10月24日(金)に一部劇場で公開され、11月7日(金)からNetflixで独占配信される最新作『フランケンシュタイン』。監督を務めるギレルモ・デル・トロにとって、この作品は長年の夢の結晶だ。
1931年の映画『フランケンシュタイン』を少年時代に観て以来、いつか自分の手で撮りたいと願い続けてきた。『シェイプ・オブ・ウォーター』や『パンズ・ラビリンス』など、常に「モンスター=アウトサイダー」の視点から人間の孤独や優しさを描いてきたデル・トロ。そんな彼が、なぜ今、あらためて『フランケンシュタイン』という古典に向き合うのか。
本作でデル・トロは、『フランケンシュタイン』を単なるホラーや悲劇としてではなく、「罪と赦し」「創造と破壊」をめぐる人間ドラマとして描き直す。科学者ヴィクターと、彼が生み出した「怪物」。ふたりの孤独な魂がぶつかり合うその先に、デル・トロが見つめる「いまの世界」がある。
※本記事には映画の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
INDEX
彼は私自身だ、彼は救世主なのだ。
ギレルモ・デル・トロはこれまで多くの作品で「モンスター」を描き続けてきた。アカデミー賞に輝いた代表作『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年)や、人気コミックを映画化した『ヘルボーイ』シリーズ、そして根強い人気を誇るダークファンタジー『パンズ・ラビリンス』(2006年)……。
それらの根底にあるのは、「モンスター」なる存在に託されたアウトサイダー、すなわち世界や社会にうまく馴染めず、時には疎外されるはみ出し者への視線だ。『シェイプ・オブ・ウォーター』の公開時、デル・トロは海外メディアのインタビューでこう語っていた。
「モンスターはあらゆるはみ出し者の象徴です。私は人種やジェンダー、性的嗜好、政治的立場などによって時に疎外されますが、彼らはただ疎外されている。[中略]モンスターはアウトサイダーたちの守護聖人なのです」
『The Talks』インタビューより
そもそもデル・トロがこのように考えるきっかけとなったのが、ほかでもない『フランケンシュタイン』だった。7歳のころ、1931年製作の映画『フランケンシュタイン』を観たデル・トロ少年は、ボリス・カーロフ演じる怪物の姿を見るや、「彼は私自身だ、彼は救世主なのだ」という「啓示」を受けたと語っている。
以来、デル・トロにとって『フランケンシュタイン』の映画化は生涯の夢となった。はじめに自分で映画にしたいと考えたのは少年時代、まだ8mmフィルムで映画を撮っていたころ。長年にわたる構想と紆余曲折が、ついに実を結んだのがこの作品なのである。