紙抜粋(「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」presented by FRISK より)
あっこゴリラ:何でも手当たり次第やってみるって言うと、強いメンタリティの人だと思われるんですが、私の中には矛盾するもう1人の自分がいて。「これ大丈夫かな」と人の顔色を伺ったり、誰かに認められたいと思う部分もあった。
そうやって人のことばかり考えてしまう自分と、物凄い行動力の自分が同居していたから、苦しかったんです。いつも片方がもう片方の邪魔をしていたし、どちらかを消したいと思っていた。でも、顔色を伺っていたことが、いつのまにか「この人はこう思っているんじゃないかな」と考える想像力に直結していったんですよね。まだまだ現在進行形ではありますけど、決して無駄じゃなかったなっていう。
タカノ:さらに「SNSの風評やお金じゃ汚せない君だけの正義」とも綴っていらっしゃいますが、こちらにはどういった思いを込めたのでしょう。
あっこゴリラ:人に認めてもらわないと、自分のことを認めるのって難しいじゃないですか。その基準は売れてるとか、お金になるとか、世の中の歯車として成功することが求められていて、そうじゃない人は生きていけない、みたいになってしまう。それは危ない価値観だと思いますし、そういった明確な成功の基準と付き合うことが難しかった。でも、SNSやお金は関係なく、誰がなんと言おうと「これが最高だ」と言える感覚を大事に育ててほしいなと。
タカノ:自分は自分で良い、と気づけたキッカケは何だったんですか。
あっこゴリラ:気づけたというよりも、言い聞かせながら育てていった感じですね。もちろん、誰かに認めてもらうことは素晴らしいけれど、自分が納得できることも重要で。その感覚をラップを通じて、徐々に体得していったんだと思います。
Celeina:自分に納得できる体験が少しずつ積み重なった結果、肯定的なマインドに変化していった。
あっこゴリラ:そうですね。私の場合、リリックやライブで言語化する作業が良かったのかな。SNSも対人ではなくて、対自分向けというか、自分と向き合う作業ができたら良いなと。
Celeina:確かに、それは大きいかもしれないです。そして、あっこゴリラさんに、あの頃のご自身に贈りたい楽曲を選んでいただきました。どんな曲でしょうか?
あっこゴリラ:「君は君のままで大丈夫だよ」と言われても、当時の私は「綺麗ごと言ってんじゃねえよ」と納得いかなかったんですよ。でも、そういうへそ曲がりな私に向けて、どんな言葉だったら聞いてくれるかなと思いながらワードを考えた楽曲を選びました。“余裕”という楽曲です。
タカノ:それでは最後に、19歳のあっこゴリラさんと同じように人生の岐路に立つリスナーの皆さんへメッセージをお願いします。
あっこゴリラ:正直、私から言えることなんてないんですけど、それでも言えるのは「間違っても全然大丈夫」ってことかな。
あとは、パッて世界が変わるなんてないこと。正解は育てる。だから、その蒔いた種に水をやるんだよ。水をやって育てて、隣の花と比べんな。てめえの花を咲かせやがれってことですね。
「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」supported by FRISK

新たな一歩やチャレンジを前向きに踏み出すことを応援するFRISK「#あの頃のジブンに届けたいコトバ」では、11組のアーティストやタレント、クリエイターが「あの頃」の自分に宛てた手紙を執筆。手紙の内容について、CINRA、J-WAVE、me and you、ナタリー、NiEW、QJWebでインタビューやトークをお届け。直筆の手紙全文は4月10日(木)から下北沢BONUS TRACKで開催されるFRISK『あの頃のジブンに届けたいコトバ展』で展示される(詳細はこちら)。
『あの頃のジブンに届けたいコトバ展』

第一線で活躍する11組の「あの頃のジブンに届けたいコトバ」。悩みを抱えていたかつての自分に書いた直筆の手紙を展示。この春、新生活を迎えるすべての人へ贈ります。
会場:下北沢・BONUS TRACK GALLERY(東京都世田谷区代田2-36-12)
会期:2024年4月10日(木)〜15日(水)11:00〜20:00(全日程共通)※営業時間は変更になる場合がございます。
手紙展示:アオイヤマダ、あっこゴリラ、宇垣美里、空気階段、崎山蒼志、柴田聡子、玉置周啓(MONO NO AWARE)、長濱ねる、藤森慎吾、ゆっきゅん、若槻千夏
主催:NiEW 後援:FRISK
■アオイヤマダさん登壇のスペシャルトークショーも実施!
展示に加え、本プロジェクトにメッセージを寄せていただいたアオイヤマダさんに登壇いただき、ご自身が何者でもないフレッシャーだった頃を振り返りながら、新生活における悩みや迷いとの向き合い方、気持ちを前向きにする方法などについてコトバを贈るトークショーを開催します。
場所:BONUS TRACK LOUNGE(東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK 中央棟テナント2F)
日時:
「アオイヤマダさんトークショー」4 月 12日(土)14:00~15:00(13:30開場)
会場の席数に限りがございますので、参加をご希望の方は下記リンクよりお申し込みをお願いいたします。抽選の上、当選者のみご連絡を差し上げます(メールにてご連絡を差し上げますので、「@niew.jp」をドメイン指定受信に設定いただくようお願いします)。
→詳細はNiEWの特設ページをご確認ください