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2020年代はテクスチャの時代? 短歌から音楽まで、瀬口真司×つやちゃんが談論

2026.3.12

#BOOK

文章における「声」の操作と、テクスチャのこれから

瀬口:テクスチャともうひとつ重要なのは、やっぱり「声」だと思っていて。

つやちゃん:はい、はい。

瀬口:短歌だと、どんなふうに書いても一人称的に作者の声で再生されると思うんですけど、そこに、できることなら音楽のように、オートチューン(※)をかけてみたい。逆再生したりカットアップしたような感じに「声」を操作してみたいんです。

※オートチューン(Auto-Tune):Daft Punkやtofubeatsなどで聴かれるような、いわゆる「ロボ声」「ケロケロ声」を指して用いられる。正確には音程を補正するプラグインの名称。

つやちゃん:なるほど! 声の加工とテクスチャの同居で言えば、瀬口さんのこの歌もやばいです。

デコメ絵文字の僕がぷもぷも動いてる あなた が 大事 だ と言っている

(瀬口真司 歌集『BEAM』より)

つやちゃん:ぷもぷもというテクスチャと、この一字空きを含めた作者の「声」感。

瀬口:それこそY2Kって感じですけど……。当時の携帯電話って、写真を加工してデコメにできましたよね。だから、「僕がデコメになっている」ことはあり得た。その、すごく小さくなった自分がなにかを言っているというのは、たしかに僕の声を加工することでもありますね。僕の声ではあるんだけど、生声ではない、っていう。

つやちゃん:まさしくY2K短歌ですね。この歌って、身体的に失敗している感じが出ているというか、身体的失敗の痕跡だと思うんですよ。

瀬口:そうですね。

つやちゃん:意味から逃げているわけじゃなくて、意味を言おうとしているんだけど、失敗している。且つ、そこにぷもぷもみたいな、Y2Kカワイイ感もある。デジタル化と身体性の衝突みたいなものもあるし、いろんなバランスが絶妙だと思います。それこそPeterparker69とも近いことをやっているように思うし、ものすごくいまにフィットするすごい歌ですよね。

瀬口:ありがとうございます。書かれた文字のうえで「声」を操作するような試みは、まだまだ可能だと思っているし、それが必要だとも思いますね。あとは、母音の崩し方とか。VERBALが櫻井翔にラップ指導をするときに、「叫べ」と発音しちゃうと「a / e / e」でしか踏めないけど、たとえば「さけぃべぃ」というふうに崩して発音すると韻が広がるよ、というようなことを言っているんですが、ズルいなーと思いました(笑)。書いている文字だと母音って崩れないですからね。でも、これって、短歌だと、ギリギリできるかもしれない、とも思うんですよ。

つやちゃん:そうですよね、可能性はありますよね。これからも瀬口さんのいろいろな実験が楽しみですが、今後について考えていることはありますか?

瀬口:そうですね……もっと広く届くようなものを書かなきゃと考えたときに、「あるあるネタ」みたいなことを言えば届くんだけど、そこにアジャストしたくないんです。穂村弘さんは「シンパシーとワンダー」、つまり「共感と驚異」という言葉で説明しているんですけど、シンパシーに全振りすれば読者は広がるけれど、ワンダーがないとダメっていう。ただ、それは二項対立的なものではなくて、グラデーションだと思うんです。この間の「あとちょっとで手が届くかもしれない」と思われるところにチューニングしたい、と思っています。

つやちゃん:とてもよくわかります。そうなんだよな……2020年代の状況として、「意味」は共感に回収されていき、「テクスチャ」はただのアテンションに回収されていったという悲劇があると思っていて。そこからいかに違う道を探していけるのか、いろんな局面で考えますよね。意味とテクスチャを二項対立で考えるんじゃなくて、相互補完的、相互影響的に考えていくことが必要だと思いますね。

瀬口:はい。具体的な作品の中では、その組み替えは行われ得ると思うんですよね。

つやちゃん:そうですね。色々な分野でのそういった挑戦に、今後も目を凝らしたり耳を傾けたりしていきたいと思います。

瀬口真司『BEAM』

発売中
価格:2,200円(税込)
書肆侃侃房
https://www.kankanbou.com/books/tanka/0712

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