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メジャーデビューを経た環境の変化への向き合い方。「人として成長しようとする以外には道がない」(井上)
―11月の終わりにライブを観たときに、今のローラズは凄く自然体にバンドのステージが大きくなっていくことに向き合っているように見えました。その姿を見て、皆さんが「ローラズらしくある」ために、この1年の環境の変化にどう向き合ってきたのかということが、きっと今作に入り込んでいると思ったんですよね。この1年間を、ローラズはどんなふうに過ごしてきたと思いますか?
井上:それで言うと、「自然体で大きくなっている」と思ってもらえたのは凄く嬉しくて。私は、どんな状況になっても「なるべく気負わないようにしよう」と思った1年だったんですよね。あとは……単純に、場数がものを言っているような気がします(笑)。
鈴木:ははは(笑)。
井上:凄い数のフェスやライブに出させてもらいながら、『bridges』も作り続けて、ミュージックビデオも撮って……って、とんでもないスケジュールをこなしてきたので、その「やり切ってます」感(笑)。「やるしかないっしょ感」みたいなものが、最近は常に漂っているような気がしていて。
鈴木:体育会系のマインドになった?(笑)
井上:私たちの中に体育会系のマインドが宿った気がする(笑)。しかも、それが結構、効いている気がしていて。かなりキツいスケジュールもこなしてきたおかげで、「どんなステージでも、私たちは今までやってきたことをやるだけだから」って、いい意味での余裕が生まれているような気がします。

―井上さんのボーカルとして、フロントマンとしての佇まいもこの1年を通して変化しているような気がしました。特に井上さんはバンドのスポークスマンとして「Laura day romanceとはこういうバンドである」と説明する場面も多かったと思うんですけど、そうした中での意識の変化もありますか?
井上:思ったより、自分が本当に「やりたい」と思ったことがすべてなんだなとわかりました。周りの人からどれだけ「こういうふうに歌ったら?」と言われたり、「こういうふうな立ち振る舞いをしたら?」と思われたりしても、結局は、私たちが選択したことを突き詰めていくのが一番いいんだなとわかった。さっきも楽屋で言われたのですが、「あなたはカッコつけなさすぎる」とよく言われるんですよね(笑)。そういう部分がステージ上でも出始めているのかなと思います。元々、そんなに気取っているつもりもなかったけど、自分を良く見せようとする瞬間がもっと削ぎ落されていって、いつもの自分のままでステージに行けるようになったのかもしれないです。取り繕ってもしょうがない、というか。ねえ?
鈴木:うん。気合を入れすぎずに自然体でやって、それが今の自分たちが立つステージのサイズ感に合ってきているんだと思う。場数を経た基礎体力があるからこそ、「かかり」みたいなものでカバーしなくてもよくなっているというか。
―「かかり」って、お笑い芸人さんがよく使う言葉ですよね。「かかってんなぁ」みたいな。気合いが入っていて、その結果としてちょっと空回りしちゃう、みたいな。
礒本:「かかり」は最近の僕らのテーマなんです(笑)。
―裏を返すと、かかることの大事さもあったというか、そういう時期を経たからこそ気づいたことがたくさんあったんですね。
鈴木:そうですね。自分を大きく見せるパフォーマンスをすることも大事なときだってあるけど、近道しようとしたり、性に合わないことをし過ぎると、僕らの場合は本来のよさも失いかねないってことに気付きました。そこのブレはお客さんにも伝わってしまうものだと思うし。
井上:今の迅くんの話を聞いていて思ったのは、この1年、フロントマンとしてメディアに出させていただくことも多かったですけど、人として成長しようとする以外には道がないんですよね。音楽を通して、私という人間が見られている感じがめっちゃした。だからこそ、どれだけ取り繕ったり、飾ったりしても、本当に意味がなくて。自分の底力を常に上げていくしかないんだなって、諦めました(笑)。諦めたというか、腹をくくった。
―礒本さんは、この1年を振り返るとどうですか?
礒本:個人的には結構、苦しかったんですよね。正直「ライブが全然楽しくない」みたいな期間がかなり続いていて。その理由を紐解いていったときに思ったのは、僕は『walls』が出たとき、よくインタビューで「自分の仕事は舞台装置だ」みたいな話をしていたんです。そんな自分の役割に囚われ過ぎて、それゆえに凄く悩んでしまった。ライブ中に「あれ? 自分はなんのために演奏しているんだろう?」と思う瞬間もあったし、演奏中に発作を起こしちゃったこともあって。

―そうだったんですね。
礒本:でもいつからか、上手くいかないことや、自分の想定外のことが起こることを「面白いな」と思えるようになってきたんですよね。今までは「きちんと仕事をしよう」と思っていたけど、トラブルもきちんと受け入れてみると、もっと面白い世界が見えてくるんじゃないかなって。なので、最近やっとライブが楽しくなってきたんですよね(笑)。この間やったワンマンも、演奏終わったあとのひと言目が「ああ、楽しかった」だったので、そこはこの1年の間に、自分の中で起こった変化でした。
―今のお話って、まさにこのアルバムの作品性に通じるお話のような気もします。
礒本:確かに(笑)。