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なぜ曽我部恵一の言葉は、シンプルなのに情感豊かに響くのか。小説家・桜井鈴茂が語る

2025.11.26

#MUSIC

曽我部恵一から歌詞を委ねられた桜井鈴茂だからこそわかること

―ちなみに、サニーデイ・サービスの最新作『サニービート』は聴かれましたか?

桜井:今朝聴きました。ちょっと若すぎてついていけなかったところもあったけど(笑)、若さゆえの躍動感みたいなのを感じました。僕自身はもう若者じゃないんでね、ソロのほう(『パイナップル・ロック』)のほうがしっくりきます。中年以降のキリキリした切実なものも感じます。

サニーデイ・サービス『サニービート』(2025年)を聴く(Apple Musicはこちら)

―ここ最近のサニーデイはよりロックンロール的になっているというか、曽我部さんの言葉もどんどん若くなっている感じがしますよね。『DOKI DOKI』(2022年)に入っている“サイダー・ウォー”なんて、まるで少年みたいな歌詞の世界ですから。

桜井:そういうところにも彼の才能があるんじゃないですかね。さっきも言ったけど、曽我部くんってめちゃくちゃ本を読むんですよ。インプットが豊かだからこそ、こういう歌詞も書けるんだと思う。小説をたくさん読んでないと、こんな歌は書けないですよね。

小説っていうのは意外と自分語りのできないジャンルなんですよ。私小説は別にしても、あくまでも作者は登場人物を後ろで動かす黒子なんです。50代でこれを書けるというのは文芸リテラシーが相当高いんだと思うね。黒子になって、あるキャラクターの後ろに回って、そうしてやっと表現できることってあると思うんです。

負けるなオレ 行けもっともっと

一番星 落っこちて 微笑んだ

だれよりも天才 自転車をこいでる

真昼の超新星 立ち上がり 蹴飛ばして

生まれ変わる場所へ行きそこでまたギターを弾く

風が吹いてんだってねぇ

だれかは叫びだれかは歌う

甘い缶コーヒー飲みたくなった

サニーデイ・サービス“サイダー・ウォー”
サニーデイ・サービス“サイダー・ウォー”を聴く

桜井:そういえば、曽我部くんが他人に歌詞を書かせているというのは俺だけですか?

―その話も聞きたいと思っていました。桜井さんはどのような経緯で“Yeah Yeah”を作詞することになったのでしょうか。

桜井:その数年前から飲んでるときに冗談半分で言ってたんですよ、「歌詞を書かせてよ」って。これだけのペースで書いていたら、いずれ言葉が枯渇するんじゃないかと勝手ながら思ってね(笑)。

なおかつどんどん小説が読まれなくなってきてる今、自分が書いた言葉に、曽我部くんの声とメロディーが乗っかったら、もっと遠くに飛んでいくんじゃないかなっていう希望というか、野心みたいなものもありました。

それで「歌詞を書かせてよ」って言ってたんだけど、本当にある日、電話がかかってきたんです。「歌詞を書いてくれないか」って。

桜井:仮歌が入った音源が送られてきて、「サビのフレーズだけ残してくれれば、あとは何してもいいから」って。1週間ぐらいで書いて持っていったら、曽我部くんが気に入ってくれてね。

―“Yeah Yeah”ではどういうことを書こうと考えていたのでしょうか。

桜井:パーソナルで身近なことを綴りながら、背景にある社会や世界がちょっと見えるようなものを書きたいと思ってました。そのあとも「今度歌詞を先に書いてくんない?」って言われて、2曲書いて渡したんですよ。それもラフに録っていたけど、未発表のままですね。めちゃめちゃいい曲だと思ったんだけど。

たよりない眠りをむさぼり続けた

おそろしい夢を午後も引きずっていた

行ったことのないとなりのまちでは

小さな子どもがさんにんどこかに消えた

暗くなるのを待ってひとり出かけた

さんざん迷ってここにやってきた

ほんとはたった一杯の水を

飲みたかっただけなんだろう

耳の奥きみの声が 残ってる

さんざめく何もかもがくだらない

こんな夜は yeah yeah

曽我部恵一“Yeah Yeah”
曽我部恵一“Yeah Yeah”を聴く

―曽我部さんはとにかく膨大な量を猛スピードで書いている感じがしますよね。たった5年前の曲でも過去のものというか置き去りにしてしまうこともあるわけで。

桜井:逆に言うと、ファンにとっては曽我部恵一を全部受け入れることはちょっと難しいかもしれないですね。アーティストのこと好きになると全肯定しなくちゃいけないような気分になるけど、別にそんなことないと思う。なにせ曽我部恵一は多面体だから。

―曽我部恵一は多面体。それが今日の結論という感じもしますね。

桜井:そうかもね。多面体だからこそ、「曽我部さんのこの部分が好き」みたいな感じで十分な気がします。

本展の一角にあるメッセージボード。来場者は思い思いに言葉を綴ることができる。取材後、桜井は曽我部恵一への言葉をしたためていた

▼展示情報

『サニーデイ・サービス 曽我部恵一展 -Lovers of words-』
2025年10月18日(土)〜12月21日(日)

一般:600円
高校生・大学生:300円
中学生以下:無料

休館日:毎週月曜、12月11日(木)は休館
※11月24日(月)は開館

https://www.city.machida.tokyo.jp/bunka/bunka_geijutsu/cul/cul08Literature/tenrankai/sokabekeiichi.html

▼ライブ情報

『SUNNY DAY SERVICE TOUR 2025』
2025年11月22日(土)
会場:福岡県 福岡 BEAT STATION

2025年11月23日(日)
会場:北海道 札幌ペニーレーン24

2025年11月29日(土)
会場:愛知県 名古屋クラブクアトロ

2025年11月30日(日)
会場:大阪 梅田クラブクアトロ

2025年12月12日(金)
会場:香川県 高松オリーブホール

2025年12月13日(土)
会場:愛媛県 松山WStudioRED

2025年12月19日(金)
会場:宮城県 仙台RENSA

2025年12月22日(月)
会場:東京都 恵比寿LIQUIDROOM

『SUNNY DAY SERVICE TOUR 2026』
2026年2月28日(土)
会場:熊本県 B.9 V1

2026年3月1日(日)
会場:鹿児島県 キャパルボホール

2026年3月13日(金)
会場:広島県 クラブクアトロ

2026年3月14日(土)
会場:岡山県 YEBISU YA PRO

2026年3月20日(金)
会場:北海道 苫小牧 ELLCUBE

2026年3月21日(土)
会場:北海道 函館 CLUB cocoa

2026年4月4日(土)
会場:山口県 周南RISING HALL

2026年4月5日(日)
会場:長崎県 Drum Be-7

2026年4月19日(日)
会場:京都府 磔磔

2026年5月8日(金)
会場:高知県 X-pt.

2026年5月9日(土)
会場:徳島県 club GRINDHOUSE

2026年5月17日(日)
会場:静岡県 浜松 窓枠

2026年5月23日(土)
会場:新潟県 新潟 LOTS

2026年5月24日(日)
会場:石川県 金沢 EIGHT HALL

2026年6月7日(日)
会場:神奈川県 横浜 BAY HALL

2026年7月3日(金)
会場:岩手県 盛岡 CLUB CHANGE WAVE

2026年7月4日(土)
会場:青森県 青森 Quarter

2026年7月11日(土)
会場:兵庫県 神戸 Varit.

2026年7月12日(日)
会場:鳥取県 米子 laughs

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