バッド・バニー『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』が最優秀アルバム賞に輝いた、第68回グラミー賞。ライター / 編集者の天野龍太郎が、受賞作や授賞式の模様を振り返りつつ、今回のグラミーが象徴する政治課題と「その先」を考える。
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意外な結果となった主要賞
現地時間2026年2月1日(月)にロサンゼルスのクリプト・ドットコム・アリーナで開催された第68回グラミー賞授賞式は、なかなかに興味深い結果になった。全体的に番狂わせだった、と言うこともできるだろう。
主要4部門については、年間最優秀アルバム賞をバッド・バニーの『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』が、年間最優秀レコード賞をケンドリック・ラマー&シザ“luther”が、年間最優秀楽曲賞をビリー・アイリッシュの“WILDFLOWER”が、最優秀新人賞をオリヴィア・ディーンが受賞している。意外な結果が含まれていると思う。

主要賞で気になったのは、まず受賞を逃したアーティストだった。レディー・ガガ(全体で7部門にノミネートされている)とサブリナ・カーペンター(6部門にノミネートされている)は新人賞を除く主要3部門にノミネートされており、いわゆる王道のポップス枠ではあるので、受賞はかなり手堅そうだった。サブリナは表現の露骨さが問題視されてはいた一方で、特にグラミーの常連であるガガは最有力候補の筆頭だったにもかかわらず、主要賞を獲れなかった。それに、BLACKPINKのロゼとブルーノ・マーズの“APT.”、同じくK-POP文脈でHUNTR/Xの“Golden”という2つのヒット曲が楽曲賞を獲ってもおかしくはなかった。新人賞だって、オリヴィアの受賞は順当な結果ではあるものの、KATSEYE、アディソン・レイ、ソンバー、ローラ・ヤングなどかなり強力なライバルが並び立っていた。
今回は、各メディアの予想も割れていた。そう考えると、アーティストについてもジャンルについても多様になった主要賞の意外な結果に、現在の欧米のポップミュージックの様相、つまり多極化、そして中心軸の不在がそのまま表れているように思えてならない。
