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権利処理のプロフェッショナルも。サポート体制は万全、活用しないのはもったいない
―コロナ禍では感染拡大に鑑みて「二人芝居」、「三人芝居」などミニマムな公演も増えました。そうした時にも上演人数で検索がかけられる戯曲デジタルアーカイブや、「コメディ」、「フィジカルシアター」などとジャンルを絞り込んで映像を検索できるJDTAは創作者にとっても心強いものであったと痛感します。
岡室:ありがとうございます。JDTAもEPAD事業の一環として立ち上げました。こういうことが一つひとつ可能になったのも、やはりEPADの存在が大きいのですが、その取り組みを知られる機会がなかなかないことは課題の一つだとも思います。
舞台公演の映像はとにかく全国に散在していて、中でもVHSは経年劣化が進むので、エンパク館長時代「なんとかならないものか」と思っていました。かといってそこに割けるお金はない。そんな折にコロナ禍に突入し、窮地に陥った舞台芸術業界のための助成金に採択されたことでEPADは本格的に始動しました。舞台公演映像のデータを提供していただき、その協力対価を現場に還元する。そういった形式で2020年度から収集を続けてきました。

長田:2020年当時は、劇団や作家も「権利処理」という言葉を見た瞬間に及び腰になるようなところはあって……。つまり、一体何をすべきか分からない団体も多いんですよね。例えば、当時の俳優やスタッフの事務所に連絡を取って色々聞かなきゃいけないのかとか、音楽の使用料を再度払わなきゃいけないのかとか。コロナ禍中で上演中止で負債を抱える主催者も多く、ただでさえお金がなかったり、コンタクトが取りづらくなっている状況で断念する人も多かったんです。
岡室:EPADはまさにそういった方々のサポートをしているのがよいところで、弁護士の先生が中心にいらして、権利処理までをサポートするんですよ。団体や個人ではできないことが実現できる機会でもある。
長田:今まさに世田谷パブリックシアターと兵庫県立芸術文化センターで『シッダールタ』という舞台が上演中なのですが(※)、美術がすり鉢状になっていて、俳優にすごく負荷がかかるんです。その美術を乗りこなすためのトレーニングを積んだ俳優の肉体も含めて「これは今しかできないだろうな」と感じていて。やがては消えてなくなる「ライブ」であることが舞台の魅力というのは前提ですが、「これらの奇跡の瞬間が何かにとどめられている」ということには、いち作り手としても、どこか救われるような思いがするんですよね。
※取材は2025年12月に実施。
岡室:こうして話しているとつくづく痛感しますが、「アーカイブ」は演劇活動における重要なプロセスなんです。ただ、カンパニーは目の前の公演で手一杯でそこに時間を割く余裕がなかったり、そもそもその方法が分からなかったりする。アーカイブのメリットをもう少し解していけたらと思っています。
