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“24時のブルース”——社会の片隅で生きる一人ひとりの生をすくう

―桜井さんが印象に残っている曽我部さんの歌詞を何曲か挙げていただけますか?
桜井:それ、聞かれるかなと思っていくつか考えてきました(笑)。
まずひとつが“24時のブルース”(1998年作『24時』収録)。それから“愛のかけら”(2003年のソロアルバム『瞬間と永遠』収録)。3曲目はやっぱり“ギター”(2002年のソロアルバム『曽我部恵一』収録)。曽我部恵一BANDの“満員電車は走る”も好きだけど、その3曲にしておきましょうか。
―では、“24時のブルース”から話していただきましょうか。これ、名曲ですよね。
桜井:名曲ですね。この曲は曽我部くんのことをリスペクトするきっかけになった曲です。<いろんな場所でみんな星に祈り / いろんな場所でみんな愛し合う>というフレーズがありますけど、すごくパーソナルなことを歌っているようで、その後ろに広がる社会や世界のことにちゃんと視線が向けられている。そこが素晴らしいですよね。
―「大衆」みたいな大きくて曖昧な集団を歌っているのではなく、社会の片隅で生きる一人ひとりに目が向けられている感じがします。
桜井:曽我部くんと初めて京都で会った次の日、阪急電車の中で“24時のブルース”が入ったアルバム『24時』を聴いてたんですよ。
ちょうどその日の朝、当時南米のチリに住んでいた弟と国際電話で喋ったんですけど、向こうでいろんなことがあったみたいで、弟が電話口で泣き出したんです。そのことが頭の中で響いていて。電車の中で“24時のブルース”を聴いていたら、<いろんな場所でみんな星に祈り / いろんな場所でみんな愛し合う>というフレーズでなんだか泣けてきちゃってね。そのこと思い出します。
犬はうるさく吠え
サニーデイ・サービス“24時のブルース”
だれかは数をかぞえ
朝を待って眠り
夜を待って歌う
そうさ
今日はひとり歌う
24時のブルース
女の子たちは踊る
貨物列車のブルース
そうさ
いろんな場所でみんな星に祈り
いろんな場所でみんな愛し合う
ぼくはきみの声が聴きたかったんだ