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社長×俳優の小栗旬、心療内科医の鈴木裕介らが語り合う「上手な休み方」

2025.11.10

#OTHER

「休む」ということに、どんなイメージを持っているだろうか? 怠けているようで後ろめたかったり、ゴロゴロしてみても疲れが取れなかったり、ちょうどいい上手な休み方を私たちは意外と知らない。目まぐるしく移り変わるエンターテインメント業界にいるならなおさらだ。

ソニー・ミュージックエンタテインメントが、クリエイターやスタッフを、心と身体の両面でサポートするプロジェクト「B-side」をスタートして丸4年。10月10日の世界メンタルヘルスデーには「#じょうずにやすもう」をテーマにイベントを行った。

本記事では、俳優の小栗旬らを招いたポッドキャスト番組「B-side Talk ~心の健康ケアしてる?」の公開収録の模様をリポート。記事後編では、プロジェクトの発起人であるソニー・ミュージックエンタテインメントの徳留愛理のインタビュー記事をお届けする。

「意識的に『この時間を休みにしてほしい』という要望を伝える」(小栗旬)

世界メンタルヘルスデーの10月10日、都内某所で開催された公開収録。番組のMCを務めている小原ブラス、奥津マリリ(フィロソフィーのダンス)の紹介で登場したのは、所属事務所トライストーン・エンタテイメントの社長も兼任する俳優の小栗旬と、『心療内科医が教える本当の休み方』などの著書がある心療内科医・公認心理師の鈴木裕介。今年のテーマである「#じょうずにやすもう」をテーマに、俳優やアーティストが休みをとることについて議論を交わした。

右から鈴木裕介、小栗旬、奥津マリリ、小原ブラス / ©︎日高奈々子

俳優として第一線で活躍を続ける小栗に、奥津が「なかなかまとまったお休みを取るのは難しいんじゃないかなと思うんですが」と切り出すと、小栗は「程よく休みとのバランスをとりながら仕事はできている」と答えつつ、アウトプットが多い俳優業が続いていく中で、インプットできていない時に「休め」のサインを感じると話した。とはいえ、撮影中の俳優の日々はほぼ、休みを含めてスケジュールが決まっているもの。作品の撮影中に突然休むことはできないため、作品と作品の間の準備期間に意識的に「この時間を休みにしてほしい」などという要望を伝えると話した。

小栗旬(おぐり しゅん) / ©︎sai
俳優、映画監督。主な出演作品にテレビドラマ『GTO』『ごくせん』『花より男子』『リッチマン、プアウーマン』『鎌倉殿の13人』。映画『宇宙兄弟』『ルパン三世』『信長協奏曲』『ゴジラvsコング』『フロントライン』。Netflixシリーズ「匿名の恋人」が10月16日より世界独占配信となる。
奥津マリリ(おくつ まりり)
アイドルグループ・フィロソフィーのダンスのメンバー。B-side TalkでMCを務める。

10代のころから活躍している小栗だが、昔と今では仕事の環境がずいぶん変わったと指摘する。「今から2、30年前は、なかなか休みたいと言える環境ではなかったのでみんな無理して働いていたのが、コロナ以降体調不良の人は休むべきということになり、休むと言えない環境ではなくなったと思う」と小栗。

ここでMCの小原は「本当の意味でのお休みというのはどういうふうに捉えたらいいのか」という本質的な問題を提起。

小原ブラス(こばら ぶらす)
関西育ちのロシア人コラムニスト / コメンテーター。B-side TalkでMCを務める。

心療内科医の鈴木が、欠勤を意味するabsentと休養のrestの違いを例に、「活動をしていないことイコール体力が回復しているということではない」と解説し、いい休み方とは「体が本当に求めているリズムを取り戻すこと」と話した。ゲームが趣味の鈴木も時として夜にゲームを続けたくなることもあるというが、それは頭が求めていること。体が求めていることとは違うという差に気がついて、体の言うことを聞いてあげるのが休むということだと説明した。

鈴木裕介(すずき ゆうすけ)
心療内科医・公認心理師。秋葉原saveクリニック院長。身体的な症状だけでなく、その背景にある種々の生きづらさ・トラウマを見据え、こころと身体をともに診る医療を心がける。主な著書に17万部を突破した『我慢して生きるほど人生は長くない』(アスコム刊)がある。

「自分は休みが必要」だと、どう気がつけばよいのか?

とはいえ、自分で「自分は休みが必要」ということにどう気がつけばよいのか。心療内科医として日々診察にあたる鈴木は「普段の状態からの変化をみる」のだという。ミスが増えたり、普段は綺麗好きな人が散らかしていたり、目があまり開かなくなったりといった変化が重要なサイン。そんな人が周りにいた時、ただ「大丈夫?」と聞いても「大丈夫」と答えが返ってきてしまうことが多いので、「眠れていますか?」などと聞くのがよいとアドバイスを送った。

©︎日高奈々子

2年前に、所属事務所の代表取締役社長に就任した小栗だが、奥津が「立場が変わって休むことに対して考え方は変わりましたか?」と尋ねると、自分自身は俳優業以外の業務が増えたために、休めない時間が増えているとしながらも、「所属している人間がうまく休みを取れているかどうかを気にするようになった」と語った。無理してしまうタイプの人もいるので、何か変化がないかと気をつけて見るようにしているという。

©︎日高奈々子

一方俳優としては、新しく業界に入ってきた後輩たちの緊張をほぐすため、現場ではよく声をかけるほうだと明かす。「僕らの仕事はリラックスしてこそ能力を発揮できる仕事だと思います。初めての現場だという人は緊張をとってあげたいので、たとえば『ちょっと多めにリハーサルをやりませんか?』とか、先に自分のカットをやって相手の気持ちがほぐれてからそちらにしましょうということを制作チームと相談したりします」と小栗が話すと、小原は「(新人は)自分からはもっとやってほしいと言えないから、言ってもらえるとすごく安心ですよね」と感心していた。

©︎日高奈々子

「カウンセリングが日常にないのは、日本くらい」(鈴木)

B-sideでは現在、アーティストや支えるスタッフに対し、年間を通じて24時間体制で健康上の不安について匿名で医師にチャット相談できるオンラインツールを提供しているほか、年4回ほどの外部講師によるワークショップ、体験カウンセリングなどを行っているが、なんといっても柱となるのは専門のカウンセラーによる個別サポートだ。臨床心理士や公認心理師といった心の専門家にサイトから予約を入れ、対面もしくはオンラインでカウンセリングを受けることができる。

小原が、小栗にカウンセリングを受けたことがあるか尋ねると、受けたことがないと答えつつも「重要なことだと思いますね」と即答。「僕らのようなアーティストや俳優という仕事は、人前に出ていろんなことを表現しなければならず、不安定な状態でいることも多いと思う。そこを一回まっさらにする作業はすごく重要だと思います」と表現者ならではの観点で回答した。

©︎日高奈々子

「役を突き詰めた結果、自分が今どこにいるのかよくわからなくなることが起きたりするんですよね。野球で言えば素振りの場がありますけど、僕らは常に現場に行ってホームランを打たなければいけないという状況なので、0か100という緊張感の中でやっているんです」。海外ではアクティングコーチなどがメンターになって、俳優がエクササイズをして普通の自分に戻っていくという作業が行われていると紹介し、「本人はリラックスしているつもりでもバランスが悪くなっているのかなと思う瞬間がある」という。奥津も「私も不安になったらボイストレーニングに行って、自分の発声を確認してみる」と共感していた。

©︎日高奈々子

公認心理師でもある鈴木は、カウンセラーは心理学を使って心の問題を解決するプロフェッショナルだといい、健康な現在も、月に一度はカウンセリングを受けていることを紹介。「カウンセリングが日常にないのは、日本くらいなんですよ。もっと身近なインフラになったほうがいいと僕は思っています」と呼びかけていた。

©︎日高奈々子

Podcast番組「B-side Talk ~心の健康ケアしてる?」

視聴リンク:https://t.co/BlaLeFOQQ5

B-side

エンタテインメントの価値の源泉であるクリエイターとそのスタッフを心と体の両面でサポートするプロジェクト。
アーティスト・クリエイターとその活動を支えるスタッフが心と体に不調を感じたときに気軽に利用できる専門家のサポートを提供したいという発想からスタート。2021年9月からソニーミュージックにて活動がスタートし、2024年秋からはソニーミュージックグループ以外のエンタテインメント企業へのサービス提供も開始している。
オフィシャルサイト: https://www.b-sideproject.jp/

主催:株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント

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