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即興、前衛的なジャズを生業に生きていく。助成金、NPOなど、アメリカでの実情を訊く

2024.5.31

#MUSIC

音楽家と社会、そしてお金の関係はどうあるべきなのだろうか

ー「AACM」はシカゴの市から助成を得て設立されたと聞いたことがあるのですが、アメリカには同じようにパブリックな助成を受けている音楽の団体は他にもあるのでしょうか。

トミーカ:「AACM」に対するその認識が正しいのかどうか私にはわかりません。たしかに助成金に応募することができるという事実はあるけれども、よく考えたら「AACM」にはダンスカンパニーみたいに自分たちで自由に使える建物もないんですよね。

メアリー:助成金に関しては「コンペである」というところが重要なんだと思います。助成金の数自体は多くないけれど、多くのミュージシャンが申請します。

本当にありがたいことに、私もトミーカもそうやって競争率の高い助成金に応募して勝ち取ることができてプロジェクトを実行できたわけなんですけど、すべてを自分たちでやらなければならないミュージシャンがたくさんいるんです。助成金以外には、主に財団や大学などの機関から資金が出ていることがよくありますが、それ以外にはそれほど多くはありません。

メアリー・ハルヴォーソンのソロプロジェクトのライブ映像

―アメリカでも自治体や政府が主導でやっている助成金やサポートがいくつもあるわけではないんですね。

トミーカ:たとえばヨーロッパの一部の国では、あまりコンサートに出演しない場合、失業保険的なものに申請することができたり、あとは社会保障的なことも同様で健康保険もミュージシャンにも適用されているみたいです。でもそれがアメリカでは難しい。だから他のことで何とか稼いでいかなきゃいけないっていう実情があります。

ギグを細かくやったところで生活費をまかなうのは厳しいので助成金を申請するって話になるんだけど、コンペなのでサポートが受けられるかもしれないし、受けられないかもしれない。助成金を得られなかったらもう自分でなんとかやらなきゃいけないわけで、そのあたり私たちの国では見放されているように感じます。

ー一般的な話として、文化というものを捉えるときに、お二人が音楽家とお金の関係はどうあるべきだと考えているのかを教えてほしいです。たとえば現状のストリーミングのシステムなんかも、欠点だらけだと思うんです。

メアリー:そこはバランスですよね。音楽家は私たちの職業でもあるわけだから、お金のことも少しは考えなきゃいけない。でも、ミュージシャンって銀行業ではないのでやっぱりお金のことは話していて気持ちよくないんですよね。

ただ暮らしがかかっているという事実は依然としてあって、おっしゃるようにストリーミングサービスはミュージシャンとのあいだには良好な関係はありません。でももうこっちとしては音楽の世界の変化に適応していかなきゃいけない。適用したところでどんどん相手が変わっていくので本当に毎日が新しい冒険なのだと思います。

トミーカ:私としては、自分にとって大事なことで、幸せだからやってるんです。もしかしたら、保険も保証もないのにこれをやってるってどうかしているのかもしれないですよね。

お金のことを考えていないわけではありませんが、ジャズのなかでもちょっと特殊なサウンドワールドに惹かれて、みんなが聴くわけじゃない音楽をやりたいと思った以上、とにかくやっていくしかない。そしておそらく金銭的にはそれほど多くの利益が得られないこともわかっていました。

Tomeka Reid Quartetのパフォーマンス映像

トミーカ:もちろんお金は必要ですよ、生活していかなきゃいけないんだから。でもそういう心配をしていたら、おそらくもっとコマーシャルな音楽をするだろうと思います。でも私はこの音楽に本当にこだわってきたんです。そうやって私が私自身であることの重要性を繰り返し自分に言い聞かせてきました。

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