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ワンカット映像で「地獄」を体感させられる
本作のワンカット撮影は、「当事者」の気分をリアルタイムで体験させる演出として機能している。
第1話では、「子どもが殺人容疑で連行される」早朝からの一連の流れが描かれる。13歳の少年に銃が突きつけられ、父親と共に警察署へと搬送され、弁護士がつき、警察との取り調べが始まる。カメラは主人公の少年について回るだけでなく、父親や警察官の視点に移る時もあり、「未成年の少年の逮捕における周囲の動向」も興味深く見られるだろう。
なかでも克明に描かれているのは、父親が抱く不安と恐怖、もっといえば「地獄」だ。目の前で子どもが連行され、身体検査で裸にされ、取り調べでは性的なことまで質問される。不快感と無力感に苛まれながらも、「息子は無実だと信じたい」という親として当たり前の気持ちが、その表情から痛いほど伝わってくる。

これらのシーンからは、犯罪に巻き込まれたことで数時間のうちに人生が一変する様をワンカットで描いたドイツ映画『ヴィクトリア』(2015年)、そして、いじめで同級生を殺してしまった少年の家族が生き地獄に陥る日本映画『許された子どもたち』(2020年)が連想される。鑑賞者は「息子が殺人容疑で逮捕される1時間」という、特に親にとっては現実で絶対に直面したくない「地獄」を擬似体験することになる。