ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の特性を持つ裁判官・安堂清春(松山ケンイチ)を中心とした法廷ヒューマンドラマ『テミスの不確かな法廷』(NHK総合)が最終回を迎える。
清春の特性からくる「こだわり」が、様々な事件の解決のきっかけになってきたが、物語の終盤、第6話から描かれた前橋一家殺人事件の再審請求審の鍵を握るのは、清春の父で最高検察庁の次長検事・結城英俊(小木茂光)だった。
弁護士・小野崎(鳴海唯)、部長判事・門倉(遠藤憲一)、判事補・落合(恒松祐里)など個性豊かな前橋地裁第一支部の人たちも魅力的な本作について、前半を振り返った記事に続いて、ドラマ・映画とジャンルを横断して執筆するライター・藤原奈緒がレビューする。
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「確か」であるはずの司法の仕事が揺らいだ第6話

ドラマ『テミスの不確かな法廷』のタイトルの中にある「不確か」という言葉について考えてみる。「不確か」、それは、主人公・安堂清春(松山ケンイチ)がよく言う「分からないことを分かっていないと、分からないことは分かりません」という言葉にも通じる。本作がこれまでに明らかにしてきたのは、この世界が「不確か」なことばかりであるという現実だ。ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の特性を持つ清春にとって、唯一、明確なルールである法律に基づいて「地球人の争いを解決するため、適切な判断を下す」ことであり、本来「確か」であるはずの司法の仕事までもが、第6話から第7話にかけて、大きく揺らいだ。それも、清春の父であり、最高検察庁の次長検事である結城英俊(小木茂光)を中心にして。
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正義の女神「テミス」像の下を行き来する人々

本作は、必ずしも「不確かなものを確かなものにしていくドラマ」ではない。この世界の不確かさを嫌と言うほど知っている人々が、それでも、確かな何かをつかもうと奮闘する姿を描いたドラマだ。清春たち前橋地裁第一支部の人々が、事件の周辺に存在している、見落とされがちな「分からないこと」を丁寧に調べ上げていく中で、事件の当事者たちが抱える人生そのものが浮き彫りになっていく。
また、不確かなのは、裁判で扱う事件に限ったことではなく、裁判官、弁護士、検察官、執行官、精神科医といった法を司り、人々を裁く側にいる人たちがそれぞれに抱える思いでもある。本作のタイトル中にもあり、弁護士・小野崎(鳴海唯)が度々見上げる正義の女神「テミス」像は、司法の公正さの象徴として知られている。その像の下を行き来する司法の仕事に携わる人々が悩み、迷いながら、真実を追求する姿には、本作の「公平さ」を強く感じる。