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松本幸四郎や中村獅童。縁のある役者たちとの想い出
とはいえ、なにしろもとは現代劇。三谷が「ほぼ原型をとどめていません。執筆には苦労した」と語るだけあって、歌舞伎化にあたって、さまざまな点でアダプテーションが必要となったとか。舞台は江戸時代、伊勢の芝居小屋「蓬莱座」。狂言作者の花桐冬五郎(松本幸四郎)や座元の藤川半蔵(片岡愛之助)が、人形浄瑠璃で人気となった『義経千本桜』を、山本小平次(中村獅童)が演じる歌舞伎として上演しようとするが、その上演をめぐって大騒動が巻き起こる……という設定に書き直されている。
三谷:歌舞伎座始まって以来、割れんばかりの拍手と、ガラスが割れるぐらいの笑いが巻き起こるコメディをやりたい。僕がやるべきことは、笑いに特化した歌舞伎……これって、そもそも歌舞伎なのかな?
幸四郎:ど真ん中の歌舞伎です! 芝居を愛している人たちばかりが登場する芝居ですから、僕自身、幸せを感じながら勤めたいですね。三谷さんは100%信頼している方ですから出来は役者次第。緊張はありますが、傑作にしたいです。
今回の公演には松本幸四郎をはじめ、過去に舞台やドラマに出演するなど、三谷作品と縁ある歌舞伎役者が揃う。
三谷:僕が知っている歌舞伎役者の皆さんは、笑いが得意な方ばかり。こんなに笑いのセンスにあふれたコメディアンばかりの集団もありません。幸四郎さんと初めてお会いしたのは、(幸四郎の息子である)市川染五郎さんぐらいの年頃の時なので、今回お2人とご一緒するのが感慨深くて。あと幸四郎さんと(中村)獅童さんの仲がすごく良くて、稽古してるとすぐふざけて脱線していくんですよ!(笑) お2人が率先していい雰囲気にしてくださっています。


三谷:(片岡)愛之助さんは映像でも舞台でもお仕事していますが、いつもは『立派な人を演じさせたい』という思いがあるんですね。でも今回は頼りない、いい加減なキャラクターを演じてもらいます。坂東彌十郎さんとはここ数年さまざまな作品でご一緒しています。今回の歌舞伎化に関しては、いろいろな相談に乗っていただきました。

一人ひとりとの思い出を笑顔でコメントしたが、中村鴈治郎に関しては初顔合わせとなる。
三谷:なんでこんな面白い生き物を今まで知らなかったのか、悔やまれてなりません。もっと早く出会っていたかった。