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子持ち女性と独身女性の連帯を描いた『フェイクマミー』の挑戦
—では次に、明日菜子さんが2位にあげていただいた『フェイクマミー』について、お願いします。
明日菜子:TBSのシナリオコンクール受賞作品を連ドラ化したという、異例のドラマなんですよね。プライム帯で連ドラ化すると決めたのはビビっとくるものがあったんだなと。本作の何がすごいって、2025年の主要ドラマが扱っていたテーマの多くを、この一作で扱っているんですね。つまり、それは今を反映しているということでもあって。
今年、『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』という、様々な家庭環境の人たちが家事という一つの共通項で連帯したり、共闘したりというドラマがあったんですが、『フェイクマミー』は『対岸の家事』のいわばエキシビジョンマッチのように感じます。子持ち女性と独身女性の連帯って、現実でも本当に難しいと思うんですよ。どれだけ仲が良くても、結婚して、特にお子さんが生まれたら、ライフステージがガラッと変わって、連絡を取らなくなることもある中で、『フェイクマミー』は子持ち女性と独身女性のストーリーをこんなに軽やかにできるんだとまず驚かされました。
あと、東大卒のお母さんで替え玉受験するっていう、やっちゃいけないことをやってるんですけど、極端なことを言うと、今の社会って、他人とスクラム組んで連帯してやっていかないと乗り越えられない社会なのかなと思ったりもするんですよね。そうした自分の人生では体験できないことを辿れるのは、フィクションの醍醐味だと思いました。展開も速くて、視聴者の予想の二歩先三歩先を行くので、読めないんですよね。その速さは、NHKのドラマ『3000万』(2024年)なども彷彿とさせられました。
藤原:一人で抱えきれないものを分け合う、女性2人による社会実験みたいなことをやっている話でありながら、恋愛あり、友情あり、ママ友バトルもありで、バランスがすごく良いですね。
古澤:明日菜子さんが仰った通り、「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」という連ドラ化を前提としたコンクールの2023年の大賞受賞作品で、受賞した時のインタビュー記事も読んでいたのですが、そこで紹介されていた企画内容が今、放送されているものとほぼ同じなんですよね。既に、違う立場の女性の連帯、ニセママがバレてはならないというエンタメ性の掛け算といったところが含まれていて、これはコンクールで評価されるよなと思いました。ただ、勿体ないと思うのが、中盤まで、メインの2人以外の人物が2人を追い詰める役割しかしてなくて。田中みな実さんの役がどう動くかで、テーマの見え方が変わるのではないかと思います。
明日菜子:でも、笠松将さんには、一切の悪を背負って、コテンパンにやられてほしい(笑)。