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いよいよOasis目撃の日。バシャバシャ撮ってたカメラが招いた災難
そしていよいよOasisを生で観る日の朝がやってきた。チケットを確認したらライブは15時スタート、早めの12時半くらいに会場のヒートンパークに到着しようという話になった。ホテルからヒートンパークは30分くらいかかるので12時ごろに受付に降りて受付のナイスガイお兄さんにタクシーを呼んでもらった。
「楽しんで!!」と声をかけてもらい僕はダブルグーで応えた。タクシーに乗り込み、街並みをカメラでパシャパシャしながら向かった。タクシーの運転手さんはまた友達と電話をしている。最高だ。だんだんと車が増えていき、Oasisグッズを身に纏った人々が増えていく。確実に近づいている。会場の近くで降ろしてもらい、歩いてゲートに向かった。天気も最高。気温は20度くらい。当たり前だが周りはイギリス人ばっかり、でも僕も皆と同じ目的、Oasisを観るために歩いている。マサヤスさんとワクワクしながら結構な距離を歩いた。距離など全く気にならなかった。
歩いていると非公式のグッズを売っているおじさんが声を張り上げていて、何人か普通に買っていた。あれ買う人いるんだ。最高だな。10分くらい歩いてウェストゲートと書かれている入り口に辿り着いた。もう大勢並んでいる。我々も最後尾に並んだ。あっという間に最後尾は最後尾でなくなっていった。5分後には我々の後ろにも長蛇の列ができていた。13時になりその列がゆっくりと動き出した。いよいよ入ることができる。列は動いては止まり動いては止まりを繰り返し、お酒の匂いと誰かの吸ったタバコの匂いがして時々観客が歌うOasisが聴こえてくる。14時くらいになり、セキュリティのゲートが見えてきた。やはり凄い規模で、100人くらいの警備員がライブの平和を守ろうとしている。しかし今の段階で14時? 大丈夫か? ライブは15時スタートじゃないのか? 間に合うのかな、まぁ流石に5万人規模だから遅れは出ているんだろうな、などと思いながら人の波に身を委ねた。
14時半ごろようやくセキュリティゲートに辿り着いた。ドキドキしながら電子チケットを見せて第一関門通過、荷物検査をして第二関門通過、無事入場! のはずだった。警備員のお兄さんが僕のカメラを指差して厳しい表情をした。あれ……嘘だろ……? トム・クルーズに少し似た警備員のお兄さんの表情は固かった。説明を聞くとプロフェッショナルカメラは持ち込めない、ということだった。
「車で来ているならカメラを車に置いてきてくれ」
「いや車では来ていない」
「ホテルに泊まっているのか?」
「ホテルに泊まっている」
「ではホテルに置いて来てくれ」
「!?」
会場に先に入ったマサヤスさんが心配そうな顔でこちらを見ている。どうにかならないかトム・クルーズに拙い英語で交渉した。だがトム・クルーズは「すまない……お前を入れたいのはやまやまなんだがこれはルールなんだ、そう、おれも歯車の一部にすぎないんだ……」という顔をしていた。
そして「ちょっと待ってくれ」と言って、他の怖い顔した上司っぽい警備員に相談してくれたのだが、その上司っぽい警備員も同じ顔をした。そしてその上司っぽい警備員がもっと上司ぽい警備員を呼んで話し合ってそのもっと上司っぽい警備員も同じ顔をした。その一連の警備員マトリョーシカは僕をホテルに戻ることを決意させた。結論、カメラを持ったままでは会場に入れなかった。優しすぎるマサヤスさんが一緒にゲートの外に出てきてくれ、一緒に戻ると言ってくれた。僕は「僕のことはいいからOasisを頼みます」というわけのわからないザコ名言を発してしまった。
マサヤスさんにはまた並んで入ってもらうことになってしまい(最悪)、僕はタクシーでホテルに戻らないといけなくなってしまった。片道30分、現在の時刻14:45、ライブは15:00スタート。終わった。絶望の表情でタクシーに乗っていた。行きとは打って変わって時間が過ぎるのが遅い。この時ぼんやりと友達と電話する運転手さんの後頭部を見ながら僕は思った。
「頼む、ギャラガー兄弟よ、ここで小競り合いを起こしてくれ、それも結局1時間後くらいには仲直りしてやっぱやるかってなるくらいの軽い小競り合いを。いままでいっぱいケンカをしてきたんだろう? そのくらいにケンカの調整はできるはずだぜ?」と。パニックになっていた僕は本気でそんなことを思っていた。

ホテルに戻ってきた。時刻は15:15。予定ならもう始まっている。顔面蒼白で戻ってきたクレイジージャパニーズを見た受付のナイスガイは心配そうに駆け寄ってきてくれた。3時間前はダブルグーをしてたやつがめちゃくちゃ落ち込んで帰ってきたのだ、なにかが起こったことが伝わるには充分だった。僕が事情を説明したら、彼はすぐにタクシーをまた呼ぶよと言ってくれた。マジでナイスガイだった。部屋に戻ってカメラを置き、スマホをチェック(僕のスマホは設定上海外ではWi-Fiのあるところでしかネットを使えない状態だった)すると、マサヤスさんからLINEが届いていた。
「Oasisまだ始まる気配ありません! 奇跡おこるかも!」
という内容だった。それと、これを再入場の時に警備員の人に言ってください、という今までに経緯をわかりやすくまとめた英文が送られてきていた。神おじマサヤスさん、僕は人に恵まれすぎている。その英文の入ったスマホを握りしめ、ナイスガイが呼んでくれたタクシーに乗り込んだ。ナイスガイは僕がホテルを出る時「良い1日を!!」と言って背中を強く叩いてくれた。涙が出そうになった。ていうかちょっと泣いた。

タクシーが会場周辺にくると前よりさらに混んでいた。タクシーの運転手さんが「この混みようならもう歩いて行ったほうが早いぜ」と言ったので降りて走って会場へ向かった。なんと会場に近づいても音漏れは聴こえてこなかった。現在時刻16:00! 「奇跡的にまだ始まってないらしい! よしよしよしマジで小競り合ってる!?」と思いながら、ゲートを見つけセキュリティゲートに到着し警備員さんにマサヤスさんからもらった英文を話した。
すると「さっきそのやりとりをしたゲートに行ってくれ」と言われた。そう、ここはウエストゲートではなくサウスゲートだったのだ。急いでサウスゲートからウエストゲートに向かう。「チケットを見せた後につけてもらったこのリストバンドは何のためにあんだよ!」と思ったが全てはおれが悪い。唇をかみしめてウエストゲートに走った。
現在時刻16:15。ウェストゲートになんとか到着した。まだ音は聴こえてこない。マジか! 間に合うかもしれない! セキュリティゲートで警備員にマサヤス英文で説明をする。すると「さっき対応した警備員を見つけてくれ、そうじゃないとわからない」と言われた。おいおい待ってくれよ! こんな100人くらいいる中からさっきの人を見つけないといけない!? 最後の最後になんて過酷な試練なんだ!! まぁ全部おれが悪いんだけど!! ウォーリーを探せみたいになってしまった。あれってイギリスのやつだったっけ? マジでどうでもいい! 必死になって先程の警備員マトリョーシカの誰かを探した。
「いないか? いないか? あっ!!」
その時、トム・クルーズと目が合った。トム・クルーズはカメラのポーズを取ってくれた。彼だ!! さっきの警備員さん!! こっちです!! 必死に呼ぶと、警備員さんがこっちに来てくれて「さっきはすまない。おれもルールに従うしかなったんだ。なぜならおれは歯車の一つに過ぎないからさ」みたいな表情を見せた。
そして、会場に入らせてくれた。トム・クルーズは「楽しんで」と言ってくれて、握手を交わした。すると先程の警備員マトリョーシカが全員集合してくれて皆と握手をした。

皆口々に「ソーリー」と言ってくれて「楽しんで」と言ってくれた! 僕はイギリスってなんて良い国なんだと思った。優しい人ばかり。
「サンキューベリーマッチ!」と言って行こうとするとき1番上司っぽい警備員さんが指を2本立ててドラゴンボールの悟空みたいなポーズをしてくれた。本当にかっこよかった。本当にかっこよかった。急いでステージの方に向かうとすごい人混みだったがまだ始まっていない!
そして、ふとみるとマサヤスさんが奥の方で手を振っている! 「エクスキューズミー」と言いながら人混みを掻き分けマサヤスさんのところに最速で向かった。マサヤスさんところに着き、強く抱き合った。間に合ったのだ!! とても嬉しかった。この人混みからマサヤスさんをすぐに見つけ出せたのも奇跡的だった。感動の再会を果たし、あとはOasisが出てくるのを待つだけだ。
我々はいまかいまかと待ち構えていた。にしても現時刻16:45、開始予定よりだいぶ時間が経っている。え? 本当にケンカしてる? ちょっと待ってよ? よく見るとステージのアンプに日除けの銀色のシートが掛かっている。「これはもうしばらくはやらなそうだぞ? あれ?」

するとOasisじゃない人達が出てきた。前座の方々のライブが始まったのだ。結論から言うとOasisが始まったのは20時過ぎで、チケットに書いてあったのは開演15時ではなくて開場15時だったのだ。2組目の前座であるThe Verveのリチャードが出てきたのを見てマサヤスさんと僕はそのことを悟った。
全然間に合ったんじゃん。
ただもうOasisを観れるのは確定しているおじさん2人、カメラの件もそうだけどもっと確認すれば良かったねと笑い合えた。本当にありがとうマサヤスさん。”Bitter Sweat Symphony”も聴けて豪華すぎるオープニングアクトが終わり、いよいよOasis登場を待つばかり。音響のチェックで出てきた人がボーカルのマイクのところでリアムと同じ後ろで手を組んだポーズでマイクチェックを行っていた。良いもん見れたな。

スタッフさんが全員はけ、オープニングの映像が始まる。大音量、大スクリーン、観客のボルテージが一気に上がる。そして、Oasisが登場した。僕は必死に目を凝らし肉眼で捉えようとした。遠くで小さくはあるが確実にリアムの顔を捉えた。かっこいい……。

印象は学生時代繰り返し見たあの時のリアムと一緒だった。ノエルは!? ノエルもかっこいい、ちょっとふっくらしたか? だがまたそれも良いな、黒い系統の衣装で揃えてるのか、くー! かっこいいおじさんになっているOasisに感動した。まもなく1曲目“Hello”のリフが会場に響いた。これから聴こえるであろうリアムの歌声に期待が膨らみ鳥肌が立つ。そしてリアムがマイクに口を近づけ歌う……! わぁ! とその時、周りの観客が一緒に歌い始めた。大合唱。凄い熱量。「すげぇ……! すげぇ……けど大合唱過ぎてリアムの声あんま聴こえなくね!? え? これどこまで? どこまで一緒に歌う感じですかー!!!??」


……結局、マンチェスターの観客たちは最初から最後まで全部大合唱だった。本当に全部。彼らは歌いにきていたのだ。極めつけは”Whatever”のストリングスのところを、「トゥットゥールトゥールトゥートゥルー」と歌っていた。文化の違いを目の当たりにした。だが、よく耳を凝らせばしっかりと聴こえ、一緒になって歌ってしまえばめちゃくちゃに楽しむ事ができた。結局最高だった。大好きな“Cigarette & Alcohol”も聴けたし“Supersonic”も最高だった(この曲の印象的なリフも皆歌っていた)。特に印象に残ったのはノエルボーカルの“Little by Little”。めちゃくちゃに染みた。カラオケで1人で歌ったことを思い出した。今おれはOasisを目の当たりにしている。1曲終わるたびにそう実感した。歌い狂う観客をハシビロコウのようにじっと見つめるリアム、その姿が痺れるほどかっこよかった。最後にギャラガー兄弟は抱き合った。その時、不覚にも会場で再会して抱き合ったマサヤスさんと僕を重ねて笑ってしまった。マサヤスさんも重ねていたのだろうか、さすがにその答え合わせはしなかった。酔いしれる我々を、花火を残してOasisは去って行った。あっという間の2時間だった。


伝説的ロックバンドOasis。僕は彼らが活躍した時をリアルタイムでは追えていない。だけどそんな僕でさえも「俺たちのこと好きなんだろ? いいよ関係ねぇよこっちきな」という感じで最高の空間に連れて行ってくれた気がした。Oasisの兄さん方、ほんまに“LiveForever”してください。マンチェスター最高でした。これからOasisのライブ行く方々楽しんでください。
大変な長文失礼しました。
『Oasis Live ’25』

▼出演
Oasis | オアシス
▼日時・会場
2025 年 10 月 25 日(土) 東京ドーム 開場 15:30 開演 18:00
2025 年 10 月 26 日(日) 東京ドーム 開場 15:00 開演 17:30
待ってたぜ。 『#lookback25』 スペシャル・ムービー
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