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TESTSET砂原良徳&白根賢一が語る。テクノもロックも、正解が曖昧だった90年代を経て

2025.10.24

TESTSET『ALL HAZE』

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1980年代に10代を過ごした砂原&白根は、AIをどう見ているか?

─今回のアルバムも、ビンテージなテクノサウンドが、熱すぎずクール過ぎず、絶妙な温度感で奏でられていて、TESTSETらしいアルバムだと思いました。4曲目“Enso”のイントロから左右で鳴っているシンセパーカッションなんか、まさにニューウェイヴ的な古きよき音像に感じました。

砂原:あれはDXとかそういうFMシンセに、リングモジュレーターをかけた音(※)で、古臭い音作りをやってます(笑)。まあ、そういう作り方が長年の方法論というか、意識せずできるやり方なので。パッドを叩いたりっていう今っぽい手法ではなくね。

※筆者注:FMシンセは複雑な倍音に特化したデジタル音源で、DXはその代表的な機種シリーズ(YAMAHA DX7など)。リングモジュレーターは音に金属的な響きをもたらすエフェクト

TESTSET『ALL HAZE』収録曲(各ストリーミングサービスはこちら

─シンセ主体の音作りしかり、インダストリアルなリズムしかり、TESTSETのベースには1980年代的なサウンドありますよね。一方で、現代的な音楽制作の現場に目を向けると、AIが浸透しつつあります。おふたりは実際に使われることはありますか?

砂原:僕はゼロですね。AIのマスタリングソフトなども触ってみましたが、個人的にはまだまだだと思います。

自分がマスタリングしたあとに、同じ音源をAIにマスタリングさせてみて比較する……というような実験も試してみましたけどね。ただ、AI自体はすごいスピードで発展しているし、何を学習させるかで結果も違うでしょうから、今の時点で一概には言えないですね。

砂原良徳

砂原:AIはまだ、確固たる価値判断ができないんだと思います。AIはどっちがいい、悪いというような判断力が足りてないし、その根拠がない。でも、こっち(人間)には、理屈じゃない「断然、これが好き!」というのが価値判断とその根拠があるわけじゃないですか? まあ、こういう状況も時間の問題かもしれませんが。

白根:自分も、制作でAIを使うことはありませんが……この前、仕事で関わった曲のドラムがすごくよかったんです。「一体誰が叩いたんだろう?」っていろいろ想像したんですけど、確認したらAIだと言われて。まあ、ただポンとAIが出力したものではなく、かなり細かいプロンプトを作成したり、込み入った作業を経て、人間らしい叩き方に寄せて作ったものらしいんですけど。

白根賢一

─今のAIが目覚ましく発展する状況は、ドラムマシンが登場したときに、「もうドラマーの仕事はなくなる」と言われた1980年代と、少し似ているのかなとも思うのですが。

白根:逆に、どう思われますか? これからどういう状況になるのか。

─個人的には、楽器を演奏する喜びというのは普遍だと思うので、プレイヤーの人口が完全にゼロになることはないと思います。ただ、音楽制作におけるAIの占める割合はどんどん増えるのではないかと。そうなると、演奏する人の人柄だったり、ストーリーのようなものが大事になるのかなあと個人的には思います。

砂原:僕は仕事中の気分転換で、わざと下手なバンドの演奏を打ち込みで再現する遊びをたまにやるんですよ。

ギターを降ろすときに、肩にかけたストラップが弦に腕が触れて「ビッ」とか鳴っちゃった場面を想像して打ち込むんです。「こういうヤツいるよなー」って(笑)。つまり、AIのような、模範的なクオリティーのものが溢れると、逆に下手な演奏が聴きたくなる……みたいなことはありそうですけどね。

白根:今は、はっきりと「正解」が求められる時代なのかなと感じますね。音楽や映画の感想にも「正解」があるかのようなムードというか。そういう中で、砂原さんが言うようなエラー的なものが重要になってくるかもしれないですね。

砂原:逆に、そういうエラー的な部分まで含めて、人間のやることをAIがマネできるようになったとき、人間がどうなるか気になりますよね。

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