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即興、前衛的なジャズを生業に生きていく。助成金、NPOなど、アメリカでの実情を訊く

2024.5.31

#MUSIC

「金銭的な見返りはない」という覚悟が必要

―オーディエンスや市場の規模、文化的な背景など踏まえると日本の状況とは単純に比較はできないですが、アメリカでもジャズミュージシャンとして生計を立てるのは簡単ではないのですね。

メアリー:それでもいいと決心して音楽家としての道に飛び込んで、21歳でニューヨークに引っ越した最初の5年間はフルタイムの事務職で働いていました。そのときは夜に音楽の仕事をしていて、ある程度音楽でやっていけそうと見えてきたところで会社員を辞めることができました。

私はいま43歳で、26、27歳の頃から音楽だけで食べていけるようになったんですが、自分はとてもラッキーだと思っていますし、これが当たり前だと決して思っていません。特に本当にやりたい音楽を追求するとなると大変なので、クレイジーな人生です(笑)。でも、とても感謝しています。

メアリー・ハルヴォーソン『Cloudward』収録曲

トミーカ:私も最初の頃は中学、高校の先生とのかけもちで音楽をやっていたからすごく大変だったんですが、「何があってもこの音楽をやりたい」という気持ちがあったので続けることができました。そうやって続ける人ってすごく強い動機があるとか、あるいはクレイジーだから続けられるのかもしれないなって思います。なぜなら見返りがそんなに望めないわけだから。

実際、私がやっているようなアートアンサンブルだと、同じような編成で違うことをやったらすごくお金になるかもしれないんだけれども、それは私がやりたいことではない。基本こういう音楽をやるにあたっては、金銭的な見返りはないって覚悟が必要なんだろうなと思ってます。

たとえばニューヨークの高級アパートに住んだり、テスラに乗りたいと思ったら、コマーシャルな音楽をやらなきゃ無理だと思うし、でも私にとって音楽はそれ以上に重要なものなんです。そういうタイプの見返りはないし、私もずいぶん自力で頑張ってきたけれども、結局のところ自分自身が何を求めているかなんでしょうね。

トミーカ・リード率いる3人のチェロ奏者によるフリージャズ作品『Reid/Edwards/Coudoux』収録曲

トミーカ:私は教師として約8年間働いて、ずっと続けようと思えば続けられたんですが、そうしないようにしました。お金になるからとその仕事に縛られてしまうことを、一部では「ゴールデン・ハンドカフ(金の手錠)」って言うんです。だけど、私はミュージシャンになりたかったし、そこで私は満足したくなかったから、仕事を辞めなければならなかったんですよね。

教師を辞めてから最初のころはすごく大変でしたが、長く続けることで物事をパズルのようにつなぎあわせる方法が見つかってくる。そうやって活動していくなかで、ありがたいことにいくつか助成金をもらえて、さまざまなプロジェクトにも参加できたり、機会を得ることができました。そして自分のプロジェクトで作品を出すときには、自分の名前がちょっとずつ知られているような状況がありました。でもそこまで続けるには、よっぽど本気でやってるか、イカれてるかどっちかじゃないと続かないだろうなと思います。

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