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西美『オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語』で堪能する、印象派の意外な魅力

2025.10.31

#ART

絵画の中に登場するドレスの「実物」も展示

第3章では「室内に取り込まれた自然」をテーマに作品が展示されている。これまでは「室内画」だったが、ここからは「室内と絵画」がテーマだと捉えるのがいいだろう。

左:アルベール・バルトロメ夫人のドレス(1880年) / 右:アルベール・バルトロメ『温室の中で』(1881年頃)

パッと目を引くのはアルベール・バルトロメの大作『温室の中で』である。等身大に近い優雅な女性像は、画家の妻プロスペリー。温室は当時のブルジョワの邸宅装飾として人気を博していた最先端のエクステリアだ。ガラス張りで植物に囲まれる空間は、まさに「屋外」と「室内」の真ん中に位置しているといえるだろう。

隣には、実際に夫人がモデル時に着用していたラブリーなサマードレスが並べて展示されている。バルトロメは本作を描いてから数年後に妻を亡くして以来、絵筆を置いて彫刻に専念するようになった(一説にはドガの勧めとも)。この「温室の中で」とドレスは、そんなバルトロメが生涯手放さずそばに置いていたものだという。

第3章展示風景

展示室内には温室をイメージした装飾パネルとフレーム、さらに19世紀当時の籐椅子などがディスプレイされている。そして、壁面に並んでいるのは「室内に取り込まれた自然」の代表格である、花の静物画たちだ。花の絵は需要が高く、割の良い収入源になるため、いつの時代も画家たちは数多くの花の作品を手がけている。ここではセザンヌルノワールによる豪華な花々や、静物画の名手アンリ・ファンタン・ラ・トゥールによる端正な花々をじっくりと堪能しよう。

アンリ・ランベール(絵付)、ウジェーヌ・ルソー(企画販売元)「セルヴィス・ランベール=ルソー」より平皿(1884年以降)

3章の後半では、19世紀フランス美術界を席巻したジャポニスムの影響について触れられる。芸術家たちは自然を着想源とした日本美術に心打たれ、時にはその図柄や意匠を自らの作品に借用したのである。

現代だったらもちろんアウトだろうが、そこはまあ時代ということで……例えば、上の写真は1873年ごろに装飾画家のランベールが陶磁器の企画販売業者ウジェーヌ・ルソーと共同で製作した、ジャポニスムの飾り皿。中央の皿が参照しているのは、江戸後期の画家、森春渓による虫類の画譜に収められたバッタの図だと考えられている。ランベールが1枚ずつ丁寧に彩色したというだけあって、ご本家もきっと大満足したであろう鮮やかな仕上がりだ。

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