INDEX
サウンド面での新機軸。感情の深層に潜ることで辿り着いた、ダンサブルな要素
―サウンド面の話を伺うと、シングルで“ライター”が出たとき、冒頭から聴こえるパーカッシブなビートが、これまでのローラズのイメージと違って凄く驚きました。実際、今回の『bridges』は全編通してバンドサンドだけでなく、よりエレクトロニックな、ダンスミュージックやアンビエントなサウンドも積極的に取り込んでいると思うんですけど、制作スタイル自体に変化があったのでしょうか?
鈴木:後編を作るに当たり、MacBookを買いまして。DAWと言うんですかね、初めてLogicとかを利用した音楽制作に切り替えたんです。『walls』よりも、もっと過激で攻めたサウンドにしたかったし、アイデアもすぐに取り入れることができるようにするために、この選択はかなり効いてくるだろうと思って。
―実際、曲作りの体感は今までかなり違いましたか?
鈴木:DAWを使い始めてからは、これまで以上に「何もかも」が楽曲作りの起点になった感じがします。ちょっとした鍵盤のコードやリズムパターンも、とりあえず録っておいて、それがどんどん膨らんで楽曲になったり。そういう体験を、『bridges』の制作中には結構しましたね。
―個人的には、この『bridges』のサウンドはジャンル的な意味というよりは心持ちの意味でパンキッシュな感じがしたし、凄く肉体的な印象がありました。物語を描くという側面で見たときに、ダンサブルな要素があったりする今作のサウンドを通して、どんなフィーリングを描き出そうとしたのだと思いますか?
鈴木:そもそも、パソコンを導入することによって、自分のベッドルームから立ち上がっていくような音楽になるだろう、という予感があったんですよね。今回、サウンドは肉体的になりつつ、物語としては人の内側により入っていくようなものになっていると思うんですけど。
―まさにそう感じました。
鈴木:内側に入っていったら、より感情にフォーカスが向いて、感情を表現しようとしたら、肉体的なアンサンブルになった……っていう、かなりアンビバレントな感じなんですよね。なので、内側に潜っていったら、よりデカいエモーションがあった。そういうことなんだと思います。
―深く潜ることは、小さくなっていくことじゃなくて、むしろ大きくなっていくことだったんですね。
鈴木:そうなんですよねえ。外の事象を描く方がデカい曲になると思いきや、内側にある怒りや悲しみにズームアップして行った方が、肉体的な曲になったという。不思議な体験ではありましたね。

―今回のサウンドの変化は、井上さんの歌にはどんな影響を与えたと思いますか?
井上:いろんなジャンルが混ざったような曲が多いので、今までよりも自分の軸を意識しないと、いろんな人の物真似をしているみたいになっちゃうなと思ったんです。なので、自分のままでいろんな歌い方をしまくるというのは、今回のレコーディングを通して持てた振り幅だと思います。歌入れのときに、自分が「これ、やりすぎちゃったな」と思ったことに対して、プロデューサーの岩本岳士さんや迅くんが「想像と違う着地点だけど、このテイクがいい」と言ってくれたりすることがあって。そういう面白さが今回は発見としてあったし、本当にシンプルに、自分が成長した作品だと思います(笑)。