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『嵐が丘』レビュー 英文学の正典を大胆に改変、女性の視線を通した「文芸エロス」

2026.2.24

#MOVIE

© 2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
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性欲の主体が女性側にある性描写

そして本作を語る上で外せないのが大量の性描写である。そしてこの性描写の大半を通して、欲望がロビー演じるキャシーではなく、エロルディ演じるヒースクリフの身体に向けられているのが重要だ。この映画は二人が性関係を持つ以前から、キャシーがヒースクリフの身体に向けるあからさまな性欲を露骨に示すようなやり方で観客の視線を誘導し、さらにキャシーの苛立ちを性的欲求不満に結びつけて提示している。キャシーがヒースクリフに対して長年溜め込んでいた情欲が爆発して二人は不倫に陥る。この性関係を始めるのも終わらせるのもキャシーが決めることであり、それが破滅につながるとしてもそれはキャシーの性欲ある主体としての選択に基づくのだからしかたがない。

このような展開はあまり深みがあるとは言えないが、一方で『嵐が丘』という古典に隠れて男性向けの文芸エロス映画のお約束を全てひっくり返し、徹底的に女性客のためのセクスプロイテーション映画を作ろうとしている点は興味深いと言える。

© 2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

フェネルは現代的で洒落たフェミニスト的な映画を作る監督として知られているが、実は極めてエクスプロイテーション映画的な視点で古典やジャンルのお約束をひっくり返し、女性のためのジャンル映画を作る監督である。監督としての長編デビュー作『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020年)は、性暴力に対する復讐を描く「レイプ・アンド・リベンジ映画」と呼ばれる1970年代頃に勃興したホラージャンルを女性の視点から作り直したものである。露骨な性暴力描写を減らして女性による復讐に焦点をあてた点が新しいが、微妙さやニュアンスはやはりゼロで、スタイリッシュな外見の下にエクスプロイテーション映画らしい風味がたっぷりある作品である。

次作『ソルトバーン』(2023年)はもう少しジャンル映画から離れているが、『召使』(1963年)や『テオレマ』(1968年)といった、アメリカ産ならエクスプロイテーション、ヨーロッパ産だからアート映画……という風味の古典映画をベースに現代的な味付けを施した作品で、最後にバリー・コーガンがドラッグでハイになりながら全裸で踊る場面はまるでエクスプロイテーション映画である。『嵐が丘』もこうしたフェネルによるジャンルをめぐる遊びの最新の試みと言ってよいだろう。真面目に見る映画というよりは、ジャンルや権威と戯れる映画なのだ。

© 2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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