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2部構成で語られるヴィクターと怪物の関係
『フランケンシュタイン』の映画化にあたり、デル・トロは1931年版をはじめとする過去の映画ではなく、原点である作家メアリー・シェリーの小説に回帰した。オリジナルに敬意を払いながら、自身の解釈とアレンジを加え、物語を新たに紡ぎ直している。
主人公のヴィクター・フランケンシュタイン(オスカー・アイザック)は、幼少期から厳格な父レオポルドによる苛烈な教育を受け、優秀な科学者に成長した。最愛の母クレアを早くに失ったヴィクターは、「死」を克服すべく禁忌の実験に取り組みはじめる。しかし、その試みは神に背く行為として学界から追放される。窮地にあったヴィクターに資金援助を申し出たのは、武器商人のハインリヒ・ハーランダー(クリストフ・ヴァルツ)だった。

やがてヴィクターは、戦死した兵士や死刑囚たちの遺体をつぎはぎし、恐るべき「怪物」(ジェイコブ・エロルディ)を創り上げる。しかしその怪物はすさまじい身体能力を備えながらも、ヴィクターが求めた知性を持ち合わせてはいなかった。
デル・トロ版『フランケンシュタイン』は、前半はヴィクターの視点から語られ、後半は怪物の視点から語られる2部構成となっている。かたや生命の創造に突き進む科学者、かたや自らの生に困惑するモンスター。本作は、彼らがそれぞれに異なる性質のアウトサイダーであることを明らかにし、両者の関係性をそれぞれの角度から掘り下げていく。

ヴィクターは、母親を亡くした喪失感と無力感、父親への怒りを動力源として「創造」に打ち込む。周囲の理解は得られず、真っ当な弟ウィリアム(フェリックス・カメラー)の存在は時にコンプレックスとなり、弟の婚約者エリザベス(ミア・ゴス)への思いは空転する。取り憑かれたかのごとく「創造」に身を捧げるが、その一方的な期待が裏切られたことを悟るや、自らの創造物を激しく否定する。
けれども怪物は、なぜ自分がこの世に生を受けたのかが分からない。なぜ父であるヴィクターが自分を憎み、拒絶するのかが分からないのだ。やがて彼は世界のありようを学び、ヴィクターを追い始める。それは「自分とは何者か、自分はどこから来たのか」を探求する旅だ。
