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Laura day romanceが生む作品と作者の関係。『合歓る』の登場人物は彼ら自身なのか?

2025.12.24

Laura day romance『合歓る – walls or bridges』

#PR #MUSIC

メンバーにより三者三様の、物語のストーリーテリングの解釈

―『walls』と『bridges』を合わせると20曲あって、その結末が『bridges』の10曲目“後味悪いや|sour”だと思うんですけど、この曲の<ねぇ 君はどうして 夢の中でも 君の思うように 君をしないの?>と歌われる部分で、僕はこのアルバムの登場人物と目が合った感じがしたんです。もしかしたら、物語の人が見る<夢の中>って、僕らが生きている現実のことなのかもしれないと思った。

鈴木:なるほど。

―それで最終的にこのアルバムは、聴き手に向けた強いメッセージを持った作品になっているんじゃないかと思ったんです。後編まで作り上げた今、このアルバムはどんなふうに聴き手とのコミュニケーションを取ろうとしたアルバムなのだと、皆さんは思いますか?

鈴木:元々はこのアルバムに“後味悪いや|sour”はなくて、“orange and white|白と橙”がエンディングの予定だったんです。その形にしたら、物語としての収まりが凄くよかったんですよね。ふたりの関係が解決して、お互いの目が合った状態でストーリーが終わっていく。それは物語としては完璧によかった。

でも、そこにある、あまりに収まりよく終わってしまう感じに引っ掛かって。作者である自分に対しても、ですけど、物語の中の人たちが飛び出してきて、「おまえはどうなんだよ?」と言ってくる感じ……そういうものが欲しいなと思って加えたのが、“後味悪いや|sour”なんです。長く一緒にあり続けてくれるアルバムにしたいと思ったときに、ゾッとするというか、ドキッとするというか……さっき「登場人物と目が合った」と言っていただきましたけど、本当にその感覚が欲しかった。「幕の中の話だ」って、リスナーの人たちが安心して見ていられるものより、もっと前に行きたかったんです。

―井上さんと礒本さんは、“後味悪いや|sour”での締め括りについてはどんなふうに捉えていますか?

井上:凄くいいなと思っていて。“後味悪いや|sour”で終わることによって、凄くリアルに終わっていく感覚があるし、このアルバムの登場人物たちが、実際にいる人たちのように思えてくる。私は、<ねぇ 君はどうして 夢の中でも 君の思うように 君をしないの?>の部分は、物語が続いていくことを示唆しているような気がしていて。リアルさを追求すれば、終わらない気がしたんですよね。なので、“後味悪いや|sour”が入ったことで、より立体感が増して3Dになった感じがします。割と3Dめなアルバムではあるけど、よりドンッと来た感じがする。

礒本:僕は<君>って誰のことなんだろう? って、この作品全体のテーマを見通したときに凄く大事なことだと思うんですよね。作品の登場人物を指しているのか、音源を聴いているリスナーのことを指しているのか……それは決まっていないんですよね。だから、凄くいい。<君>は自分のことだと思った人は、ハッとするだろうし、いい意味でも、悪い意味でも、このアルバムを聴く人の価値観が凄く揺らいでくれたらいいなと思います。

<ねぇ 君はどうして 夢の中でも 君の思うように 君をしないの?>という部分は、最終的にはもう舞台装置としてのドラムはいなくなっていて、語り掛けてくる人と聴いてくれる人との対話、という構図が出来上がっている。ここで、聴いている人がポツンとひとりで取り残されているような感覚になるかもしれない。解釈の幅が凄くあるアルバムの締めくくりだと思います。

―この『合歓る – walls or bridges』という作品に描かれたのはどんな人間たちだったんだろう? と考えていて、ひとりの聴き手としては、みっともなさとか、愚かしさを抱えながら、それでも凄く懸命に生きている人たちだなと思ったんです。そんな人間像が見えてきたときに、晴れやかな気持ちになったんですよね。皆さんは、この作品に描かれたのは、どんな人間だと思いますか?

鈴木:自分としては、人間が出てくる物語を書くのであれば、その人間は自分に近い方がいいと思っていました。感情や行動を書くわけだから、自分との距離が遠すぎるとリアルに書けない。なので、これは自分の鏡でもあるんです。みっともないと思います。みっともなく分裂しているし、自分のちょっと前の行動を否定するような考えが頭に浮かんで、それとまた矛盾するような行動をとってしまうし、でも……そうですね、懸命だなって思う。「一人ひとりがいる」ということに対して、目を凝らして、耳をすませようとする人の物語だと思います。ふたりの関係を通して、時間をかけて、それぞれの人生で、そこに辿り着こうとする人の物語。それは、僕が「そうありたい」と思う姿でもあると思います。

礒本:僕は、このアルバムに描かれるふたりは「自分と他人」というだけじゃなく、「自分ともうひとりの自分」という関係性で捉えてもいいと思っていて。「他人=自分」でもいいと思うんですよね。それは今と違う価値観で生きている昔の自分かもしれないし、精神世界をグッと掘り下げたところにいる自分かもしれない。そんなふうに思いながら僕は歌詞を眺めたりしました。

井上:それ、アートワークで狙ったところかもしれない。今回、友達の双子にアートワークに出てもらったんですけど、「自分」がふたりいるようにも見えるし、でも完全に同じではないから、そのまま双子という関係性でこの物語を見てもらってもいいし、「自分と、過去の自分」として見てもらってもいい。

『合歓る – bridges』ジャケット
『合歓る – walls』ジャケット

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